細胞において核の外に遺伝情報を伝えるのはどれか (2014年 あマ指 問題16)
1.DNA
2.RNA
3.リボソーム
4.ミトコンドリア
回答と選択肢の考察
答え 2
1.DNA × 核内で遺伝情報を保持
DNA=デオキシリボ核酸
アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種の塩基+デオキシリボース(糖)+リン酸により構成される。この塩基+糖+リン酸をヌクレオチドといい、核酸(DNA、RNA)の構成単位である。アデニン(A)はチミン(T)と、グアニン(G)はシトシン(C)と結合する。この結合する組み合わせが決まっていることを相補性という。この相補性により2本のDNAが向かい合い二重らせん構造を構成している。DNAの複製時には、二本鎖のDNAがほどけ、相補性の原則にしたがい、A⇄T、G⇄Cと対応する塩基が結合していくことにより、同じコピーをふたつつくることができる。
核内では、ヒストンという蛋白質とDNAが結合して染色質という形で存在する。 染色質の状態では長く細いので光学顕微鏡でも見えないが、細胞分裂の際には核膜が消失し、染色質はギュッとコンパクトになり染色体となる。この染色体の状態となると顕微鏡で見えるようになる。
2.RNA ○ mRNAは核の外に遺伝情報を伝える
RNA=リボ核酸
アデニン(A)、ウラシル(U)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種の塩基+リボース(糖)+リン酸により構成される。RNAには以下の種類がある
- mRNA(メッセンジャーRNA、伝令RNA)
遺伝子発現に際して、DNAに記録された遺伝暗号を転写し、核外に伝える。3つの塩基で1つのアミノ酸を指定する。この3つの塩基の組み合わせをコドンという。 - tRNA(トランスファーRNA、運搬RNA)
mRNA上のコドンに対応するアミノ酸を運搬する役割がある。 - rRNA(リボソームRNA)
リボソームを構成するRNA
3.リボソーム × タンパク質合成装置(翻訳)
蛋白質の合成装置。雪だるまのような大小ふたつのサブユニットからなり、大と小のサブユニット間にmRNAが挟み込まれる。リボソーム上でmRNAのコドンに対応するアミノ酸をtRNAが運んできて、次々と数珠つなぎにペプチド結合していくことにより蛋白質ができる。
細胞質内に単独で存在しているリボソームは遊離リボソームといい、主にその細胞内で利用される蛋白質を合成する。
粗面小胞体上にあるリボソームは付着リボソームという。リボソームの働きは蛋白質合成なので、粗面小胞体の働きも同じく蛋白質合成。ただし、こちらは主に細胞外に分泌される蛋白質を合成する。
粗面小胞体で合成された蛋白質がゴルジ装置に運ばれ、濃縮されたり糖鎖が付けられたりして描こうされることを、翻訳後装飾という。
4.ミトコンドリア × ATP産生(内呼吸)
細胞内のエネルギー合成装置。酸素を用いて糖を燃やすことにより、沢山のATP(アデノシン三リン酸)を産生する。TCA回路と電子伝達系がミトコンドリア内で行われる。
考え方
まず、DNAは核内にあり、全ての遺伝情報を蓄える図書館のようなものであることをイメージする。
では、遺伝情報とはなんだろう?
遺伝情報とは蛋白質の設計図なのだ。
蛋白質は身体の構成要素ともなるし、酵素として生命活動にともなうさまざまな反応も引き起こす。つまり生命活動は蛋白質が担っているといって過言ではない。
生命活動を行うにあたり、細胞はその時に必要な蛋白質を合成していく。全ての蛋白質の設計図は図書館(核)の中の書庫(DNA)に記録されている。
蛋白質の材料(アミノ酸)は核の外にあるので、蛋白質を組み立てるには、図書館から必要な設計図のみを書き写して外に持ち出す必要がある。この持ち出し用の蛋白質設計図がmRNA(メッセンジャーRNA・伝令RNA)だ。またDNAから蛋白質設計図をmRNAに書き写すことを転写という。
特定の蛋白質を合成するためのアミノ酸配列(遺伝情報)が転写されたmRNAは、核の外にでて、リボソームと結合する。リボソームはmRNAに記録されたアミノ酸配列を読み取って、指定された順番にアミノ酸をつなげ、蛋白質を合成していく。
DNAはA,T,G,C、RNAはA,U,G,Cの4種の塩基をもつ。この塩基3文字の組み合わせで一つのアミノ酸を指定する。mRNAに記録されたこの3文字セットの塩基配列をコドンという。
つまりDNAはA,T,G,Cの4文字の組み合わせで全遺伝情報を蓄えている。あたかも暗号のようであるので、これを遺伝暗号という。mRNAはその暗号で書かれた蛋白質設計図を書き写し(転写)、核外に持ち出して、リボソームがmRNA上の暗号を読み取り、指定されたアミノ酸をtRNA(トランスファーRNA・運搬RNA)が運んできて、アミノ酸同士が数珠つなぎにつながっていく。この遺伝暗号をもとにリボソーム上で蛋白質が合成されていく過程を翻訳という。そして、最初に遺伝子とはすなわち、蛋白質の設計図であると述べた。DNAに蓄えられた遺伝暗号がmRNAに転写され、核外のリボソームにより翻訳され、蛋白質が合成される過程を遺伝子発現という。
転写、翻訳、遺伝子発現といった用語の意味をきちんと理解すれば、蛋白質合成の過程を理解できたことになり、忘れることはない。ひとつひとつの用語の理解に努めよう。
知識の確認
- 塩基+糖+リン酸=( )解答
- DNAを構成する4つの塩基を述べよ:( )、( )、( )、( )解答
- RNAを構成する4つの塩基を述べよ:( )、( )、( )、( )解答
- 塩基はA⇄T、G⇄Cと結合する組み合わせがきまっている。これを( )という解答
- 遺伝子とはつまり、( )の設計図のこと解答
- DNAに記録されている遺伝情報の一部がmRNAに書き写されることを( )という。解答
- mRNAは核外にでて、蛋白質合成装置である( )と結合する。解答
- リボソームはmRNA上の3つの塩基の組み合わせ(コドン)を読み取り、そのコドンに対応したアミノ酸を( )が運んできて、アミノ酸が数珠つなぎに結合し、蛋白質がつくられる。このことを暗号を読み解いていくと捉え( )という。解答
- DNAの情報がmRNAに転写をされ、リボソームが翻訳し蛋白質ができることを、( 発現)という。解答
関連記事
この問題には勉強しやすいクイズ形式もあります。
[kanren postid=”1411″]
【一問一答】細胞(2) 細胞分裂と遺伝子
https://www.anatomy.tokyo/oqoa/【一問一答】1-1-2-人体の構成-細胞分裂と遺伝子/
コメント