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2007年 第15回 あん摩マッサージ指圧師 国家試験 解剖学 問題16~33 解答

目次

2007年 第15回 あん摩マッサージ指圧師 国家試験 解剖学 問題16~33 解答

問16 線維軟骨からなるのはどれか。

1 肋軟骨
2 耳介軟骨
3 関節軟骨
4 関節半月

解答 4

軟骨組織(p.15 軟骨組織)

軟骨組織は軟骨細胞軟骨基質からなるが、基本は線維性結合組織で、それの特殊化した形と考えられる。軟骨表面は密性結合組織の軟骨膜に包まれ、深部に行くに従い膠原線維の間隙を埋めるコンドロイチン硫酸の含有量が増え、軟骨特有の弾力性を生み出す。軟骨基質には血管は存在せず、軟骨膜表面の血管からの浸透により栄養される。軟骨基質に閉じこめられた後も軟骨細胞は分裂を続け、同じ軟骨小腔に2ないし4個の軟骨細胞が見られる。
軟骨は軟骨基質の性状により3種に分けられる。

① 硝子軟骨

軟骨基質は膠原線維の間に多量のコンドロイチン硫酸を含み、すりガラスのように半透明の乳白色を示す。最も普通に見られる軟骨で、関節軟骨・肋軟骨・気管軟骨がその例としてあげられる。

② 弾性軟骨

軟骨基質を構成する線維の約30%が弾性線維からなり、弾力性に富む。透明感のある淡い黄色を呈し、耳介軟骨や鼻軟骨の多くがそれにあたる。

③ 線維軟骨

大量の膠原線維が束をつくって走り、その間に軟骨細胞と少量の軟骨基質が存在する最も強靱な軟骨である。脊柱の椎間円板、骨盤の恥骨結合、膝関節の関節半月などに見られる。

1 肋軟骨:硝子軟骨
2 耳介軟骨:弾性軟骨
3 関節軟骨:硝子軟骨
4 関節半月:線維軟骨


問17 鼠径管の壁を構成しないのはどれか。

1 腸腰筋
2 外腹斜筋
3 内腹斜筋
4 腹横筋

解答 1

側腹筋(p.215 側腹筋)

側腹筋は外腹斜筋、内腹斜筋および腹横筋から構成され、その筋束は互いに重なり合って腹壁の大部分を形成している。

① 外腹斜筋

腹壁の最表層をおおう筋で、筋束はズボンのポケットに手を入れるような方向、すなわち後ろから斜め前下方に向かって走行し、広い停止腱膜となって腹直筋鞘前葉を形成する。

② 内腹斜筋

外腹斜筋におおわれ腹壁の中層を構成する。筋束は外腹斜筋と交叉する方向、すなわち外側下方から内側上方に走る。最下端部の筋束は精索を包み込むように下降して精巣挙筋となり、腰神経叢から起こる陰部大腿神経の支配を受げる。

③ 腹横筋

側腹筋の最内層にあり、筋束はほぼ水平に横走して腱膜となり、腹直筋鞘につく。肋間神経より内側に位置する。

④ 鼠径靱帯と鼠径管

鼠径靱帯は外腹斜筋の停止腱膜の下縁が肥厚して靱帯となって、上前腸骨棘と恥骨結節との間に張ったものである。鼠径管は、鼠径靱帯の上縁に沿って斜め内下方に向かって走る側腹筋のトンネルで、その長さは、成人では約4cmある。腹腔側の入口は深鼠径輪といい鼠径靱帯のほぼ中央にあり、内下方に斜走して恥骨結合のすぐ上方の浅鼠径輪で腹壁の外に出る。ここを男性では精管と精巣動・静脈を含む精索が、女性では子宮円索という結合組織のひもが通る。


問18 蝶形骨にみられないのはどれか。

1 視神経管
2 上眼窩裂
3 内耳孔
4 卵円孔

解答 3

蝶形骨(p.206 蝶形骨)

蝶形骨は、頭蓋腔の中央に位置する骨で、チョウが羽を広げたような形をしている。中央部はチョウの胴体に対応し、蝶形骨体という。体の上面にはトルコ鞍がある。体の前方は後鼻孔の上縁をなし、体の内部には鼻腔と連絡する1対の蝶形骨洞がある。体の後方は後頭骨と結合し斜台を構成する。
体の両脇からは、左右1対の小翼と大翼が伸びる。小翼は前頭蓋窩の後縁をなし、基部には視神経管が開く。大翼は中頭蓋窩の主体である。小翼よりも下方に位置するので、小翼との間に上眼窩裂が開く。また、大翼には正円孔卵円孔棘孔が開く。
下方にも1対の翼状突起が伸びる。翼状突起は鼻腔の外側壁の後方部をつくり、突起の基部には翼突管が開く。

1 視神経管:蝶形骨小翼の基部
2 上眼窩裂:蝶形骨小翼と大翼の間
3 内耳孔:側頭骨岩様部の錐体に開く(p.206 側頭骨)
4 卵円孔:蝶形骨大翼に開く


問19 肘関節の構成に関与しないのはどれか。

1 上腕骨小頭
2 橈骨頭
3 橈骨切痕
4 尺骨頭

解答 4

肘関節(p.184 肘関節)

肘関節は、肘部で上腕骨・尺骨・橈骨の3つの骨がそれぞれ連結しあう複関節であり、腕尺関節・腕橈関節・上橈尺関節が1つの関節腔内にある。関節包の両側には内側外側側副靱帯がついて補強する。

① 腕尺関節

腕尺関節は、上腕骨滑車が尺骨の滑車切痕とつくる関節で、蝶番関節である。肘関節の屈曲-伸展に関わる。

② 腕橈関節

腕橈関節は、上腕骨小頭が半球形の関節頭になって、橈骨頭上面の橈骨頭窩という丸く浅いくぼみに対面してできる。この関節は自由度が高い球関節であり、蝶番関節である腕尺関節の動き(屈伸)や、車軸関節である上橈尺関節の動き(回内-回外)に連動して動く。

③ 上橈尺関節

上橈尺関節は、橈骨頭の側面にある関節環状面と、尺骨にある橈骨切痕との関節である。円柱状をした橈骨頭の長軸を回転軸にして、橈骨頭の関節環状面が橈骨切痕をすべって回転する車軸関節である。これにより前腕の回内-回外が行われる。橈骨切痕の縁につく橈骨輪状靱帯は輪になって橈骨頭を取り囲み、橈骨頭が橈骨切痕から離れないようにする。

1 上腕骨小頭
上腕骨小頭⇔橈骨頭窩:腕橈関節(球関節)
2 橈骨頭
上腕骨小頭⇔橈骨頭窩:腕橈関節(球関節)
関節環状面(橈骨頭側面)⇔橈骨切痕(尺骨):上橈尺関節(車軸関節)
3 橈骨切痕
関節環状面(橈骨頭側面)⇔橈骨切痕(尺骨):上橈尺関節(車軸関節)
4 尺骨頭
関節環状面(尺骨下端 尺骨頭)⇔尺骨切痕(橈骨):下橈尺関節


問20 踵骨隆起に停止しない筋はどれか。

1 腓腹筋
2 ヒラメ筋
3 足底筋
4 後脛骨筋

解答 4

1 腓腹筋
2 ヒラメ筋
下腿三頭筋は浅在の2頭をもつ腓腹筋と深在のヒラメ筋よりなる。腓腹筋内側頭は大腿骨内側上顆より、外側頭は外側上顆より起こり、ヒラメ筋は腓骨頭、腓骨、脛骨の上部後面より起こり3頭合して踵骨腱(アキレス腱)となり踵骨隆起につく。足の底屈を行う。脛骨神経の枝をうける。

3 足底筋
足底筋は大腿骨外側上顆より起こり細長い腱となり、踵骨腱内側縁につき腫骨隆起に停止する。下腿三頭筋の働きを助ける。脛骨神経の枝をうける。

4 後脛骨筋
後脛骨筋は腓骨、脛骨上部後面から起こり、内果の後方を通り屈筋支帯の下を貫いて前方にまがり足底で腱に分かれて、舟状骨、内側・中間・外側楔状骨、立方骨、第2・第3中足骨底につく。足の内反、底屈を行う。脛骨神経の枝をうける。


問21 肩甲骨に停止する筋はどれか。

1 前鋸筋
2 肩甲下筋
3 棘下筋
4 大円筋

解答 1

1 前鋸筋 (肩甲骨に停止)
前鋸筋は胸郭の外側面および後面にあり、第1~第9肋骨から起こり、胸郭の外側面を走り、上後方に向かい、肩甲骨の下を通り、肩甲骨の上角、内側縁、下角につく。肩甲骨を前外方に引く。肩甲骨が固定されているときは肋骨を引き上げる。長胸神経の支配による。

2 肩甲下筋 (肩甲骨に起始)
肩甲下筋は肩甲骨肋骨面のつくる肩甲下窩より起こり、外方に向かって上腕骨小結節および小結節稜につく。上腕を内転または内方にまわす。肩甲下神経が支配する。

3 棘下筋 (肩甲骨に起始)
棘下筋は肩甲骨の棘下窩より起こり、外方に走り上腕骨大結節につく。上腕を後方に引き外方にまわす。肩甲上神経が支配する。

4 大円筋 (肩甲骨に起始)
大円筋は小円筋の下方で肩甲骨下角より起こり前外方に向かい、上腕骨小結節稜につく。上腕骨を後内方に引く。また内方にまわす。肩甲下神経の支配による。


問22 息を吸う際に働く筋はどれか。

1 腹直筋
2 外肋間筋
3 肋下筋
4 下後鋸筋

解答 2

a. 吸息

吸息時には脳からの指令で横隔膜と外肋間筋が収縮する。横隔膜が収縮すると、横隔膜の面積が減り、ドーム状に盛り上がっていた膜は沈下して水平になる。外肋間筋の収縮により肋骨は挙上する。その結果、胸郭が広がり胸腔内圧が下がって外界の空気が受動的に肺内に流入する。このように、通常の吸息時に収縮する横隔膜と外肋間筋を主吸息筋と呼ぶ。肋間筋は肋間神経の活動が高まることにより、横隔膜は横隔神経の活動が高まることにより、収縮する。深呼吸のときには、さらに脊柱を伸ばす筋や、肩を挙上する筋なども働く(これらを補助吸息筋という)。
主に横隔膜の運動によって行われる呼吸を横隔膜呼吸(腹式呼吸)、主に外肋間筋の運動によって行われる呼吸を胸式呼吸という。呼吸は両者の共同による胸腹式蝶形骨であるが、安静時には主として横隔膜呼吸が関与する。

b. 吸息

呼息時には横隔膜と外肋間筋は弛緩する。このとき、横隔神経と肋間神経の活動は休止する。横隔膜の面積は広がってドーム状に盛り上がり、肋骨は下がる。その結果、胸郭が狭くなり、肺内の気体が呼出される。積極的な呼息時には、内肋間筋や腹筋 (腹直筋、外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋)が収縮し、胸郭がさらに狭くなる。

1 腹直筋
腹直筋や側腹筋(外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋)は腹圧を高めることにより、横隔膜を下から押し上げて積極的な呼息に作用する。

2 外肋間筋
外肋間筋は各肋間隙にあり肋骨の下縁から起こり、線維束は後上方から斜めに前下方に走り下位の肋骨の上縁につく。肋骨を引き上げ胸郭内容を増加させ、吸気を起こさせる。肋間神経の支配による。(胸式呼吸の主動作筋)

3 肋下筋
肋下筋は胸郭後壁の内面で内肋間筋の後部にあり筋束は1つへだてて上位の肋骨につく。下部の肋間に見られる。肋骨を下げる働きがあり、積極的な呼息に作用する。肋間神経が支配する。

4 下後鋸筋
下後鋸筋は広背筋におおわれる薄い筋で、第10胸椎から第2腰椎までの棘突起から胸腰筋膜を介して起こり、外上方へ走り、第9から第12までの肋骨に停止する。これらの肋骨を引き下げ、積極的な呼息に作用する。。第9~第12肋間神経がこの筋を支配する。


問23 縦隔内に存在しない臓器はどれか。

1 咽頭
2 食道
3 気管
4 心臓

解答 1

縦隔(p.68 縦隔)

左右の肺に挟まれ、前方は胸骨に、後方は脊柱に固まれた、胸郭の中央部を縦隔という。縦隔は心臓より上方の上部と、下方の下部に分けられる。下部はさらに心臓を中心として前・中・後部に区分される。ここには、心膜に包まれた心臓・心臓に出入りする血管(大動脈・肺動脈・肺静脈・上大静脈・奇静脈など)・気管・気管支・食道・胸管・神経(迷走神経・横隔神経)・胸腺などの重要な臓器が存在する。また頸部から腹部への通路ともなっている。

縦隔の区分と含まれる構造物

区分含まれる構造物
上部胸腺, 気管, 食道, 大動脈弓, 上大静脈, 腕頭静脈, 奇静脈, 胸管, 横隔神経, 迷走神経, 交感神経幹
前部胸腺の下部, 内胸動脈
中部心臓, 上行大動脈, 肺動脈, 肺静脈, 上大静脈, 横隔神経
後部気管支, 食道, 胸大動脈, 奇静脈, 半奇静脈, 胸管, 迷走神経, 交感神経幹

1 咽頭:縦隔は左右の肺の間、咽頭は第6頸椎の高さまでなので、縦隔には含まれない。
2 食道:縦隔上部〜後部
3 気管:縦隔上部〜後部
4 心臓:縦隔中部


問24 結腸ヒモがみられるのはどれか。

1 胃
2 回腸
3 盲腸
4 直腸

解答 3

結腸ヒモが結腸についているのは当たり前。結腸ヒモ、結腸膨起、半月ヒダ、腹膜垂は結腸プラス盲腸の特徴だ。
これら結腸の特徴は直腸には無いのが大腸の国家試験問題を解くポイント。


問25 子宮について正しい記述はどれか。

1 子宮は膀胱の前方に位置する。
2 子宮円索は鼠径靱帯の下を通る。
3 子宮体の表面の大部分は腹膜に覆われる。
4 子宮筋層は横紋筋である。

解答 3

1 子宮は膀胱の後方に位置する。

子宮は骨盤の中央に位置し、前方は膀胱に、後方は直腸に接する。(p.102 子宮)

2 子宮円索は鼠径靱帯の(鼠径管)を通る。

鼠径靱帯と鼠径管(p.215 側腹筋)

鼠径靱帯は外腹斜筋の停止腱膜の下縁が肥厚して靱帯となって、上前腸骨棘と恥骨結節との間に張ったものである。鼠径管は、鼠径靱帯の上縁に沿って斜め内下方に向かって走る側腹筋のトンネルで、その長さは、成人では約4cmある。腹腔側の入口は深鼠径輪といい鼠径靱帯のほぼ中央にあり、内下方に斜走して恥骨結合のすぐ上方の浅鼠径輪で腹壁の外に出る。ここを男性では精管と精巣動・静脈を含む精索が、女性では子宮円索という結合組織のひもが通る。

子宮円索(p.102 子宮広間膜)

子宮は一般に前傾・前屈の位置を取る。すなわち、子宮は全体として前方に傾き(前傾)、子宮体は子宮頸に対して軽く前方に屈曲している(前屈)。子宮円索は、子宮の左右両側の上隅から起こり、骨盤側壁を前方に走り、鼠径管を通って、腹腔の外に出て大陰唇の皮下に至る。子宮は子宮円索によって前方に引っぱられ、前傾の位置に固定されている。

◯ 3 子宮体の表面の大部分は腹膜に覆われる。
子宮は子宮頸の前部や下部など一部腹膜に覆われない部分があるので、半腹膜内臓器に分類されるが、子宮底の全てや子宮体の殆どは腹膜に覆われている。(p.94 図5–5 骨盤の矢状断)

4 子宮筋層は平滑筋である。

子宮筋層は子宮壁で最も厚い層で錯綜する平滑筋よりなる。(p.102 子宮壁の構造)


問26 泌尿器系について正しい記述はどれか。

1 右腎は左腎より高い位置にある。
2 膀胱の筋層は横紋筋である。
3 外尿道括約筋は随意筋である。
4 尿管の粘膜は扁平上皮である。

解答 3

1 右腎は左腎より1/2腰椎分低い位置にある。

腎臓は腹腔の上部、脊柱の左右で肋骨に半ばかくれるように位置する暗赤色の1対の器官である。その高さは第12胸椎から第3腰椎の範囲にあり、上方に肝臓があるために右腎の方が左腎より1/2腰椎分低い。

2 膀胱の筋層は平滑筋である。

膀胱の壁は、粘膜・筋層・漿膜の3層からなる。粘膜をおおう移行上皮は膀胱の伸展度に応じて自由にその形を変える。膀胱が収縮しているときには移行上皮は7~8層の背の高い細胞の重なりよりなるが、尿がたまり膀胱壁が伸展されると上皮細胞は扁平になり、細胞の重なりも2層程度に減少する。筋層は網状に錯綜する平滑筋束からなるが、尿道への出口では筋層は輪状に並び膀胱括約筋(内尿道括約筋)に発達する。副交感神経の興奮により膀胱壁の筋層の収縮が起こり、膀胱括約筋がゆるむ。(p.93 膀胱)

◯ 3 外尿道括約筋は随意筋である。

膀胱括約筋の下方数cmのところに尿道括約筋(外尿道括約筋)がある。これは横紋筋でできた随意筋で、大脳からの命令を受けてはじめて開き、排尿が行われる。(p.93 膀胱)

4 尿管の粘膜は移行上皮である。
腎杯・腎盂・尿管・膀胱は移行上皮。移行上皮は膀胱だけではない。4点セットで覚えよう!


問27 上肢の動脈について正しい記述はどれか。

1 上腕動脈は正中神経と伴行する。
2 橈骨動脈は腋窩動脈から分岐する。
3 尺骨動脈は手根管を通る。
4 尺骨動脈は深掌動脈弓の主体をなす。

解答 1

1 上腕動脈は正中神経と伴行する。

上腕動脈(p.257 上肢の動脈)

腋窩動脈は腋窩の下縁(大胸筋の下縁)を過ぎると、上腕動脈と名前をかえて上腕二頭筋の内側縁(内側二頭筋溝)を肘窩に向かって縦走する。
上腕動脈の拍動は内側二頭筋溝から肘窩までの全域で触れ、よく血圧の計測にも用いられる。内側二頭筋溝の下端では、上腕動脈は正中神経とともに上腕二頭筋の停止腱膜の下をくぐって肘窩に入り、橈骨動脈と尺骨動脈に分れる。(p.257 上肢の動脈)

正中神経(p.261 上肢前面の神経定行(筋皮神経・正中神経・尺骨神経))

正中神経は、上腕部では枝を出さず、前腕屈筋群と母指球筋に筋枝を送るほか、手掌の橈側半分の皮膚に皮枝を分布する。
上腕部では、上腕二頭筋の内側縁(内側二頭筋溝)を縦走し、上腕動脈とともに上腕二頭筋の停止腱膜の下をくぐって肘窩に至る。

2 橈骨動脈は上腕動脈から分岐する。
上腕動脈は正中神経とともに上腕二頭筋の停止腱膜の下をくぐって肘窩に入り、橈骨動脈と尺骨動脈に分れる

3 尺骨動脈は尺骨神経管(ギヨン管)を通る。
屈筋支帯の浅層には尺骨神経と尺骨動脈が通る尺骨神経管(ギヨン管)が位置する。 (p.256 屈筋支帯と手根管)

4 尺骨動脈は浅掌動脈弓の主体をなす。
橈骨動脈:深掌動脈弓の主体をなす
尺骨動脈:浅掌動脈弓の主体をなす


問28 上大静脈に直接注ぐ静脈はどれか。

1 門脈
2 奇静脈
3 肝静脈
4 肺静脈

解答 2

1 門脈:脾静脈+下腸間膜静脈+上腸間膜静脈→門脈→肝臓

門脈は、主に脾静脈上腸間膜静脈下腸間膜静脈が合してできた特別な静脈である。胃腸や膵臓、脾臓から集められた静脈は、門脈として肝臓の中に導かれて肝組織で毛細血管に流れたのち、再び、肝静脈を経て下大静脈に注ぐ。(p.50 門脈系)

◯ 2 奇静脈→上大静脈

奇静脈系は、後胸壁の静脈を集めて脊柱の両側を縦に走る奇静脈・半奇静脈・副半奇静脈の3本からなる。奇静脈は脊柱の右側を走り、右の肋間静脈を集めながら上行して、上大静脈の後面に注ぐ。左の肋間静脈は脊柱の左側を走る半奇静脈副半奇静脈に集められる。これらはそれぞれ、脊柱の前を横断して右側を走る奇静脈に合流する。また、奇静脈系には食道静脈なども注ぎ、後述する門脈系の側副循環路になる。(p.49 上大静脈に注ぐ枝)

3 肝静脈→下大静脈

肝臓の血液を集めた肝静脈は肝臓の後面に接する下大静脈に注ぐ。(p.84 肝臓の位置と形状)

4 肺静脈→左心房

左右の肺から心臓に返る血液は、各肺門で2本の肺静脈に集まり、それぞれ左心房に注ぐ。左心房は心臓の後方にあるので、これら4本の肺静脈は心臓の後面で観察される。(p.48 肺循環の静脈系)


問29 副神経が支配する筋はどれか。

1 僧帽筋
2 広背筋
3 菱形筋
4 肩甲挙筋

解答 1

1 僧帽筋:副神経

僧帽筋は副神経を主体として、第2・3頸神経の前枝が加わり二重神経支配を受ける。同じ支配神経を受ける胸鎖乳突筋とは共通の筋母体から発生した兄弟筋と考えられる。(p.234 背部の神経)

2 広背筋:胸背神経

僧帽筋以外の浅背筋は腕神経叢から起こる神経によって支配される。広背筋は第5~8頸神経の成分を含み、腕神経叢の後神経束から起こる胸背神経に支配される。(p.234 背部の神経)

3 菱形筋:肩甲背神経
4 肩甲挙筋:肩甲背神経

肩甲挙筋と菱形筋は第5頸神経の基部後面から起こる肩甲背神経に支配される。(p.234 背部の神経)


問30 脊髄神経について誤っている組合せはどれか。

1 頸神経———7対
2 胸神経———12対
3 腰神経———5対
4 仙骨神経———5対

解答 1

脊髄神経の全体像(p.139 脊髄神経の全体像)

脊髄神経は脊髄に出入りする末梢神経で、脊柱の各椎間孔および前・後仙骨孔を通る31対の分節性のある神経である。神経が出入りする椎骨の高さによって、以下の5群に分けられる。
頸神経:8対(第1~8頸神経、C1~8と略す)
胸神経:12対(第1~12胸神経。T1~12と略す)
腰神経:5対(第1~5腰神経。L1~5と略す)
仙骨神経:5対(第1~5仙骨神経。S1~5と略す)
尾骨神経:1対(第1尾骨神経。Coと略す)
脊髄神経は脊柱の椎間孔から脊柱管内の脊髄に連絡するので、その数は基本的に椎骨の数と一致する。ただし、7個の頸椎間から出る頸神経は8対ある。後頭骨と第1頸椎の間から出るものを第1頸神経として数え始めると、第7頸椎と第1胸椎の間から出るのが第8番目の頸神経となって、頸椎の数(7個)と頸神経の数(8対)の数が食い違う。胸椎以下では神経は同じ番号の脊椎の下から出るので、両者は一致する。


問31 灰白質でできているのはどれか。

1 内包
2 視床
3 大脳脚
4 脳梁

解答 2

灰白質と白質(p.116 神経系の構成)

中枢神経の多くの場所では、神経細胞の細胞体が集まっている場所とそれから伸び出る突起、すなわち神経線維が集まっている場所とが整然と分かれている。脊髄または脳の断面を見ると、神経細胞の細胞体の多い場所は灰色がかって見えるので灰白質、神経線維の集まっている場所は白く見えるので白質と呼ばれる。広い白質の中に神経細胞がかたまりをなして集まっている場所は、神経核または単にと呼ばれる。細胞の中心にある核と同じ名称を使っているので、混同しないようにする必要がある。

1 内包:白質(投射線維)

投射線維:大脳皮質と下位の中枢(間脳・脳幹・小脳・脊髄)とを連絡する線維。投射線維で特に重要な束は、運動野から下行する線維と視床から各種の感覚野へ上行する線維とがつくる内包である。内包は視床と大脳基底核の間にはさまれる。(p.127 大脳の白質)

2 視床:灰白質

視床は、脳室の側壁をなすほぼ卵円形をした灰白質で、全身の皮膚感覚や深部知覚の線維また小脳から起こる線維など、大脳皮質に達する求心性伝導路のすべてがいったんここに集められ、新しいニューロンに乗り換えて大脳皮質のそれぞれの中枢に送られる。視床は脳に入る感覚情報の中継点である。視床の後方下面には内側膝状体外側膝状体という2対の高まりがあって、前者は聴覚の、後者は視覚の中継核である。(p.123 視床)

3 大脳脚:白質(錐体路が下行)

大脳脚は大脳皮質から脊髄に下行する錐体路をはじめとする伝導路の束よりなる。(p.121 中脳)

4 脳梁:白質(交連線維)

交連線維:左右の半球を連絡する線維。最も発達した交連線維の束は大脳の中心にある脳梁である。 (p.127 大脳の白質)


問32 大脳の領野と脳葉との組合せで正しいのはどれか。

1 体性感覚野———側頭葉
2 嗅覚野———前頭葉
3 視覚野———後頭葉
4 聴覚野———頭頂葉

解答 3

1 体性感覚野———頭頂葉

中心溝の後ろに沿って伸びる頭頂葉の中心後回体性感覚野である。皮膚感覚(温・痛・触覚)や深部感覚(関節覚・筋覚)の中枢で、ここで感覚の種類や位置を正確に判断することになる。感覚野も運動野と同様に、その支配する身体部位の上下と左右は反対になり、また感覚の鋭敏な領域は広い面積を占めている。(p.125 大脳皮質)

2 嗅覚野———側頭葉・前頭葉

嗅覚は、鼻腔の天井部分にある嗅上皮の嗅細胞によって感受される。息を吸い込むと空気の大部分は中鼻道および下鼻道を通過するが、一部が上鼻道を通って嗅上皮に向かう。この吸気中の匂いの分子が嗅細胞を刺激する。嗅細胞は神経細胞で、匂いの分子を感受して受容器電位を発生する。嗅細胞の軸索は嗅神経となって、大脳の嗅球に投射する。嗅覚情報は、嗅球からさらに側頭葉の梨状皮質などを介して、大脳皮質の前頭葉の眼窩前頭皮質や大脳辺縁系に送られる。《生理学》
解剖の教科書には「嗅覚野は側頭葉にある」と記載されているが、嗅覚情報が眼窩前頭皮質に入力することを考えれば、嗅覚野が前頭葉にあるという考えもできる。その場合、2も正答となるが、「3 視覚野-後頭葉」が素直に正しいので、ここはおとなしく3を正解としよう。

◯ 3 視覚野———後頭葉

視覚野は網膜から始まる視覚の中枢で、後頭葉の内面で鳥距溝の周囲にある。灰白質の中層を白い線が走るので有線領と呼ばれる。(p.125 大脳皮質)

4 聴覚野———側頭葉
聴覚野は内耳からの聴覚の中枢で、側頭葉の上面にある。(p.125 大脳皮質)


問33 杆状体細胞があるのはどれか。

1 嗅粘膜
2 網膜
3 味蕾
4 半規管

解答 2

眼球壁の内層(網膜)(p.150 眼球壁の内層(網膜))

網膜と呼ばれる部分で、光の刺激を神経の興奮に変えて視神経に伝える。網膜は3層の神経組織からなる神経層(視細胞層、双極細胞層、神経節細胞層)とその外層の色素上皮層からなる。網膜は光を感じる後半部の網膜視部と、毛様体・虹彩の内面をおおうが光を感じない前半部の網膜盲部とに分けられ、その境界は鋸状縁といわれる。視神経が出ていく部位はややくぼんでおり、ここを視神経円板または視神経乳頭といい、視細胞が存在しないため光を感じない。視神経円板の約4mm外側には黄色の丸い部(直径約2mm)、すなわち黄斑がある。黄斑の中央部はくぼんで中心窩といわれ、物を注視するときに焦点の合う場所で、視力の最も良いところである。
光を感じる視細胞はいちばん深層、すなわち脈絡膜側にある。その突起の形から錐体(錐状体細胞)杆体(杆状体細胞)の2種類に区別され、光を感覚するのは突起の先端の外節と呼ばれる場所である。錐体は中心窩の付近に存在し、約650万個の細胞からなり、色覚に関与している。また杆体は網膜の周辺部に多く、1億以上の細胞からなり、明暗の識別に関係している。網膜の最外層には単層立方上皮よりなる色素上皮層があり、細胞は暗褐色の色素顆粒を含み、光の乱反射を防ぐとともに視細胞の機能維持に役立っている。

1 嗅粘膜:嗅細胞
2 網膜:錐状体細胞(色を識別)、杆状体細胞(明暗を識別)
3 味蕾:味細胞
4 半規管:有毛細胞(膨大部稜)


このサイトはポイントのみをマスターするのではなく、教科書を元に理解をすることを目的としている。答えとなる根拠として教科書のページを記してある。是非教科書の該当するページを開いてその箇所を読んでみて欲しい。
なにはともあれ、とにかく教科書。いろんな参考書があるが、教科書に戻ること。それが一番です。

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この記事を書いた人

黒澤一弘(株式会社SBCHAプラクシス代表・つむぐ指圧治療室・東京都立大学 解剖学実習非常勤講師)
鍼灸師、按摩マッサージ指圧師、柔道整復師などの国家試験に向けた解剖学の知識向上を応援します。初学者にも分かり易く、記憶に残りやすい講座を心がけています。

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