肺について正しいのはどれか (2014年 あマ指 問題26)
1.右肺は2葉に分かれる。
2.区域気管支には軟骨がある。
3.肺尖は鎖骨と同じ高さである。
4.左右の肺の壁側胸膜に挟まれた領域を胸膜腔という。
回答と選択肢の考察
解答 2
1.右肺は2葉に分かれる。3葉
肺葉の数は左二右三(サニウゾウ)。ちなみに心臓の房室弁の弁尖の数も左二右三だ。肺も心臓もサニウゾウって覚えると良い。
2.区域気管支には軟骨がある。○
細気管支から軟骨が無くなるので、その手前の区域気管支には軟骨がある。
3.肺尖は鎖骨と同じ高さである。上方2〜3cmに達する
肺尖部は鎖骨の上方2〜3cmまで達する。鎖骨の上は頚部と扱うので、肺尖部は頚部まで突出するのだ。肺が頚まで伸びているのはなかなかイメージできないので注意が必要。
4.左右の肺の壁側胸膜に挟まれた領域を胸膜腔という。縦隔
左右の肺の壁側胸膜に挟まれた領域は縦隔である。胸膜腔は臓側胸膜と壁側胸膜に挟まれた領域で、漿液で満たされる。
考え方
この問題は肺と気管支の総合問題なので、基本事項を総合的に理解していこう。
肺の外観
肺は円錐を半分に割ったような形(半円錐形)をしていて、上部の尖っている部分を肺尖、下面の広い部分を肺底という。右肺の方が大きく、右肺の容量は1,200mlで重さは600g、左肺の容量は1,000mlで重さは500gである。
- 肺尖:肺上部の尖った部分。鎖骨の上方2〜3cmに達する。
- 肺底:下面の広い部分。横隔膜に接する。
- 内側面:縦隔に面する部分。心臓に接している部分は凹み心圧痕という。肺門があり気管支、肺動脈、肺静脈が出入りする。
- 外側面:肋骨に面する部分。肋骨面ともいう。
頚部と胸部の境界は「胸骨の上縁、鎖骨、肩峰、第7頚椎の棘突起を結ぶ線」なので、肺尖部は頚部に達していることに注意する。
肺葉の数と「斜裂・水平裂」
肺は深い切れ込みにより肺葉にわけられ、左二右三にわけられる。
左葉は2葉(上葉・下葉)
右葉は3葉(上葉・中葉・下葉)
斜裂は両肺にあるが、水平裂は右肺のみ。
気管、気管支の区分
- 気管
気管は長さ約10〜13cm、直径は約2cmの管状器官。第6頚椎の高さで喉頭の輪状軟骨の下から始まり、食道の前を垂直に下行し第5胸椎の高さで左右の気管支に分かれる。
輪状軟骨-C6のラインは喉頭→気管の移行部である他、咽頭→食道の移行部でもある。また気管分岐部T5は食道の第2狭窄部位にもなっている。脊椎レベルでの高さも良く問われるので覚えよう - 気管支
右肺の方が大きく、また心臓が左寄りにある為、左右の気管支に違いがでる。 - 右気管支:太く短く垂直に近い傾斜をもつ。長さ2.5〜3cm、直径12〜15mm、分岐角約24°
- 左気管支:細く長く水平に近い傾斜をもつ。長さ4〜5cm、直径10〜13mm、分岐角約45°
このような左右の気管支の違いにより、誤嚥してしまった異物は右肺に入りこみやすい。
右気管支は幕の内一歩の右ショートアッパーをイメージすると良い。太く短く垂直に近い角度。 - 葉気管支
肺葉は左二右三なので、葉気管支も左が2本、右が3本に分岐する。 - 区域気管支
肺区域は左が9、右が10に分かれる。よって区域気管支も左が9本、右が10本に分岐する。 - 細気管支
細気管支から先は軟骨が無い。逆に言えば、軟骨が認められなくなったところから細気管支。重要なのでしっかり覚えること。 - 終末細気管支
口腔または鼻腔〜終末細気管支までのガス交換に関与しない導管域の容積を解剖学的死腔といい、成人で約150ml である。 - 呼吸細気管支
呼吸細気管支より肺胞が現れ、ガス交換が可能となる。1つの呼吸細気管支が 1 つの細葉(1次肺小葉)を支配しており、呼吸細気管支は平均3回の分岐をして、肺胞管、肺胞嚢、肺胞に至る。 - 肺胞管、肺胞嚢、肺胞
肺胞管は肺胞に囲まれた部分。肺胞嚢は2〜4個の肺胞の分かれ目になる盲端の部分を言う。肺胞がガス交換の場となる。
気管軟骨について
前述の気管支の区分にて説明した通り、細気管支から気管軟骨が消失する。また気管軟骨は馬蹄形(アルファベットのC形)をしていることも重要。気管の後壁は膜性壁といい、気管軟骨を欠く部分である。気管の膜性壁には食道が接する。
また上下の気管軟骨は( 靭帯)で連絡している。
胸膜について
肺の表面の胸壁の内面は胸膜で覆われている。肺表面を直接覆う胸膜を臓側胸膜といい、肺門部で折れ返り壁側胸膜に移行する。この臓側胸膜と壁側胸膜の間を胸膜腔といい、少量の漿液で満たされる。漿液は胸膜の表面を滑らかにして、呼吸の際の摩擦を軽減している。
- 漿膜性心膜、胸膜、腹膜は組織学的に漿膜に分類される。漿液を分泌する膜なので漿膜。漿液とはサラサラした液体のこと。粘液はネバネバした液体。「胸膜腔は粘液で満たされる」などと選択肢ででてきた場合は×だ。
- 発生学的には、これらの漿膜は中皮に分類される。
- 外皮:皮膚(重層扁平上皮)
- 内皮:心臓、血管やリンパ菅などの外界につながっていない部分の内面(単層扁平上皮)
- 中皮:漿膜性心膜、胸膜、腹膜などの漿膜(単層扁平上皮) 胸膜や腹膜由来の腫瘍は中皮腫という。
縦隔
左右の肺に挟まれ、前方は胸骨、後方は脊柱に囲まれた空間を縦隔という。肺表面は胸膜に覆われているので、正確には左右の壁側胸膜に挟まれた領域が縦隔だ。縦隔は心臓を縦隔中部として、心臓より上を縦隔上部。心臓より前を縦隔前部、心臓より後ろを縦隔後部とする。縦隔のどの部位に何が含まれるかも重要である。
知識の確認
- 肺は半円錐形をしていて、上部の尖っている部分を( )、下面の広い部分を( )という。解答
- 肺尖部は( )の上方2〜3cmに達する。解答
- 左右の肺の大きさを比較すると( 肺)のほうが大きい。解答
- 肺葉の数は(左 右 )に分かれる。解答
- 肺葉を隔てる切れ込みで、( 裂)は両肺にあるが、( 裂)は右肺のみにある。解答
- 気管は(第 椎)の高さで輪状軟骨の下から始まり、(第 椎)の高さで左右の気管支に分かれる。解答
- 左右の気管支を比べると、右気管支は( く、 く、 に近い角度)であり、左気管支は( く、 く、 に近い角度)である。解答
- 葉気管支の数は肺葉の数と同一なので、左が( 本)、右が( 本)である。解答
- 区域気管支の数は肺区域の数と同一なので、左が( 本)、右が( 本)である。解答
- 細気管支から( )が無くなる。解答
- 終末細気管支までを導管域といい、口腔または鼻腔〜終末細気管支までのガス交換に関与しない導管域の容積を解剖学的( )といい、成人で約150ml である。解答
- 呼吸細気管支から( )が出現するため、ガス交換が可能となる。呼吸細気管支は肺胞管、肺胞嚢、肺胞と続く。解答
- 気管軟骨は( 形)で、気管後壁の軟骨を欠く部分を( 壁)という。解答
- 上下の気管軟骨は( 靭帯)で連絡している。解答
- 肺の表面を覆う( 側 膜)は肺門部で折れ返り、( 側 膜)に移行する。解答
- 臓側胸膜と壁側胸膜の間を( )といい、少量の( )で満たされる。解答
解答一覧
参考画像:3D4Medical社Essential Anatomy 5
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