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【詳細解説】前腕を回外させる作用のあるのはどれか (2014年 あマ指 問題21)

前腕を回外させる作用のあるのはどれか (2014年 あマ指 問題21)
1 烏口腕筋
2 上腕筋
3 上腕二頭筋
4 上腕三頭筋
目次

回答と選択肢の考察

解答3

1 烏口腕筋 肩関節の屈曲・内転

【肩甲骨 烏口突起 → 上腕骨体/筋皮神経/肩関節の屈曲・内転】
烏口腕筋は文字通り烏口突起から上腕骨にかけて付着する筋である。この筋の表面は同じく烏口突起に起始する上腕二頭筋の短頭におおわれている。肩関節の屈曲・内転の作用がある。筋皮神経は烏口腕筋を貫通することも抑えておきたい。

2 上腕筋 肘関節の屈曲

【上腕骨前面の下半部 → 尺骨粗面/筋皮神経/肘関節の屈曲】
上腕筋は上腕二頭筋の下にあり、目立たない筋であるが、肘の屈曲に際して常に働く馬車馬のような筋肉である。尺骨に停止するので、前腕の回内、回外に関係なく常に肘屈曲の作用を発揮する。

3 上腕二頭筋 ○ 肘関節の屈曲、前腕の回外

【(長頭) 関節上結節・(短頭) 烏口突起 → 橈骨粗面/筋皮神経/肘関節の屈曲、前腕の回外】
長頭のみ二関節筋となっている。いわゆる力こぶを作る筋肉で、肘関節屈曲は誰もがわかると思う。この問題の答えにもなっているが、上腕二頭筋は前腕の回外作用もあることを忘れないようにしよう。回外の主動作筋は回外筋であるが、強い回外が必要な時や、肘関節屈曲位での前腕回外の際に上腕二頭筋の回外作用が強く働く。上腕二頭筋長頭腱は大結節と小結節の間の結節間溝を通過する。よって上腕二頭筋長頭腱炎の検査法であるスピードテスト・ヤーガソンテストでは、結節間溝の痛みが陽性所見となる。このうち、被験者の肘関節90°屈曲位にて前腕の回外運動に抵抗を加えて結節間溝部の痛みを診る検査法はヤーガソンテストである。

4 上腕三頭筋 肘関節の伸展

【(長頭) 関節下結節・(外側頭) 上腕骨外側面・(内側頭) 上腕骨後面/橈骨神経/肘関節の伸展】
長頭のみ二関節筋となっている。上腕三頭筋は深層に内側頭があり、浅層に長頭と外側頭が覆いかぶさるように走行している。内側頭の起始部(上腕骨後面)は橈骨神経溝のすぐ下を沿うように存在し、外側頭の起始部は橈骨神経溝のやや外上方に位置する。よって内側頭の外側頭の間を橈骨神経が通過している。神経の走行と筋肉の位置関係もしばしば問われるので、ひとつひとつ抑えていきたい。

考え方

まずは回内・回外の動きはどういう動きかを明確にしよう。回内・回外は手と足の動きに対して使われる用語である。似たような用語で内旋・外旋があるが、これは肩関節や股関節、屈曲位での膝関節での動きを言う。どういうことか。

前腕の回内・回外

肘を体幹の脇につけて小さい前習えをする。肘関節は90°屈曲位。母指が上にくると手掌は下向きでも上向きでもない。内側に向き合っているはずだ。この状態からはじめて、手掌が下向きになる動きが回内手掌が上向きになる動きが回外である。この回転運動の方向をみてみると、回内では前腕の内回転。回外では前腕の外回転であることがわかるだろう。

同じく、肘を体幹の脇につけた小さい前習えの状態から、今度は手掌の向きはそのまま(上向きにも下向きにもしない)で、肘は体幹に付けたまま指先を近づける動きをしてみる。このときは上腕が回旋運動を起こすことにより指先が近づく。これが肩関節の内旋。肘は体幹に付けたまま指先と手掌がお互い離れていく動きをすれば、これが肩関節の外旋の動きだ。

ちょっとした覚え方のイメージ。
寒い日にたき火で身体を温めたいときには、手のひらを火の方にむけて温めるだろう。「たき火で身体の内を温めるときが回内」だ。

足部の回内・回外

こちらはちょっと間違いやすい。
足底を外側に向ける動きが回内。足底を内側にむける動きが回外となる。回転運動の方向で考えてみる。手や足の回転の方向が内回りであれば回内。外回りであれば回外だ。つまり。右手・右足は反時計回り、左手・左足は時計回りが内回りの動きとなり回内。右手・右足は時計回り、左手・左足は反時計回りが外回りの動きであるので回外だ。

足底を外側に向ける動きが回内。足底を内側にむける動きが回外というのはわかったとおもう。そこで疑問がわく。「内反(内がえし)・外反(外がえし)」というのもあったぞと。この「内反(内がえし)・外反(外がえし)」は足関節の底屈・背屈を伴わない状態での動きのみを言う。

底屈・背屈を伴わずに足底面を内側にむける動きが内反(内がえし)、足底面を外側にむける動きが外反(外がえし)だ。内反・外反の関節可動域は、内反が30°、外反が20°となっている。これだけだと足の裏が痒くてたまらなときに掻くことができない。足の裏が掻きたいときは、もっと足裏全体が見えるようにしなくてはならない。自分の足の裏をよく見てみよう。このときの動きは、足部の底屈+内旋+内反の複合となっているはずだ。この複合運動が「回外」となっている。

整理しよう。足部では
回内=背屈+外旋+外反
回外=底屈+内旋+内反
である。

前腕の問題であるのに、足の話までするからややこしくなってきたが、回内・回外について正しく知ることからこの問題ははじめてほしい。

回外のメカニズム

まず回内、回外を起こす筋は「上腕あるいは尺骨に起始」かつ「橈骨あるいは手に停止」という2つの条件が必要である。回内、回外は固定された尺骨に対する橈骨の動きであることを考えればわかる。

前腕回外の主動作筋は回外筋と上腕二頭筋である。回外筋は前腕回外時に常に働く筋で、肘屈曲時の上腕筋と役割がにている。一方、上腕二頭筋は強い回外が必要な時や、肘関節90°屈曲位での前腕回外の時に強く働く。強い回外が必要な時には自然と肘関節が90°に屈曲する姿勢をとっていることを思い出すと理解しやすい。

肘関節の運動と関連する筋

  • 屈曲:上腕筋・上腕二頭筋・腕橈骨筋
  • 伸展:上腕三頭筋・肘筋
  • 回内:方形回内筋・円回内筋
  • 回外:回外筋・上腕二頭筋

知識の確認

  • 烏口腕筋は肩甲骨の(  )から起始し、(  )に停止する。(  神経)により支配され、肩関節の(  ・  )の働きがある。解答
  • 烏口腕筋は(  神経)に貫かれる。解答
  • 上腕筋は(  骨前面の下半部)に起始し、(  )に停止する。(  神経)により支配され、肘関節の(  )の働きがある。解答
  • 上腕二頭筋は長頭が(  )、短頭が(  )から起始し、(  )に停止する。長頭は肩関節と肘関節をまたぐ(  関節筋)である。(  神経)により支配され、肩関節の(  )、前腕(  )の働きがある。解答
  • 上腕二頭筋長頭腱炎の検査法であるスピードテスト・ヤーガソンテストでは(  )の痛みを陽性所見とする。このうち被験者の肘関節90°屈曲位にて前腕の回外運動に抵抗を加える検査法は(  )である。解答
  • ストレッチテストは肘関節伸展位を保ったまま肩関節を伸展させ、結節間溝の痛みが生じた位置を保ったまま、肘関節だけを緩めて屈曲位にさせる。上腕二頭筋が緩むことにより結節間溝部の痛みが(  )すれば陽性とする。解答
  • 上腕三頭筋は長頭が(  )、外側頭は上腕骨外側面、内側頭は上腕骨後面に起始し、尺骨の(  )に停止する。(  神経)により支配され、肘関節(  )の働きがある。内側頭と外側頭の間を(  神経)が通過する。解答

解答一覧

クイズ形式

この問題には勉強しやすいクイズ形式もあります。
知識の確認にご利用ください。
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この記事を書いた人

黒澤一弘(株式会社SBCHAプラクシス代表・つむぐ指圧治療室・東京都立大学 解剖学実習非常勤講師)
鍼灸師、按摩マッサージ指圧師、柔道整復師などの国家試験に向けた解剖学の知識向上を応援します。初学者にも分かり易く、記憶に残りやすい講座を心がけています。

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