2017年 第25回 あん摩マッサージ指圧師 国家試験 解剖学 問題16〜26 解答
問題16 体の区分について正しいのはどれか。
1 頸部の前面を項部という。
2 骨盤部の後面を腰部という。
3 頭部と頸部の境界線はオトガイを通る。
4 頸部と胸部の境界線は烏口突起を通る。
解答 3
1 × 頸部の前面を項部という。
頸部の後面を項部という。
2 × 骨盤部の後面を腰部という。
腹部の後面を腰部という。
3 ○ 頭部と頸部の境界線はオトガイを通る。
耳孔から下顎の後縁、さらに下縁をへてオトガイに至る線が頭部と頸部の境界になる。
4 × 頸部と胸部の境界線は烏口突起を通る。
胸骨上端の頸切痕から鎖骨上端をたどって肩峰に至る線が、頸部と胸部の境界になる。
問題17 椎骨間の連結に関与する靱帯について正しいのはどれか。
1 黄色靭帯は横突起間を結ぶ。
2 棘間靭帯は棘突起間を結ぶ。
3 後縦靭帯は棘突起の先端を縦に結ぶ。
4 前縦靭帯は椎体と椎間円板の後ろを縦に結ぶ。
解答 2
1 × 黄色靭帯は横突起間を結ぶ。
黄色靭帯は椎弓間を結ぶ。
2 ○ 棘間靭帯は棘突起間を結ぶ。
3 × 後縦靭帯は棘突起の先端を縦に結ぶ。
後縦靭帯は椎体と椎間円板の後面を縦に結ぶ。
4 × 前縦靭帯は椎体と椎間円板の後ろを縦に結ぶ。
前縦靭帯は椎体と椎間円板の前面を縦に結ぶ。
問題18 腱膜をもつのはどれか。
1 広背筋
2 大円筋
3 前鋸筋
4 大菱形筋
解答 1
広背筋は、腰部で腸骨稜の後部から下位の胸椎棘突起まで広がる広大な起始腱膜をつくり、この腱膜と固有背筋を包む胸腰筋膜とが癒合したものが腰背腱膜と呼ばれる。(p.227 背部)
問題19 門脈-体循環吻合に関与するのはどれか。
1 肝静脈
2 腎静脈
3 臍傍静脈
4 上行腰静脈
解答 3
以下の3ヶ所が代表的な門脈の側副路である。門脈血は、① 胃の静脈をへて、食道下部にある静脈叢に流れ込み、食道静脈から奇静脈をへて上大静脈に注ぐ。② 直腸の静脈をへて、直腸下部(肛門周囲)の静脈叢に流れ込み、骨盤の静脈(内腸骨静脈)から総腸骨静脈をへて下大静脈に注ぐ。③ 肝臓の下面と臍を結ぶ臍傍静脈をへて臍周囲の皮静脈に流れ込み、腹壁の静脈を経て上下の大静脈に注ぐ。これら3ヶ所の側副静脈に大量の血液が流れると、① 食道静脈叢のうっ血による食道静脈瘤とその破綻による大量の吐血、② 直腸静脈叢の拡張による痔核の形成と痔出血、③ 臍を中心とした前腹壁の皮静脈にみられる放射状の怒張(へビがはうようにみえ、メデューサの頭という)、などを認める。(p.50 門脈系)
問題20 左主気管支について正しいのはどれか
1 3つに分岐する。
2 前壁は膜性壁である。
3 右主気管支より短い。
4 右主気管支より細い。
解答 4
1 × 3つに分岐する。
左主気管支は2つの葉気管支に分岐する(左二右三)。
2 × 前壁は膜性壁である。
気管の後壁は膜性壁である。
気管の壁は約20個の馬蹄形の気管軟骨が積み重なってできている。軟骨を欠く後壁は膜性壁といい、平滑筋と粘膜だけになる。(p.65 気管と気管支)
3 × 右主気管支より短い。
4 ○ 右主気管支より細い。
右気管支は太くて短く、垂直に近く傾斜する。左気管支は細くて長く、水平に近い傾斜を持つ。(p.65 気管と気管支)
問題21 食道について正しいのはどれか。
1 気管の前を通る。
2 第4頸椎の高さで始まる。
3 大動脈の前で横隔膜を貫く。
4 左心房の高さに生理的狭窄がみられる。
解答 3
1 × 気管の前を通る。
気管の後ろを通る。気管-食道-脊柱の順番。
2 × 第4頸椎の高さで始まる。
食道は咽頭に続く部分で、第6頸椎の高さで始まり、脊柱の前、気管の後ろを通って胸腔に入る。
3 ○ 大動脈の前で横隔膜を貫く。
大動脈裂孔:第12胸椎の椎体前面にあり、下行大動脈と動脈周囲交感神経叢(大内臓神経・小内臓神経など)、奇静脈、胸管などが通る。
食道裂孔:第10胸維の高さで大動脈裂孔の左前上方にあり、食道と、左右の迷走神経が通る。
大静脈孔:第8胸椎の高さで腱中心にあり、右寄りに位置する。下大静脈が通る。(p.213 横隔膜)
4 左心房の高さに生理的狭窄がみられる。
食道は生理的に狭窄を示す場所が3ヶ所ある。① 食道の入り口(輪状軟骨の後ろ)、② 気管分岐部の高さ(大動脈弓との交叉)、③ 横隔膜を貫くところ(食道裂孔)である。(p.77 食道)
第2狭窄部位は気管分岐部 (大動脈弓との交叉) の部位で、左心房よりか上にあるので、この選択肢は除外される。
問題22 子宮についてただしいのはどれか。
1 子宮底部は膣につながる。
2 子宮広間膜に包まれる。
3 子宮動脈は外腸骨動脈の枝である。
4 子宮円索によって骨盤壁に固定される。
解答 2
1 子宮底部は膣につながる。
子宮頚部は膣につながる。
子宮体部の上部左右には卵管が開く。子宮の下1/3は細く円筒状で子宮頸部という。子宮休部から頭部へ移行する少しくびれた部分を子宮峡部という。子宮頸部の下端は膣の中に突出していて子宮膣部という。子宮腔は三角形でかなり狭く、上部は卵管に通じ、下部は峡部をへて子宮頸管に通じ外子宮口に開く。(p.102 子宮)
2 ○ 子宮広間膜に包まれる。
子宮および卵管を上方よりすっぽりとおおった腹膜は、晴れ着の袖のように子宮の両側に垂れ下がり、前後の腹膜が合わさって子宮広間膜をつくる。(p.102 子宮広間膜)
3 子宮動脈は外腸骨動脈の枝である。
子宮動脈は内腸骨動脈の枝である。
4 子宮円索によって骨盤壁に固定される。
子宮は子宮円索によって前傾位に固定されているが、骨盤壁に固定されているのではない。
問題23 副腎について正しいのはどれか。
1 後面は腹膜で覆われる。
2 内胚葉性の器官である。
3 上腸間膜動脈の枝が分布する。
4 網状帯が髄質を取り囲んでいる。
解答 4
1 × 後面は腹膜で覆われる。
腎臓・副腎は腹膜後器官。腹膜の後なので、副腎を基準にすると前側に腹膜は位置する。また腎臓と共通の脂肪被膜に包まれているので、前面であれ後面であれ、腹膜が直接副腎を覆うことはない。
2 × 内胚葉性の器官である。(副腎皮質は中胚葉、副腎髄質は外胚葉性)
副腎皮質は腹膜上皮から発生する中胚葉性器官。
副腎髄質は交感神経細胞と起源を同じくする神経由来の細胞からなる。神経組織であるので副腎髄質は外胚葉性である。
(p.113 副腎皮質)
3 × 上腸間膜動脈の枝が分布する。
上腸間膜動脈は腹大動脈の消化器系に至る臓側枝で、腎臓や副腎には分布しない。
参考として、副腎の栄養動脈は以下である。
上副腎動脈:下横隔動脈の枝
中副腎動脈:腹大動脈の直接の枝
下副腎動脈:腎動脈の枝
4 ○ 網状帯が髄質を取り囲んでいる。
副腎皮質は、表層から深層に向かい、その細胞の配列の特徴から球状帯・束状帯・網状帯の3層を区別する。それぞれの層からはアルドステロン・コルチコステロン・副腎アンドロジェン(男性ホルモン)が分泌される。(p.113 副腎皮質)
副腎皮質は副腎髄質を取り囲んでいるので、副腎髄質を直接取り囲むのは網状帯ということになる。
問題24 交連線維はどれか。
1 脳梁
2 脳弓
3 内包
4 視放線
解答
1 ○ 脳梁:交連線維
2 × 脳弓:連合線維
3 × 内包:投射線維
4 × 視放線:投射線維
大脳髄質(白質)は、大脳皮質に出入りする次の3種類の神経線維からなる。
1) 連合線維:同一半球内の皮質の間を連絡する線維。
2) 交連線維:左右の半球を連絡する線維。
3) 投射線維:大脳皮質と下位の中枢(間脳・脳幹・小脳・脊髄)とを連絡する線維。
最も発達した交連線維の束は大脳の中心にある脳梁である。投射線維で特に重要な束は、運動野から下行する線維と視床から各種の感覚野へ上行する線維とがつくる内包である。内包は視床と大脳基底核の間にはさまれる。sup>(p.127 大脳の白質)
問題25 腰神経叢の枝はどれか。
1 陰部神経
2 閉鎖神経
3 上殿神経
4 後大腿皮神経
解答 2
1 × 陰部神経:仙骨神経叢(S2-S4)
2 ○ 閉鎖神経:腰神経叢(L2-L4)
3 × 上殿神経:仙骨神経叢(L4-S1)
4 × 後大腿皮神経:仙骨神経叢(S1〜S3)
問題26 内耳について正しいのはどれか。
1 鼓室にある。
2 前庭窓にキヌタが骨がはまる。
3 半規管に蝸牛神経がつながる。
4 膜迷路の内部は内リンパで満たされる。
解答 4
1 × 鼓室にある。
鼓室は中耳。
2 × 前庭窓にキヌタが骨がはまる。
鼓膜 – ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨 – 前庭窓
アブミ骨が前庭窓にはまる。
3 × 半規管に蝸牛神経がつながる。
前庭・半規管は前庭神経につながる。蝸牛は蝸牛神経につながる。
4 ○ 膜迷路の内部は内リンパで満たされる。
骨迷路と膜迷路の間は外リンパ。膜迷路の内部は内リンパで満たされる。
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