2016年 第24回 はり師・きゅう師 (鍼灸師) 国家試験 生理学 問題27〜35 解答
問題27 体液のpH調節に関与するのはどれか。
1 心臓
2 肝臓
3 膵臓
4 腎臓
解答4
体液のpHは7.40±0.05 (7.35〜7.45)と非常に狭い範囲に一定に保たれている。
pH調節に関与する臓器としては、肺と腎臓がある。
- 肺によるpH調節
体内でCO2は血液中に溶け、水と反応してH+を遊離する。したがって呼吸はCO2を排泄することによりH+濃度を下げる働きがある。(生p.61 呼吸と酸塩基平衡)- 腎臓によるpH調節
腎臓は体液中の過剰なH+を尿中に排泄し、H+の緩衝に重要な重炭酸イオン(HCO3-)を再吸収することにより、体液のpHを調節する。(生p.125 体液のpH調節)
問題28 血流の自己調節が顕著な臓器はどれか。
1 肝臓
2 膵臓
3 腎臓
4 副腎
解答 3
腎血流量は動脈血圧が80〜200mmHgの範囲で変動しても、血圧にかかわらずほぼ一定に保たれる。これを腎血流量の自己調節という。この調節は、血圧が上昇して血流が増えようとすると、輸入細動脈壁の血管平滑筋が収縮して血流を減らそうとするためと考えられている。(生p.119 腎血流量)
この自己調節機能により、 平均血圧が 70 〜 180mmHG ぐらいまでの範囲では、 腎血流量(RBF)・腎血漿流量 (RPF)・糸球体濾過量 (GFR) はほぼ一定に保たれる。(生p.120 図7–2 腎血流量と糸球体濾過量の自己調節)
問題29 膵液のpHはどれか。
1 弱アルカリ性
2 中性
3 弱酸性
4 強酸性
解答 1
膵液には2つの要素がある。 (生p.80 膵液)
① タンパク質、脂肪、糖質の消化酵素
② 重炭酸ナトリウム NaHCO3 を含む弱アルカリ性 (pH約8)]膵液は強い酸性である胃液を中和するために弱アルカリ性と成っている。(理由:膵液の消化酵素は中性に近いpHでないと働かない。十二指腸以降は粘液による防御機構がなくなる。)
問題30 外気温が上昇すると起こるのはどれか。
1 皮膚血流量が減少する。
2 汗腺支配の交感神経活動が低下する。
3 抗利尿ホルモンの分泌量が増加する。
4 甲状腺ホルモンの分泌量が増加する。
解答 3
暑さへの適応では以下の反応が起こる。(生p.289 暑さへの適応)
- 汗腺の働きが高まる → 発汗増加
- 汗腺支配の交感神経活動増加 (コリン作働性)
- 皮膚血管拡張 → 放熱促進
- アルドステロン分泌増加 → 発汗による塩分喪失を防ぐ
- バソプレッシン分泌増加 → 発汗による水分喪失を防ぐ
寒さへの適応では以下の反応が起こる。(生p.293 体温調節)
- 皮膚血管収縮 → 放熱抑制
- 皮膚血管支配の交感神経活動増加 (アドレナリン作動性)
- 甲状腺ホルモン、副腎髄質カテコールアミン分泌亢進 → 代謝亢進 → 熱産生
- 体性運動神経の働きによる骨格筋の収縮 → ふるえ産熱
問題31 糸球体における有効ろ過圧の計算式で正しいのはどれか。
1 糸球体血圧 十 血漿膠質浸透圧 十 ボーマン嚢内圧
2 糸球体血圧 十 血漿膠質浸透圧 一 ボーマン嚢内圧
3 糸球体血圧 一 血漿膠質浸透圧 十 ボーマン嚢内圧
4 糸球体血圧 一 血漿膠質浸透圧 一 ボーマン嚢内圧
解答 4
腎臓における原尿生成は濾過により行われる。濾過の原動力は糸球体血圧(45mmHg)である。この時血液の液体成分(血漿)は濾過されるが、血漿タンパク質は濾過されない。よって血液と原尿を比較した場合、タンパク質が含まれている分血液の方が濃ゆい液体ということになる。これが血漿の膠質浸透圧 (約25mmHg)となり原尿を血管内に引き戻そうとする力となる。
また、ボウマン嚢にはもともとその前に濾過された原尿があるので、ボーマン嚢内圧 (約10mmHg)は糸球体血圧に拮抗する力となる。
よって、有効濾過圧は以下と成る。
有効濾過圧 = 糸球体血圧 一 血漿膠質浸透圧 一 ボーマン嚢内圧
(生p.121 糸球体における濾過の仕組み)
問題32 ニューロンから分泌されるのはどれか。
1 オキシトシン
2 成長ホルモン
3 パラソルモン
4 レニン
解答 1
下垂体後葉ホルモン(オキシトシン・バソプレッシン)は視床下部の室傍核あるいは視索上核のニューロンで生成され、軸索輸送により下垂体後葉に運ばれて分泌される。(神経内分泌)(生p.137 下垂体後葉ホルモン)
問題33 授乳中に分泌が抑制されるのはどれか。
1 プロラクチン
2 性腺刺激ホルモン
3 成長ホルモン
4 ソマトスタチン
解答 2
プロラクチンは乳汁の産生を促すとともに、性腺刺激ホルモン (LH, FSH) の分泌を抑制し、排卵を抑える。(生p.158 乳汁分泌)
問題34 抑制性伝達物質としてのみ働くのはどれか。
1 アセチルコリン
2 ガンマアミノ酪酸
3 ノルアドレナリン
4 グルタミン酸
解答 2
末梢神経の神経伝達物質にはアセチルコリンとノルアドレナリンがある。
中枢神経の神経伝達物質は以下のものがある。 (生p.176 神経伝達物質)
- 興奮性神経伝達物質
- アセチルコリン、ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン、グルタミン酸など
- 抑制性神経伝達物質
- ガンマアミノ酪酸 (GABA)、グリシン
※ 抑制性神経伝達物質をしっかり覚えて、それ以外は興奮性と覚えれば良い。
問題35 筋収縮においてATPのエネルギーを必要とするのはどれか。
1 横行小管の電気的興奮
2 筋小胞体からのカルシウムイオンの放出
3 トロポニンとカルシウムイオンの結合
4 ミオシン頭部の変位
解答 4
筋の収縮にも弛緩にもエネルギーが必要である。このエネルギー以下の過程に費やされる。(生p.223 筋収縮のエネルギー代謝)
① 筋収縮の過程でのミオシン頭部の運動
② 筋弛緩の過程でのカルシウムイオンの筋小胞体への回収
③ ミオシン頭部とアクチンとの結合の分離
問題36 運動反射と反射中枢の組合せで正しいのはどれか。
1 横隔膜反射―――脊髄
2 屈曲反射――――延髄
3 立ち直り反射――橋
4 緊張性頸反射――中脳
解答 1
- 皮膚反射
皮膚の刺激によって筋の収縮が反射性に調節される反射を 皮膚反射 といい、脊髄レベルで介在ニューロンを介して、多シナプス性に調節される。(生p.237 皮膚反射)- 腹壁反射
- 挙睾筋反射
- 横隔膜反射
1 ◯横隔膜反射―――脊髄
2 屈曲反射――――延髄 脊髄(生p.236 屈曲反射)
3 立ち直り反射――橋 中脳(生p.241 立ち直り反射)
4 緊張性頸反射――中脳 延髄《小児理学療法学テキスト p.36 姿勢反射の一覧》
問題37 臓器移植の拒絶反応で、移植された臓器を直接攻撃するのはどれか。
1 好中球
2 形質細胞
3 キラーT細胞
4 マクロファージ
解答 3
キラーT細胞 (細胞障害性T細胞) は自己の細胞がウイルスなどに感染した場合、それを破壊する働きを持つ。また臓器移植の際に、他の個体からの移植片に対して拒絶を起こすのもキラーT細胞の働きによる。(生p.283 リンパ球 – T細胞)
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