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2013年 第21回 あん摩マッサージ指圧師 国家試験 解剖学 問題16〜33 解答

目次

2013年 第21回 あん摩マッサージ指圧師 国家試験 解剖学 問題16〜33 解答

勉強のコツ
やっぱり基本は教科書です。国試4択を教科書の重要箇所を知るフィルターとして用い、関連する教科書のページをチェックすることをお勧めします。関連ページを記載しています。活用して理解をしてください。理解したものは応用力が増し、さらに忘れにくくなります。

問題16 細胞間の情報交換に関与するのはどれか。

1 接着帯
2 タイト結合(密着帯)
3 デスモゾーム(接着斑)
4 ギャップ結合(細隙結合)

解答 4

細胞がびっしり並んでいるのが上皮組織であるが、細胞が並ぶためには細胞同士がくっついてなければならない。細胞同士を連結するのが細胞間結合装置で、4種類ある。

  • タイト結合 (密着帯)
    タイト結合は細胞の側面で最も表層部にあり、細胞の周りを帯状に取り囲む。タイト結合の特徴は細胞同士をぴったりと密着させ、物質通過を阻止することにある。ジップロックのようにぴったりと締めて漏らさないのがタイト結合だ。(p.12 細胞間結合装置)
  • 接着帯
    接着帯はタイト結合のすぐ下にあり、少し隙間 (20nm) が開いていて、そこにカドヘリンという細胞間結合物質がつまっている。この部に面する細胞膜の内面には裏打ち構造が認められ、アクチンフィラメントが集まり、細胞同士を接着する。(p.12 細胞間結合装置)
  • デスモソーム (接着斑)
    デスモソームは直径0.2〜0.5μmのボタン型タンパク質とカドヘリンによる接着である。細胞同士の結合を強める働きをする。2枚の布を2個のボタンを介して糸で綴じ合わせたような構造をしている。皮膚の表皮に見られる重層扁平上皮の細胞間で特に発達している。(p.12 細胞間結合装置)
  • ギャップ結合 (細隙結合)
    ギャップ結合には斑状の結合部位に直径2nmほどの小さな孔が開いていて、イオンや糖、アミノ酸などの低分子の物質を通過させ、上皮細胞間の情報交換を行う。特に心筋細胞間に発達している。(p.12 細胞間結合装置)

問題17 上皮組織を構成する細胞はどれか。

1 線維芽細胞
2 脂肪細胞
3 神経細胞
4 腺細胞

解答 4

組織には上皮組織、結合組織 (支持組織)、筋組織、神経組織の4種がある。

  • 上皮組織:被蓋上皮、感覚上皮、吸収上皮、 分泌上皮
  • 結合組織:線維性結合組織、軟骨組織、骨組織、 血液とリンパ
  • 筋組織 :平滑筋、骨格筋、心筋
  • 神経組織:神経細胞、神経膠細胞(グリア細胞)

上皮組織と結合組織の違いについてしっかりと理解しよう。
組織では、細胞のほかに、細胞の間を埋める物質、すなわち細胞間質(細胞間基質)がある。 すなわち、組織は細胞と細胞間質ととでできる。 細胞と細胞間質との量的比は組織の種類によって異なる。

  • 上皮組織(p.10 上皮組織)
    体表や器官の表面、管腔などの表面をおおう。 細胞同士が密接して並ぶ
    = 細胞間基質が少ない。
  • 結合組織(支持組織)(p.13 結合組織)
    器官 , 組織、細胞の隙間を埋め、結合する
    = 細胞間基質が多い。細胞はまばら

1 線維芽細胞:結合組織
2 脂肪細胞:結合組織
3 神経細胞:神経組織
4 腺細胞:上皮組織


問題18 鼠径靱帯が付着するのはどれか。

1 坐骨棘
2 坐骨結節
3 下前腸骨棘
4 上前腸骨棘

解答 4

鼠径靭帯外腹斜筋の停止腱膜の下縁が肥厚して靭帯となって、上前腸骨棘と恥骨結節との間に張ったものである。(p.217 鼠径靭帯と鼠径管)


問題19 手根骨と足根骨の両方にみられる骨の名称はどれか。

1 立方骨
2 舟状骨
3 三角骨
4 月状骨

解答 2

手根骨(p.183)
  • 近位列:舟状骨・月状骨・三角骨・豆状骨
  • 遠位列:大菱形骨・小菱形骨・有頭骨・有鈎骨
足根骨(p.192)
  • 近位:距骨・踵骨
  • 遠位:舟状骨・内側楔状骨・中間楔状骨・外側楔状骨・立方骨

問題20 小転子に停止するのはどれか。

1 梨状筋
2 腸腰筋
3 大殿筋
4 大腿方形筋

解答 2

1 梨状筋:仙骨前面 → 大転子;仙骨神経叢;股関節の外旋(p.266 外寛骨筋)

2 腸腰筋(p.266 内寛骨筋)
腸骨筋:腸骨窩 → 小転子;大腿神経;股関節の屈曲、下肢を固定すると上半身は前に曲がる。
大腰筋:全腰椎の肋骨突起、第12胸椎〜第4腰椎の椎体と椎間円板 → 小転子;腰神経叢;股関節の屈曲、下肢を固定すると上半身は前に曲がる。

3 大殿筋:腸骨外面、仙骨と尾骨の後面、仙結節靭帯 → 殿筋粗面、腸脛靭帯;下殿神経;股関節の伸展。腸脛靭帯の緊張により膝関節を伸展し、直立姿勢を保つ。股関節の外転と外旋。(p.266 外寛骨筋)

4 大腿方形筋:坐骨結節 → 転子間稜;仙骨神経叢;股関節の外旋(p.266 外寛骨筋)


問題21 足関節にある靱帯はどれか。

1 黄色靱帯
2 三角靱帯
3 十字靱帯
4 棘間靱帯

解答 2

距腿関節は足関節とも呼ばれ、下腿と足根骨の間にできるラセン関節である。脛骨の下関節面及び内果関節面と、腓骨の外果関節面が連続して関節窩をつくり、距骨上部の距骨滑車が骨頭となって構成される。この関節の内側と外側は、側副靭帯として内側靭帯と外側の靭帯群が補強する。

内側靭帯は三角靭帯とも呼ばれ
① 脛骨 − 舟状骨の間の部分 (脛舟部)
② 脛骨 − 距骨の間の部分 (脛距部)
③ 脛骨 − 踵骨の間の部分 (脛踵部)
の3部からなる。(p.195 距腿関節, p.197 図10–39, 距腿関節, 40 足弓)

外側にあるものは
・前距腓靭帯
・後距腓靭帯
・踵腓靭帯
の3つの靭帯である。(p.195 距腿関節, p.193 図10–38 足関節)

1 黄色靱帯
上下の椎弓の間を連結する靭帯。弾性線維が豊富。

2 三角靱帯
足関節の内側を補強する。脛舟部、脛距部、脛踵部の3部よりなる。

3 十字靱帯
膝十字靭帯と環椎十字靭帯がある。
膝十字靭帯は脛骨上面の顆間隆起の前後と大腿骨顆間窩の間に張る関節内靱帯で、2本の前・後十字靭帯からなる。関節が前後に同様しないように安定させる。(p.194 膝十字靭帯)
環椎十字靭帯は、正中環軸関節の歯突起が後方にずれないように、環椎の椎孔内で、歯突起を後面から十字形に交叉しておおう2つの靱帯 (環椎横靭帯と縦束) よりなる。(p.174 頭蓋を支える特殊な関節, p.173 図10–12 環椎・軸椎の靱帯)

4 棘間靱帯
椎骨の棘突起管を結ぶ靱帯。(p.172 椎骨の連結)


問題22 脊柱起立筋に含まれるのはどれか。

1 板状筋
2 多裂筋
3 頭半棘筋
4 棘筋

解答

背筋は浅背筋と深背筋に分けられる。深背筋はさらに浅層の第1層と深層の第2層に区別される。

  • 浅背筋
  • 僧帽筋
  • 広背筋
  • 肩甲挙筋
  • 小菱形筋
  • 大菱形筋
  • 深背筋 第1層 (棘肋筋)
  • 上後鋸筋
  • 下後鋸筋
  • 深背筋 第2層 (固有背筋)
  • 板状筋
  • 脊柱起立筋
  • 腸肋筋
  • 最長筋
  • 棘筋
  • 横突棘筋

問題23 手の第2指の指背腱膜に停止するのはどれか。

1 第1背側骨間筋
2 第2背側骨間筋
3 第2掌側骨間筋
4 第2虫様筋

解答 1

1 第1背側骨間筋:第2指 基節骨底の橈側に終わる。(p.246 図10–92上肢の後面(浅層), p.247 図10–96 上肢の後面の起始と停止)
2 第2背側骨間筋:第3指 基節骨底の橈側に終わる。 (p.246 図10–92上肢の後面(浅層), p.247 図10–96 上肢の後面の起始と停止)
3 第2掌側骨間筋:第4指の基節骨底の橈側に終わる。(p.251 図10–97 手の筋の起始と停止)
4 第2虫様筋:第3指の基節骨底の橈側を通り指伸筋腱に入る。

中手筋(p.251 表10–22 中手筋)(分担解剖学 1 p.367–368)(プロメテウス運動器系 p.338)

  • 虫様筋
    4個の円柱状の小筋で、深指屈筋の腱から起こる。第1, 第2は第2, 第3指に至る腱の橈側から、第3, 第4はそれぞれ2頭をもって第3〜第5指に至る腱の相対する側から起こる → 扁平な腱となり、それぞれ第2〜5指基節骨底の橈側から指背腱膜に加わって終わる。
    (第1虫様筋:第2指の指背腱膜(指伸筋腱)に合流)
  • 掌側骨間筋
    3個あり、第2中手骨の尺側と第4・5中手骨の橈側 → 指背腱膜に加わり、それぞれ第2指の基節骨底尺側と第4・5指の基節骨底橈側に終わる;尺骨神経;第3指に全ての指を近づける(指の内転)
  • 背側骨間筋
    4個あり、2頭をもって第1〜5中手骨の対向面より起こる → 第1・2背側骨間筋はそれぞれ第2・3指基節骨底の橈側に、第3・4背側骨間筋はそれぞれ第3・4指季節骨の尺側に終わる;尺骨神経;第3指を中心に指を開く(指の外転)

※ 指背腱膜:総指伸筋の腱が指背で膜状に広がり、これに骨間筋と虫様筋の停止腱が両側から加わり形成される。第2,5指では示指伸筋、小指伸筋の腱が総指伸筋腱に加わり、また第1,5指では骨間筋の代わりに短母指外転筋と母指内転筋、小指外転筋の腱の一部が加わる指背腱膜は3束に分れ、中央の束は中節骨底に停止し、両側の束は合して末節骨底につく。(プロメテウス運動器系 p.340 指背腱膜)(Atlas of Human Anatomy and Surgery p165)

中手筋については、教科書の図だと理解し難いので、プロメテウス解剖学アトラスなどの図譜で確認することが望ましい。(専門書なので少し高いが、図譜はあったほうが良い。いろいろあるが、プロメテウスは図が綺麗で見やすくおすすめである)


問題24 下肢の上伸筋支帯の下を腱が通るのはどれか。

1 長腓骨筋
2 短腓骨筋
3 第三腓骨筋
4 長指屈筋

解答 3

上伸筋支帯と下伸筋支帯は足首の前面をおおい、下腿前面の伸筋腱を押さえている。(p.271 図10–120 下肢前面の筋(浅層))よって、この問題は下腿の伸筋群に属するものを選べば良い。

1 長腓骨筋:腓骨筋群
腓骨頭・腓骨上部外側面 → 内側楔状骨, 第1中足骨底 (底面);浅腓骨神経;足の底屈, 外反

2 短腓骨筋:腓骨筋群
腓骨下部外側面 → 第5中足骨粗面;浅腓骨神経;足の底屈, 外反

3 第三腓骨筋:伸筋群
腓骨内側面, 下腿骨間膜 → 第5中足骨底(背面);深腓骨神経;足の背屈, 外反

4 長指屈筋:屈筋群
脛骨後面 → 第2〜5指の末節骨底;脛骨神経;第2〜5指の屈曲, 足関節の底屈, 内反


問題25 消化管でパイエル板がみられるのはどれか。

1 食道
2 回腸
3 盲腸
4 直腸

解答 2

小腸の粘膜固有層にはゴマ粒大のリンパ小節が散在する (孤立リンパ小節)。リンパ小節が集まって、小判状 (長さ2〜4cm) に見える集合リンパ小説 (パイエル板) は回腸下部に見られる。

  • 孤立リンパ小節:小腸全域に存在
  • 集合リンパ小節:回腸下部に存在

問題26 プロゲステロンを分泌するのはどれか。

1 赤体
2 白体
3 黄体
4 下垂体

解答 3

排卵後の卵胞は出血して赤いが(赤体)、まもなく多数の脂肪滴と黄色い色素に満たされた大型の細胞の集団となり、黄体と呼ばれる。卵子が受精して子宮内膜に着床すれば、黄体は妊娠黄体となって持続するが、受精しない場合は、月経黄体として最大 (約2cm) となった後、退縮し、結合組織が増えて白体となる。黄体からは黄体ホルモン (プロゲステロン) が分泌される。

  • 視床下部
  • GnRH (性腺刺激ホルモン放出ホルモン)
  • 下垂体前葉
  • FHS (卵胞刺激ホルモン)
  • LH (黄体形成ホルモン)
  • 卵胞
  • エストロゲン (卵胞ホルモン)
  • 黄体
  • プロゲステロン (黄体ホルモン)

問題27 頭頸部の動脈で大後頭孔を通るのはどれか。

1 顎動脈
2 後頭動脈
3 椎骨動脈
4 内頸動脈

解答

脳を栄養する動脈は椎骨動脈と内頸動脈の2系統ある。椎骨動脈は大後頭孔より、内頸動脈は頸動脈孔より頭蓋内に入る。

1 顎動脈 (外頸動脈の枝)
側頭下窩で各咀嚼筋への枝、下顎骨への枝、中硬膜動脈そして頬動脈などを分枝したのち、翼口蓋窩に入る。ここで鼻腔や眼窩、口蓋や上顎骨の各部への枝に分かれる。上顎の歯や歯槽、歯肉への枝も出す。蝶形骨の棘孔を通る中硬膜動脈は広い範囲の脳硬膜と脳頭蓋の骨を栄養する。(p.306 外頸動脈)

2 後頭動脈 (外頸動脈の枝)
乳様突起の内側の溝を通り後頭部へ至り、上項線の付近で皮下に出る。ここで体表から脈拍を触れる。項部や後頭部の筋と皮膚を栄養する。(p.306 外頸動脈)

3 椎骨動脈 (鎖骨下動脈の枝)
鎖骨下動脈の最初の太い枝で、まっすぐ第6頚椎の横突孔へ向かう。周囲の筋や骨への枝を出しながら横突孔を次々と上行し、環椎の後弓の上で環椎後頭膜を貫きクモ膜下腔に入り、脊髄への枝を出す。大後頭孔 (大孔) をへて頭蓋腔の延髄の前面を上行し、延髄と橋の境界近くで左右の椎骨動脈は合流して脳底動脈と成る。(p.307 鎖骨下動脈)

4 内頸動脈 (甲状軟骨上縁の高さで総頸動脈が外頸動脈と内頸動脈に分かれる)
頸部では枝を出さずに側頭骨の頸動脈管を通り破裂孔の上で頭蓋内に出てくる。ここで下垂体や眼窩への枝 (眼動脈)を出したのちクモ膜下腔へ入り、脳の血管となる。起始部は膨らんで頸動脈洞となる。(p.305 内頸動脈)


問題28 下行大動脈の前を通るのはどれか。

1 左腎静脈
2 左精巣静脈
3 下腸間膜静脈
4 左上行腰静脈

解答 1

下行大動脈は横隔膜を境に胸大動脈と腹大動脈に分かれるが、この問題の選択肢では、腹大動脈のことを指す。
下大静脈は右側を上行し、腹大動脈はほぼ正中を下行する。よって左側から下大静脈へと注ぐ静脈が腹大動脈の前を横切ると考える。

1 左腎静脈
腹大動脈の前を横切り下大静脈に注ぐ。(下大静脈が右側にあるので、右腎静脈は短く、左腎静脈は長い)(p.50 下大静脈に注ぐ枝)

2 左精巣静脈
左の性線静脈 (精巣静脈, 卵巣静脈) は左の腎静脈に注ぎ、右の性腺静脈は下大静脈に注ぐ。(p.50 下大静脈に注ぐ枝)

3 下腸間膜静脈
下腸間膜静脈は脾静脈に注いだ後、上腸間膜静脈が合流し門脈幹となる。腹大動脈の前を横切るのは脾動脈もしくは門脈幹であると考える。(p.51 図2–18 門脈系)
《この図がわかりやすい:プロメテウス 胸腹部 (1版) p.277》

4 左上行腰静脈
上行腰静脈は、外腸骨静脈、腸腰静脈、腰静脈を、胸部の奇静脈および半奇静脈と交通する長い吻合静脈である。万一、下大静脈が閉塞されるようなことが起きると上行腰静脈が身体の下部と上部を連絡する重要な側腹循環路となる。
(グレイ解剖学 p.37 図.4.151 腰静脈)
左右の上行腰静脈は腰椎の両側を上行し、右上行腰静脈は上方で奇静脈と接続し、左上行腰静脈は半奇静脈に接続する。(p.50 図2–17 胸・腹・骨盤の静脈)《この図がわかりやすい:プロメテウス 胸腹部 (1版) p.177 胸郭内における上大静脈と奇静脈系》


問題29 中枢神経と受容器・効果器との間で、2 個のニューロンから構成されるのはどれか。

1 体性運動
2 体性感覚
3 内臓運動
4 内臓感覚

解答 3

自律神経系は交感神経系と副交感神経系に大別される。自律神経は中枢を出ると目的臓器に達するまでに必ず一度ニューロンを交代する。交代のために神経細胞が集まっているところを自律神経節という。中枢にある神経細胞を節前ニューロン、それから出る線維が節前線維、途中の神経節にある神経細胞を節後ニューロン、神経節細胞から末梢臓器に至る線維を節後線維という。(p.144 自律神経系)

よって、自律神経系 (交感神経・副交感神経) を選べば良い。よって内臓運動が正解となる。

※ 解剖学では一般臓性遠心性 (GVE) のみを「自律神経」として扱うことが多く、教科書の自律神経系 (p.144)にも、内臓求心性神経のことは記述がない。一方、生理学では自律神経も遠心性と求心性に分け、遠心性はいわゆる「交感神経・副交感神経」、求心性は「内臓求心性神経」がそれにあたる。


問題30 内包に分布する動脈はどれか。

1 中大脳動脈
2 中硬膜動脈
3 脳底動脈
4 後下小脳動脈

解答

1 中大脳動脈
内頸動脈の最終枝で、大脳の外側溝の深部を多数の枝を出しながら後上方へ伸びる。大脳の外側面の大部分を栄養する。内包や間脳、脈絡叢など脳の深部へ多数の細い枝を出す。大脳の動脈の中で最も太い。(p.305 内頸動脈 – 中大脳動脈)
内包に分布するのは、中大脳動脈の枝であるレンズ核線条体動脈であるが、この動脈は脳出血を引き起こしやすい動脈として知られる。脳出血の約70%はこの動脈の出血によるという。(p.131 大脳動脈輪 – 脳出血)

2 中硬膜動脈
中硬膜動脈は顎動脈の枝で、蝶形骨の棘孔を通り頭蓋腔に入り、広い範囲の脳硬膜と脳頭蓋の骨を栄養する。(p.306 顎動脈)

3 脳底動脈
鎖骨下動脈の枝である椎骨動脈は第6頚椎より横突孔を上行し(p.307)、大後頭孔 (大孔) より頭蓋腔に入る。頭蓋腔に入ると、左右の椎骨動脈は橋の下面で合して1本の脳底動脈となる。脳底動脈は延髄・橋・小脳に枝を送りつつ上行し、やがて左右の後大脳動脈に分かれる。この椎骨動脈-脳底動脈-後大脳動脈の系統は脳の後1/4を栄養する。(p.131 椎骨動脈)

4 後下小脳動脈
椎骨動脈の最大枝で、延髄の外側に沿って背側に走り、小脳の下面に達する。延髄の背外側部・小脳の後下部に分布する。(解剖学講義 p.732 椎骨動脈)

この問題では関係ないが、ウイリス動脈輪もしっかり理解しよう。

  • 脳は内頚動脈と椎骨動脈の 2 系統により栄養される。
  • 内頚動脈は頚動脈管を通り破裂孔の上に出て脳の血管となる。前大脳動脈と後交通動脈を出した後、中大脳動脈となる。
  • 椎骨動脈は大後頭孔より頭蓋内に入り、左右の椎骨動脈が合わさって脳底動脈となる。脳底動脈は小脳や橋などへの枝を出した後、左右の後大脳動脈に分かれる。
ウイリス動脈輪 (大脳動脈輪) (p.131)
  • 脳底では内頚動脈、脳底動脈とそれらから分かれる枝が輪を作るように吻合しあう。
  • 前方では、左右の内頚動脈の枝である前大脳動脈が前交通動脈により吻合する。
  • 後方では、脳底動脈が分岐した左右の後大脳 動脈が後交通動脈を介してそれぞれ内頚動脈と吻合する。
  • このように下垂体を取り囲む動脈の輪が形成 される。これを大脳動脈輪(ウイリス動脈輪) という。

問題31 舌の前の味覚をつかさどるのはどれか。

1 三叉神経
2 顔面神経
3 舌咽神経
4 迷走神経

解答 2

味覚 味覚以外の感覚
舌前2/3 顔面神経 三叉神経
舌後1/3 舌咽神経 舌咽神経

舌の前2/3の味覚を伝えるのは顔面神経の枝である鼓索神経で、この感覚線維の細胞体は膝神経節にある。鼓索神経は味覚を伝える感覚線維と、顎下腺・舌下腺を支配する副交感線維よりなる。(p.313 顔面神経)


問題32 副交感神経の神経節で舌下腺への経路になっているのはどれか。

1 顎下神経節
2 耳神経節
3 毛様体神経節
4 翼口蓋神経節

解答 1

脳神経III, VII, IX の副交感性神経節は近年非常に国家試験によく出ている。しっかり覚えよう。

III 動眼神経(p.310)
  • 運動 (GSE)
  • 動眼神経核 → (上眼窩裂) → 上直筋・下直筋・内側直筋・下斜筋
  • 副交感 (GVE)
  • 動眼神経副核 → (上眼窩裂) → 毛様体神経節 → 瞳孔括約筋・毛様体筋
VII 顔面神経(p.312)
  • 運動 (SVE)
  • 顔面神経核 → (内耳孔) → (茎乳突孔) → 表情筋
  • 感覚 (SVA)
  • 舌前2/3の味覚 → (内耳孔) → 膝神経節 → 孤束核 外側部
  • 副交感 (GVE) :
  • 上唾液核 → 中間神経 → (内耳孔) → 大錐体神経 → 翼口蓋神経節 → 涙腺
  • 上唾液核 → 中間神経 → (内耳孔) → 鼓索神経 → 顎下神経節 → 顎下腺・舌下腺
IX 舌咽神経(p.313)
  • 運動 (SVE)
  • 疑核 → (頚静脈孔) → 茎突咽頭筋・咽頭上部の筋
  • 感覚 (SVA)
  • 舌後1/3の味覚 → (頚静脈孔) → 下神経節 → 孤束核 外側部
  • 舌後1/3の知覚 → (頚静脈孔) → 下神経節 → 孤束核 内側部
  • 副交感 (GVE)
  • 下唾液核 → (内耳孔) → 耳神経節 → 耳下腺

問題33 視覚器について正しい記述はどれか。

1 角膜の知覚は眼神経が伝える。
2 散瞳には動眼神経が関与する。
3 下斜筋は滑車神経に支配される。
4 上眼瞼挙筋は顔面神経に支配される。

解答 1

1 ○ 角膜の知覚は眼神経が伝える。
2 散瞳には交感神経が関与する。
3 下斜筋は動眼神経に支配される。
4 上眼瞼挙筋は動眼神経に支配される。

視覚器に関与する神経 (p.310〜313 脳神経, p.149 虹彩)
  • 感覚
  • 視覚 (SSA)
  • 視神経 II
  • 角膜の感覚 (GVA)
  • 眼神経 V1
  • 運動
  • 外眼筋の運動性支配 (GSE)
  • 上直筋、内側直筋、下直筋、下斜筋の眼球を動かす筋と、上眼瞼を引き上げる上眼瞼挙筋・・・動眼神経 III
  • 上斜筋・・・滑車神経 IV
  • 外側直筋・・・外転神経 VI
  • 臓性運動
  • 内眼筋の運動性支配 (GVE)
  • 瞳孔括約筋 (縮瞳)・・・動眼神経 (副交感) III
  • 瞳孔散大筋 (散瞳)・・・交感神経
  • 涙腺の分泌 (GVE)
  • 顔面神経 (副交感) VII

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この記事を書いた人

黒澤一弘(株式会社SBCHAプラクシス代表・つむぐ指圧治療室・東京都立大学 解剖学実習非常勤講師)
鍼灸師、按摩マッサージ指圧師、柔道整復師などの国家試験に向けた解剖学の知識向上を応援します。初学者にも分かり易く、記憶に残りやすい講座を心がけています。

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