2008年 第16回 はり師・きゅう師 (鍼灸師) 国家試験 解剖学 問題15~30 解答
問15 発生学的に正しい組合せはどれか。
1 真皮—外胚葉
2 網膜—外胚葉
3 涙腺—内胚葉
4 肝細胞—中胚葉
解答 2
各胚葉から分化する主要な組織と器官
胚葉 | 分化する主要な組織・器官系 |
---|---|
外胚葉 | 皮膚 (表皮・毛・爪・皮膚腺) |
神経系 (脳・脊髄・末梢神経) | |
感覚器 (視・聴・平衡・味・嗅覚器) | |
内胚葉 | 消化器 (胃・腸・肝臓・膵臓) |
呼吸器 (喉頭・気管・気管支・肺) | |
尿路 (膀胱・尿道) | |
中胚葉 | 骨格系 (骨・軟骨・結合組織) |
筋系 (横紋筋・平滑筋) | |
循環系 (心臓・血管・リンパ管・血液) | |
泌尿生殖系 (腎臓・精巣・子宮・卵巣) |
1 真皮—中胚葉
皮膚・感覚器・神経系は外胚葉だが、ここでいう皮膚とは表皮のことだ。真皮は密性結合組織で、中胚葉由来である。
◯ 2 網膜—外胚葉
網膜は感覚器の一部。皮膚・感覚器・神経系は外胚葉
3 涙腺—外胚葉
涙腺は皮膚の付属物と考える。皮膚・感覚器・神経系は外胚葉
4 肝細胞—内胚葉
肝臓は消化器系。消化器・呼吸器・尿路は内胚葉
問16 細胞の有糸分裂において、染色体が赤道面に配列するのはいつか。
1 前期
2 中期
3 後期
4 終期
解答 2
体細胞分裂 (有糸分裂)
細胞周期 | 特徴 | 染色体数 (核相) | |
---|---|---|---|
G1期 | 第1間期 | 分裂した細胞が活動・成長し、次の分裂にそなえる | 2n |
S期 | DNA合成期 | 分裂に先立ちDNAの複製が行われる | 2n→4n |
G2期 | 第2間期 | 分裂準備期。分裂を前に細胞小器官や細胞質成分を作成する | 4n |
M期 | 細胞分裂期 | ||
前期 | 中心小体が二分して両極に移動 | 4n | |
中期 | 核膜は消失し, 染色体が細胞の赤道面に配列する。各染色体に紡錘糸が付着 | 4n | |
後期 | 各染色体は2個に分裂し, 両極に移動 | 4n | |
終期 | 細胞体がくびれて2個の娘細胞となる | 2n |
問17 滑膜性の関節をつくる骨の部位の組合せで正しいのはどれか。
1 肩峰—上腕骨頭
2 大菱形骨—第1中手骨底
3 寛骨臼—大転子
4 外果—距骨頭
解答 2
1 肩峰—鎖骨 肩峰端 (肩鎖関節)
肩鎖関節(p.183 肩鎖関節)
鎖骨の外側端(肩峰端)の小さな関節面と、肩峰の内側面にできる小さな関節平面の間でつくられる。内部に小さな関節円板があるとされるが、関節円板が不完全なことが多い。
◯ 2 大菱形骨—第1中手骨底 (母指手根中手関節)
手根骨と中手骨との関節(p.186 手根骨と中手骨との関節)
大菱形骨は第1中手骨とともに母指の手根中手関節(CM関節) を構成する。大菱形骨のCM関節面はウマの鞍形をした可動性が良い鞍関節で、他の指の関節包からは独立している。この関節により母指の運動域はそのほかの指よりも大きい。
3 寛骨臼—大腿骨頭 (股関節)
股関節(p.194 股関節)
股関節は、ボール状の大腿骨頭が寛骨臼にはまりこんで構成される。肩関節と同じ球関節であるが、関節窩が臼のように深いので臼状関節といわれる。臼状関節は浅い球関節より脱臼しにくく安定するが、運動の自由度は制限される。寛骨臼の輪郭には、線維軟骨からなる関節唇が取り囲んで関節窩をより深くする。
関節包は大きく、その遠位端は大腿骨の転子間線に付着しており、大腿骨頸は関節腔内に含まれる。このことから、大腿骨頸は表面を滑膜に覆われることになり、骨膜を欠く。
股関節の主な靱帯は以下の4つである。
– 大腿骨頭靱帯
– 腸骨大腿靱帯
– 恥骨大腿靱帯
– 坐骨大腿靱帯
4 外果—距骨滑車 (足関節)
距腿関節(p.195 距腿関節)
距腿関節は足関節とも呼ばれ、下腿と足根骨(距骨)との間にできる蝶番関節(ラセン関節)である。脛骨の下関節面および内果関節面と、腓骨の外果関節面が連続して関節窩をつくり、距骨上部の距骨滑車が骨頭となって構成される。この関節の運動は足首の屈伸運動であり、特に屈曲を底屈、伸展を背屈という。この関節の内側と外側は、側副靱帯として内側靱帯と外側の靱帯群が補強する。
内側靱帯は、三角靱帯とも呼ばれ、① 脛骨-舟状骨の間の部分、② 脛骨-距骨の間の部分、③ 脛骨-踵骨の間の部分、の3部からなる。一方、外側にあるのは、前・後距腓靱帯と踵腓靱帯の3つの靱帯である。
問18 頭頂骨と縫合をつくらないのはどれか。
1 前頭骨
2 側頭骨
3 蝶形骨
4 頬骨
解答 4
① 頭蓋冠(p.198 脳頭蓋)
左右の頭頂骨を中心に、前に前頭骨、後ろに後頭骨、側方に側頭骨の一部(鱗部)がそれぞれ結合してドーム状の頭蓋冠をつくる。これらの骨の輪郭は、ノコギリの歯のようにギザギザしている。隣り合った骨どうし、このギザギザを結合縁として、線維性結合した縫合により頭蓋冠が維持される。代表的な縫合の種類には、冠状縫合、矢状縫合、ラムダ縫合、鱗状縫合がある。
i) 冠状縫合:前頭骨と左右の頭頂骨との間にある縫合で、頭蓋冠の前方部にある。縫合線はへアバンドをつけたような方向に走る。
ii) 矢状縫合:頭頂部で、左右の頭頂骨の間を矢状方向に走る縫合である。
iii) ラムダ縫合:頭頂骨と後頭骨との間を走る縫合で、後頭部にある。縫合線の形状がギリシャ文字のλ(ラムダ)に似るのでこの名がついた。また人の字のようにも見えるので、人字縫合とも呼ばれる。
iv) 鱗状縫合:側頭部において頭頂骨の外側縁と側頭骨の上部(鱗部)との間にできる半円状で魚のうろこのような縫合である。
頭蓋冠をつくる骨はいずれも典型的な扁平骨に属し、胎生時に膜内骨化によって発生する。膜内骨化では、各骨の中央から骨化が始まり周辺に向かって広がる。これらの骨は出生時にはまだ骨化が完全でなく、周縁部は骨化せずに線維性結合組織のまま残る。特に3つ以上の骨が会合する部分では、広い結合組織の膜性部が残り、これを泉門と呼ぶ。泉門のうち、大泉門・小泉門・前側頭泉門・後側頭泉門がよく知られる。前頭骨と頭頂骨との間にできる大泉門と、頭頂骨と後頭骨との間にできる小泉門は皮膚の上から触知できる。
1 前頭骨
前頭骨と左右の頭頂骨との間で冠状縫合をつくる
2 側頭骨
側頭部において頭頂骨の外側縁と側頭骨の上部(鱗部)との間で鱗状縫合をつくる
3 蝶形骨
上記の代表的な4つの縫合の説明では、蝶形骨がでてこないが、蝶形骨は前頭骨・頭頂骨・側頭骨・頬骨と縫合をつくっている。図をよく参照してイメージをつくっておこう(p.200 図10–41 頭蓋の右側面)
篩骨:蝶篩骨縫合 蝶篩骨軟骨結合
前頭骨:蝶前頭縫合
頭頂骨:蝶頭頂縫合
側頭骨:蝶鱗縫合
頬骨:蝶頬骨縫合
4 頬骨
側頭骨の鱗部前方部からは、頬骨と結合するための頬骨突起が伸びて、頬骨の側頭突起と側頭頬骨縫合をつくり頬骨弓を形成する。
(出典)
問19 筋とその支配神経との組合せで正しいのはどれか。
1 上斜筋—動眼神経
2 側頭筋—上顎神経
3 広頸筋—顔面神経
4 舌筋—舌咽神経
解答 3
1 上斜筋—滑車神経
外眼筋は上斜筋とが滑車神経、外側直筋が外転神経。残りは全部 動眼神経。
2 側頭筋—下顎神経
咀嚼筋(咬筋・側頭筋・内側翼突筋・外側翼突筋)は三叉神経第3枝の下顎神経支配。
3 広頸筋—顔面神経
顔面神経の運動は表情筋と覚えていても、広頸筋は表情筋か?ってなるかもしれない。表情筋は顔って感じの名前だから、わかるだろう。(前頭筋・後頭筋・眼輪筋・鼻筋・口輪筋・上唇挙筋・大頬骨筋・笑筋・口角下制筋・頬筋など) (p.297 表情筋)
表情筋以外の顔面神経支配の筋としては、
広頸筋、顎二腹筋後腹、茎突舌骨筋がある。(p.300 舌骨上筋群)
(顎舌骨筋と顎二腹筋前腹は下顎神経支配)
4 舌筋—舌下神経
舌筋は舌の外から舌につく外舌筋と、舌本体である内舌筋がある。どちらも舌筋と名前につけば、舌下神経支配である。
- 外舌筋
下顎骨、舌骨、頭蓋底などから起こり、舌の内部に終わる筋で、舌の位置を変える作用をする。茎突舌筋、舌骨舌筋、オトガイ舌筋などがこれに属する。 - 内舌筋
舌内に存在する筋で舌の形を変える作用をもつ。上下の縦舌筋、横舌筋、垂直舌筋などがこれに属する。舌筋の運動はいずれも舌下神経によって支配される。
まぎらわしいものに「ナントカ舌骨筋」がある。
舌骨上筋
顎舌骨筋:下顎神経
茎突舌骨筋:顔面神経
オトガイ舌骨筋:頸神経ワナ(C1~3)
舌骨下筋(p.300 舌骨上筋群)
胸骨舌骨筋、肩甲舌骨筋、胸骨甲状筋、甲状舌骨筋:頸神経ワナ(C1~3) (p.300 舌骨下筋群)
頸神経ワナ(C1~3)
頸神経叢の2本の枝(上根と下根)が先端で交通してループ(ワナ)をつくる。このワナからオトガイ舌骨筋と舌骨下筋群への筋枝が分枝する。上根は根もとで舌下神経と並走するので、オトガイ舌骨筋と甲状舌骨筋への筋枝は舌下神経の枝のように見える。 (p.315 頸神経)
問20 筋とその作用との組合せで誤っているのはどれか。
1 三角筋—肩関節の外転
2 腕橈骨筋—肘関節の伸展
3 腸腰筋—股関節の屈曲
4 半健様筋—膝関節の屈曲
解答 2
1 三角筋—肩関節の外転
三角筋前部線維:肩関節屈曲
三角筋中部線維:肩関節外転
三角筋後部線維:肩関節伸展
三角筋(p.237 上肢帯の筋)
肩から上腕上部にかけての“肩の丸み”をつくる筋で、体表から容易に観察できる。この筋は構成する筋線維の方向によって前・中・後の3部に分けられる。三角筋の前方部は鎖骨から起こる筋束で、肩関節を屈曲させる。それに対して、後方部は肩甲棘から起こる筋束で、肩関節を伸展させる。これらに挟まれた中間部の筋束は肩峰付近から起こり、肩関節の外転を行う。
ただし、三角筋だけでは上腕を水平位よりも高く挙上することができない。従って、僧帽筋や前鋸筋などが肩甲骨を回転させ、肩甲骨の関節窩を上に向ける必要がある。
2 腕橈骨筋—肘関節の屈曲
腕橈骨筋(p.245 前腕の伸筋群)
この筋は前腕の外側縁に沿って走る筋で、肘窩の外側縁の盛り上がりをなす。停止腱は橈骨茎状突起の上部に終わる。この筋は前腕伸筋群に属するが、前腕が、回内-回外の中間位にあるときには外側上顆の前(肘関節に対しでも前方)を走るので、実際は肘関節を屈曲させる。
3 腸腰筋—股関節の屈曲
内寛骨筋(p.265 内寛骨筋)
腸骨筋と大腰筋は、鼠径靱帯の後ろ(筋裂孔)を通って大腿前面に出る。共通の腱をつくって大腿骨の小転子につき、機能的には1つの筋として働くので、両方の筋を合わせて腸腰筋と呼ぶ 。
腸腰筋は、股関節の最も強力な屈筋である。歩行時には大腿を挙上する。また一方では、股関節の伸筋である大殿筋とともに関節を固定し、歩行時の体幹や身体のバランスをとる。下肢が固定されると体幹を起こす(起きあがる)。また、大腰筋は脊柱下部を引き、腰がしっかりと伸びた直立位を保たせる。
4 半腱様筋—膝関節の屈曲
半腱様筋・半膜様筋(p.272 大腿後面の筋(屈筋群))
半腱様筋は停止腱が細い腱となっており、半膜様筋は起始腱が膜状になっている。大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋の3筋を、ハムストリングス(ハムストリング筋)と総称する。大腿二頭筋短頭を除くハムストリングスは、股関節と膝関節の2つの関節を越えて伸びる2関節筋で、主として股関節を伸展し、膝関節を屈曲する。ただし、2つの関節に同時に十分な作用はできない。大腿と下腿とを固定させると、体幹を直立させる。この働きは直立歩行には重要で、筋が麻痺すると股関節を伸展位に保つことができず、体幹は前方に屈曲し転倒する。股関節を強く屈曲するとハムストリングスは引き伸ばされる。このとき膝関節を伸展しようとすると、ハムストリングスはさらに引き伸ばされることになり作用に制限が起こる。そのため、股関節を強く屈曲しているときは、膝を十分に伸ばすのが難しくなる。
問21 肝臓について正しい記述はどれか。
1 肝静脈は肝門から出る。
2 肝鎌状間膜は方形葉の右側に位置する。
3 胎生期の静脈管は臍静脈血を下大艀脈に導く。
4 中心静脈は小葉間静脈へ注ぐ。
解答 3
1 肝静脈は肝門を通らず肝臓の上部後面より出て下大静脈に直接注ぐ。
肝臓下面の中央には肝門があって固有肝動脈、門脈、肝管などが出入りする。肝門の右前方で方形葉と右葉との間には胆嚢があり、肝臓の血液を集めた肝静脈は肝臓の後面に接する下大静脈に注ぐ。(p.84 肝臓の位置と形状)
2 肝鎌状間膜は方形葉の左に位置する。
《解剖学講義》解剖的右葉、機能的右葉について
(右前側) 右葉-胆嚢-方形葉-肝鎌状間膜-左葉 (左前側)
(右後側) 右葉-下大静脈-尾状葉-肝鎌状間膜-左葉 (左後側)
肝臓は肝鎌状間膜を境に、厚くて大きい右葉と薄くて小さい左葉とに区分される。下面には、両葉に挟まれて小型の方形葉と尾状葉がある。肝門の右前方で方形葉と右葉との間には胆嚢がある。(p.84 肝臓の位置と形状)
◯ 3 胎生期の静脈管は臍静脈血を下大静脈に導く。
胎盤でO2と栄養分を付加されて動脈血となった胎児の血液は、細静脈をへて1本の臍静脈に集まり、再び臍帯を通って胎児に返る。胎児内に入った臍静脈は臍と肝臓の間に張った間膜(肝鎌状間膜)の中を通って肝臓の下面に達する。ここで臍静脈の一部は門脈に合流するものの、その本幹は肝臓を素通りする静脈管(アランチウス管)に移行して直接下大静脈に注ぐ。下大静脈では臍からの動脈血は下半身からの静脈血と混ざり合うが、混合血であっても酸素と栄養分を多く含むので胎児組織を養うことができる。(p.52 胎児循環の経路)
4 中心静脈は肝静脈へ注ぐ。
肝門を入った固有肝動脈と門脈は枝分かれをして、グリソン鞘の中でそれぞれ小葉間動脈と小葉問静脈となる。小葉間動脈と小葉間静脈の血液は、ともに内腔の広い洞様毛細血管に入り、小葉の中心を走る中心静脈に注ぐ。中心静脈は次第に集まり肝静脈となり、下大静脈に注ぐ。(p.84 肝小葉)
問22 唾液腺について誤っている記述はどれか。
1 耳下腺は顔面神経に貫かれる。
2 耳下腺管は口腔前庭に開口する。
3 舌下腺管は口腔底に開口する。
4 顎下腺の分泌には舌咽神経が関与する。
解答 4
1 耳下腺は顔面神経に貫かれる。
教科書の脳神経表に記載
2 耳下腺管は口腔前庭に開口する。
耳下腺は最大の唾液腺で、外耳道の前方で、頬骨から下方に広がる三角形をした腺で、その頂は下顎角に達する。サラサラした唾液を分泌する漿液腺で、分泌物を導く耳下腺管は、腺体の前上部より出て咬筋の外側面を横に走り、上顎の第2大臼歯に面する頬粘膜を貫き口腔前庭に開く。耳下腺は流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)で大きく腫れる。(p.75 唾液腺)
3 舌下腺管は口腔底に開口する。
顎下腺と舌下腺は、ともに梅の実大ほどの大きさで、下顎の内側に位置し、導管は舌の下面にある乳頭状のふくらみ(舌下小丘)に開く。舌下腺の一部は舌下ヒダにも開口する。両者とも混合腺で漿液分泌細胞と粘液分泌細胞が混在する。(p.75 唾液腺)
口腔底の粘膜には、舌小帯の前端から左右両側に向かう弱い高まりがみられる。この高まりを舌下ヒダといい、内部に舌下腺があるためにできる。舌下ヒダの内側端には、舌小帯の近 に舌下小丘と 呼ぶ小さな高まりがみられる。舌下小丘には顎下腺管と舌下腺管の一部が開口している 《解剖学講義》
4 顎下腺の分泌には顔面神経が関与する。
顎下腺・舌下腺の分泌:顔面神経(p.310 脳神経)
顎下腺と舌下腺の分泌を促進する節前線維は、橋と延髄の境界近くにある上唾液核から始まる、顔面神経の枝である鼓索神経から舌神経を経由して舌下で顎下神経節に入り、ここでニューロンを交代して腺に入る。
耳下腺の分泌:舌咽神経(p.310 脳神経)
延髄の下唾液核から始まり、鼓室への枝を経由し耳神経節に達する。節後線維は耳介側頭神経を経由して耳下腺に分布する。耳神経節は卵円孔の直下で下顎神経の根もとについている。
問23 泌尿器系について誤っている記述はどれか。
1 腎小体は糸球体とボーマン嚢からなる。
2 腎乳頭は髄質にある。
3 膀胱は恥骨結合のすぐ後方にある。
4 尿道は膀胱の後壁から始まる。
解答 4
◯ 1 腎小体は糸球体とボーマン嚢からなる。
腎臓の組織構造(p.90 腎臓の構造 – 組織構造)
腎臓をつくる主な構成要素は腎小体と尿細管、そして集合管の3つである。腎小体は皮質に散在する直径約0.2mmの球状の小体で、その数は片方の腎臓に約100万個ある。腎小体は、毛細血管が糸玉状に集まった糸球体と、それを包む上皮性のボウマン嚢という薄い袋からなる。ボウマン嚢の一端からは全長が3~4cmにもなる尿細管が始まり、皮質と髄質の間で複雑な走行をとって走る。尿細管は管をつくる上皮細胞の性質と走行とにより、近位尿細管・へンレループ・遠位尿細管に分けられる。尿細管は集まり集合管となって腎乳頭の先端で腎杯に開口する。集合管での水の再吸収は下垂体後葉から分泌されるパゾプレツシン(抗利尿ホルモン)により促進される。糸球体から濾過される原尿は1日に200ℓにもなるが、尿細管を通るうちに再吸収され、実際に尿として排泄されるのは2ℓ以下である。腎臓の機能を果たす基本的な構成単位として、腎小体と尿細管を合わせてネフロンという。
◯ 2 腎乳頭は髄質にある。
腎臓は皮質と髄質からできている。髄質は腎錐体がつくる。腎乳頭は腎錐体の先っぽなので、腎乳頭も髄質にあるということになる。
また、ひとつの腎錐体とその周囲の皮質は腎臓の肉眼的単位である腎葉をつくるということも覚えておこう。なので腎錐体の数=腎葉の数だ
腎臓の肉眼構造(p.90 腎臓の構造 – 肉眼構造)
大きさは縦約10cm、横約5cm、重さ100gあまりで、ソラマメ形の器官である。内側縁中央部はへこんでおり腎門と呼ばれ、ここを通って血管や尿管が出入する。腎の表面は線維性の腎被膜におおわれる。腎臓の割断面を見ると、暗赤色に見える表層の皮質と、蒼白に見える深部の髄質とに区別される。髄質は8~12個の円錐状の腎錐体の集まりからなる。腎錐体には無数の縦に走る線条が見られ、それがいくつかの束に分かれて皮質に入り、髄放線を形成する。髄放線以外の皮質を皮質迷路という。腎錐体の間に入り込んだ皮質迷路を腎柱という。腎錐体の先端は丸みを帯びて内側に向かって突出し、腎乳頭をつくる。腎乳頭は杯形をした袋に包まれ、腎杯という。腎杯は集まって腎孟となり、腎門で尿管に移行する。
◯ 3 膀胱は恥骨結合のすぐ後方にある。
膀胱は、骨盤腔の中で恥骨結合の後方、男性では直腸の前方、女性では子宮、膣の前方に位置する平滑筋性の嚢で、腹膜がその上面をおおっている。容量の最大値は平均700mlほどである。
膀胱を膀胱尖、膀胱体、膀胱底に分ける。底には3つの開口部がある。すなわち後方の左右に尿管口、前下方に内尿道口がある。この3点を結ぶ三角を膀胱三角という。この部の粘膜にはしわがないが、それ以外の粘膜には、尿量の少ないときには多数の不規則なしわがある。内尿道口の周囲を膀胱括約筋がとりまく。
4 尿道は膀胱の下部から始まる。
左右の尿管口と内尿道口(膀胱の出口・尿道の始まり)を結ぶ三角形を膀胱三角といい、膀胱底となる部分である。左右の尿管口は膀胱の後壁にあるが、内尿道口は膀胱底の前下方にあり、後壁ではないと。図を良く見ておこう。(p.94 図5–5 骨盤の矢状断)
問24 心房の内部にみられるのはどれか。
1 卵円窩
2 乳頭筋
3 腱索
4 肉柱
解答 1
1 卵円窩
胎児の心房中隔には卵円孔というアナが開いていて、主に下大静脈からの酸素飽和度の高い血液を右心房から右心室にパイパスする。
臍静脈(動脈血)→静脈管→下大静脈→右心房→卵円孔→左心房→左心室→上行大動脈
上大静脈からの血液はあまり卵円孔は通らない。
上大静脈→右心房→右心室→肺動脈幹→動脈管→大動脈弓
この卵円孔が出生後閉鎖して、「アナがくぼみとなった」ものが卵円窩。
下大静脈から右心房に入った混合血の大部分は、直ちに胎児の心房中隔に開く卵円孔を通って左心房に流れる。胎児循環では肺から心臓(左心房)に返る血流量が少ないので、左心房の圧は低い。それに比べて全身の静脈が注ぐ右心房は高圧なため、卵円孔からは一方的に右心房の血液が左心房に流れてしまう。左心房に入った血液はそのまま左心室から大動脈に注いで体循環に流れる。また、上大静脈から右心房に注ぐ上半身の静脈血は、右心房→右心室→肺動脈に流れるものが多い。(p.52 胎児循環の経路)
出生後、肺循環に血液が流れれば、肺静脈から左心房に大量の血液が返るので、これまで低圧だった左心房の圧が一気に上昇する。この結果、右心房と左心房の圧力差を原動力に、開通していた卵円孔からの血流(右心房→左心房)が止まり、卵円孔が閉じる。その後、閉鎖した卵円孔は卵円窩というくぼみとして心房中隔に痕跡を残す。(p.53 胎児循環の切り替わり)
2 乳頭筋
3 腱索
心室内面には心筋が網目状に盛り上がった肉柱や、内腔に突き出た乳頭筋がみられる。(p.41 心房と心室)
房室弁は心室に垂れ下がっており、弁尖の先端は腱索というヒモに移行する。弁尖は腱索を介して心室内腔に突き出た乳頭筋(心室筋の一部)に固定される。心室の収縮の際には乳頭筋も収縮し、ヒラヒラした弁尖が心房方向に翻るのを防ぐ。 (p.42 心臓の弁膜)
4 肉柱
心室筋の内壁には肉柱と呼ばれるヒダがあり、心拍出容量に応じて内腔を拡げ伸び縮みすることができる構造となってる。
問25 足底の大部分に血液を送るのはどれか。
1 前脛骨動脈
2 後脛骨動脈
3 腓骨動脈
4 腓腹動脈
解答 2
「足の血管、前は足背、後ろ足底」
1 前脛骨動脈
前脛骨動脈
前脛骨動脈は、下腿骨間膜の上端にできた裂孔を貫通して下腿伸側に出る。その後、下腿骨間膜の前面で前脛骨筋の外側を下行しながら下腿伸筋群を養う。足首では、長母指伸筋腱などとともに仲筋支帯をくぐって足背に達し、そのまま足背動脈に移行する。
足背動脈は足背および足指を養うほか、一部の枝はさらに深層に進入して足底動脈弓と吻合する。足背近位部で足背動脈は長母指伸筋腱と長指伸筋腱の間に脈を触れる。(p.287 下肢の動脈)
2 後脛骨動脈
後脛骨動脈
後脛骨動脈は前脛骨動脈よりも太い。脛骨神経とともに、ヒラメ筋と深層の屈筋群との間を下行しながら下腿の屈筋を養うほか、腓骨後面に沿う腓骨動脈を分枝する。足首では、深層の屈筋群および脛骨神経とともに内果の後ろを回って、土踏まずの深層で足底に入る。
足底では内・外側足底動脈に分かれる。内側足底動脈は母指球と母指に分布する。外側足底動脈の遠位部は足底深層を内側方向にカーブしながら足底動脈弓をつくって、足背動脈の枝や内側足底動脈と合流する。(p.287 下肢の動脈)
3 腓骨動脈
後脛骨動脈の最大枝で、腓骨にそって下り、外果より踵骨にいたる。
4 腓腹動脈
膝窩動脈の枝で、腓腹筋の内側頭、外側頭に分布する。
問26 門脈の形成にかかわらないのはどれか。
1 奇静脈
2 脾静脈
3 上陽間膜静脈
4 下腸間膜静脈
解答 1
門脈系(p.50 門脈系)
門脈は、主に脾静脈・上腸間膜静脈・下腸間膜静脈が合してできた特別な静脈である。胃腸や膵臓、脾臓から集められた静脈は、門脈として肝臓の中に導かれて肝組織で毛細血管に流れたのち、再び、肝静脈を経て下大静脈に注ぐ。
問27 神経と神経節との組合せで誤っているのはどれか。
1 上顎神経—翼口蓋神経節
2 動眼神経—毛様体神経節
3 顔面神経—膝神経節
4 内耳神経—耳神経節
解答 4
1 上顎神経—翼口蓋神経節
上唾液核→中間神経→内耳孔→大錐体神経→ 翼口蓋神経節→涙腺・鼻腺
これはちょっと注意が必要。翼口蓋神経節は顔面神経の副交感成分で涙腺・鼻腺を支配する大錐体神経がニューロンを乗り換える神経節だ。機能的には顔面神経に関連する神経節だが、走行的には上顎神経に付属するものとして扱う。
三叉神経は最も太い脳神経なので、顔面神経の細い枝が三叉神経と合流する場合は、三叉神経に付属するものとして扱う。
V2:上顎神経
正円孔をへて翼口蓋窩に至り、鼻腔と口蓋への枝を分けて眼窩下神経となる。眼窩下神経は、頬骨神経と上顎洞や歯槽と歯への枝を出した後、眼窩の下壁を貫き、眼窩下孔から顔面の皮下に出て下眼瞼から頬部、鼻翼、上唇の皮膚に広がる。頬骨神経は眼窩から頬骨を貫いて皮下に出る。鼻腔への枝は鼻腔の大部分の鼻粘膜の感覚を支配し、鼻中隔の粘膜内を前下方へ伸びる枝は、切歯管を通り口蓋の前部に至る。
翼口蓋神経節は翼口蓋窩にあり、顔面神経からの副交感神経線維を受ける自律神経節で、上顎神経はこの神経節と交通枝をもって連絡する。この交通枝を利用して節後線維は上顎神経の枝を経由でき、涙腺などに至る。
2 動眼神経—毛様体神経節
動眼神経副核→上眼窩裂→毛様体神経節→瞳孔括約筋・毛様体筋
動眼神経副核からの節前線維は動眼神経から分かれ、視神経のすぐ外側にある毛様体神経節に入る。ここでニューロンを交代し、節後線維は眼球の後面から進入したのち前方へ向かい、瞳孔括約筋と毛様体筋に至る。これらの筋の収縮により、瞳孔を縮小し、水晶体の厚みを増して近くの像に焦点を合わせる。(p.310 脳神経)
3 顔面神経—膝神経節
舌前2/3の味覚→鼓索神経→膝神経節→弧束核→視床→味覚野
顔面神経の味覚を伝える感覚線維(味覚線維)は鼓索神経に入って鼓膜の上縁を通り側頭下窩で舌神経に合流して舌に入る。この線維は舌の前方2/3の粘膜上皮に分布して味細胞とシナプスをつくり、味覚を伝える。この線維の細胞体は膝神経節の中にある。(p.310 脳神経)
4 舌咽神経—耳神経節
下唾液核→鼓室神経→小錐体神経→耳神経節→耳下腺
橋の下唾液核から起始した節前ニューロンは舌咽神経に混ざって鼓室神経と小錐体神経を経由した後、耳神経節で節後ニューロンに交代する。節後ニューロンは耳下腺に分布する。(p.310 脳神経)
問28 神経叢と分枝する神経との組合せで誤っているのはどれか。
1 頸神経叢—大後頭神経
2 腕神経叢—内側前腕皮神経
3 腰神経叢—外側大腿皮神経
4 仙骨神経叢—後大腿皮神経
解答 1
この問題は頸、腕、腰、仙骨という場所ではなく、脊髄神経の前枝か後枝という問題だ。脊髄神経後枝は神経叢をつくらない。
椎間孔内で、前根と後根が合わさり脊髄神経となった後、椎間孔を出て、前枝と後枝に別れる。
前枝は橈骨神経や大腿神経など、一般的な名称をもつ神経となる。また胸神経(肋間神経)以外の脊髄神経前枝は上下が吻合して神経叢をつくる。
一方、脊髄神経後枝は脊髄神経の一部が枝分かれして背部に向かうもので、神経叢をつくらない。
脊髄神経後枝は背部の知覚と固有背筋の運動性支配を行う。細い枝がいくつもでてくるので、ひっくるめて「脊髄神経後枝」と呼ぶ。
ここで注意したいのは、固有の名前がある脊髄神経後枝があることだ。
後頭下神経
第1頸神経後枝は後頭下神経といい、大後頭直筋と上および下頭斜筋によって固まれる後頭下三角から出現し、後頭下筋(大後頭直筋・小後頭直筋・上頭斜筋・下頭斜筋)を支配する。(p.224 後頭下筋)第1頸神経後枝は筋枝のみで皮枝がない。(運動性成分のみ)
大後頭神経
第2頸神経後枝(内側枝)は大後頭神経といい、後頭部から頭頂へかけての皮神経となる。(p.315 頸神経)大後頭神経は、後頭下三角の下縁をつくる下頭斜筋を支配したのち上行し、僧帽筋の起始腱を貫いて後頭部の皮膚に分布する。(p.234 背部の神経)
第3後頭神経
第3頸神経後枝(内側枝)は第3後頭神経となる。項(うなじ)の皮膚知覚を司る。
上殿皮神経
第1~3腰神経後枝の外側皮枝は上殿皮神経となり、腸骨稜を越えて殿部の皮下に至る。殿部上方の知覚を司る。(p.234 背部の神経)
中殿皮神経
第1~3仙骨神経後枝の外側皮枝は、中殿皮神経として殿部内側部の皮膚に分布し、知覚を司る。
× 1 頸神経叢—大後頭神経
大後頭神経は脊髄神経後枝なので、神経叢はつくらない。神経叢は胸神経以外の脊髄神経前枝がつくる。
2 腕神経叢—内側前腕皮神経
3 腰神経叢—外側大腿皮神経
4 仙骨神経叢—後大腿皮神経
いろいろマイナーな神経が並んでいるが、これらは重要ではない。この問題で大切なことは、
脊髄神経後枝とは何であるか理解して、名前のある脊髄神経後枝を覚えること。
そして、神経叢は脊髄神経前枝がつくる。
問29 橋に存在する核はどれか。
1 動眼神経核
2 滑車神経核
3 外転神経核
4 舌下神経核
解答 3
脳神経の出る場所
大脳:I 嗅神経
間脳:II 視神経
中脳:III 動眼神経、IV 滑車神経
橋:V 三叉神経、VI 外転神経、VII 顔面神経、VIII 内耳神経
延髄:IX 舌咽神経、X 迷走神経、XI 副神経、XII 舌下神経
覚え方は、1~12までローマン数字で書いて、1・1・2・4・4と区切り線を入れる。そして上から大脳・間脳・中脳・橋・延髄と当てはめる。
脳神経がでてくる場所と、起始核の位置はほぼ一致すると考えてよい。例えば、外転神経は橋からでてくるので、外転神経核も橋の中にある。など。
(例外は三叉神経脊髄路核。三叉神経は橋からでてくるのに対し、三叉神経脊髄路核は延髄~脊髄にある。)
1 動眼神経核 III
2 滑車神経核 IV
III,IV中脳。
◯ 3 外転神経核 VI
V,VI,VII,VIII橋
4 舌下神経核 XII
IX,X,XI,XII 延髄
問30 視覚器について誤っている記述はどれか。
1 角膜上皮は重層扁平上皮である。
2 瞳孔括約筋は横紋筋である。
3 涙腺は眼球の外側上方にある。
4 硝子体は水晶体と網膜との間にある。
解答 2
1 角膜上皮は重層扁平上皮である。
眼球壁の外層(線維膜)(p.148 眼球壁の外層(線維膜))
強膜と角膜からなり、眼球の形を保ち保護している。
① 強膜
眼球の後5/6を包む、滑らかで強靱な線維性の結合組織でできている。血管が少ないため白色で、その後部は視神経を包む膜に移行する。
② 角膜
強膜から続く線維性の無色透明な約1mmの厚さの膜で、眼球の前1/6を包む。その表層は結膜から続く重層扁平上皮の角膜上皮でおおわれている。血管がないため栄養は主として眼房水から供給される。三叉神経の枝が分布して、異物が入ると強い痛みを訴える。
2 瞳孔括約筋は平滑筋である。
虹彩(p.148 眼球壁の中層(血管膜))
毛様体から起こり、水晶体の前方でこれを周囲から縁どるように存在する。カメラの絞りにあたるもので、中心の小孔は瞳孔(直径3~6mm)と呼ばれる。虹彩は血管、神経、色素細胞に富み、その内部には輪走する瞳孔括約筋と放射状に走る瞳孔散大筋の2種類の平滑筋があり、眼球に入る光量の調節を行っている。瞳孔括約筋は副交感神経(動眼神経)により、瞳孔散大筋は交感神経によりそれぞれ支配されている。
3 涙腺は眼球の外側上方にある。
涙器(p.152 涙器)
涙腺は眼球の上外側にある小指頭大の漿液腺で、多数の導管は上結膜円蓋の外側部に開く。泣いたときには多量の涙が流れ出るが、平常でも絶えず少量ずつ分泌されて眼球前面を潤して角膜の乾燥を防いでいる。涙は内眼角(目がしら)のほうへと流れて集まり、上下の涙点から涙小管に吸収される。涙小管は鼻根部にある涙嚢に開き、涙嚢の下端に続く鼻涙管により下鼻道に注ぐ。涙は、こうして絶えず少しずつ鼻腔に流れ込んでいる。
4 硝子体は水晶体と網膜との間にある。
硝子体(p.151 硝子体)
水晶体と網膜との間にある無色透明なゼリー状の物質で、大部分は水分である。眼球の後3/5を占め、眼球の内圧を保って一定の形を与えている。
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