2007年 第15回 はり師・きゅう師 (鍼灸師) 国家試験 解剖学 問題15~30 解答
問15 受精卵が両親からほぼ同量ずつ受けとるのはどれか。
1 リボソーム
2 小胞体
3 ミトコンドリア
4 染色体
解答 4
1 リボソーム
リボソームはタンパク質の合成を行う。受精卵のリボソームは卵母細胞に由来するものなので、母親由来となる。その後、細胞分裂が始まってからは、自分自身で作ったリボソームとなっていく。
2 小胞体
小胞体は粗面小胞体と滑面小胞体があるが、これも受精卵のものは母親由来となる。
3 ミトコンドリア
ミトコンドリアも母親由来。ミトコンドリアは独自のDNAを持っていて、自己増殖する。ミトコンドリアは必ず母親のものを引き継ぐ。
4 染色体
ヒトの染色体の数は22対の常染色体と1対の性染色体があり、計46本。精子と卵子は減数分裂を行い、染色体は半分の23本となる。精子と卵子の染色体が合わさって、元どおりの46本となる。
問16 大坐骨孔を通過しないのはどれか。
1 坐骨神経
2 上殿神経
3 梨状筋
4 内閉鎖筋
解答 4
大坐骨孔(p.285 大坐骨孔)
大坐骨切痕と仙結節靱帯・仙聴靱帯によって縁取られた大坐骨孔は、貫通する梨状筋によってほとんどふさがれてしまう。ただし、梨状筋の上縁と下縁ではわずかに隙間があり、それぞれ梨状筋上孔と梨状筋下孔という。仙骨神経叢から起こる神経や内腸骨動静脈の枝が寛骨後面・大腿後面・骨盤底に向かう際の通路となる。
梨状筋上孔を通るのは上殿神経および上殿動静脈である。梨状筋下孔を通るのは下殿神経・坐骨神経・後大腿皮神経・陰部神経および下殿動静脈・内陰部動静脈である。
1 坐骨神経
坐骨神経はL4~S3に由来する人体で最大の神経である。しかし、その実体は神経叢で別々に始まる2本の神経、総腓骨神経(L4~S2) と脛骨神経(L4~S3) が同一の結合組織に包まれて、外見上、太い神経になったものである。梨状筋下孔を出たのち坐骨結節と大転子の中間付近を通って大腿後面に達するまでは両神経が付着し合った太い神経のままである。膝窩の上方で総腓骨神経と脛骨神経が分かれて、さらに下腿と足に分布する。(p.292 仙骨神経叢)
2 上殿神経
上殿神経はL4~S1が合流して神経叢の背側から出る。梨状筋上孔を通って寛骨後面に達し、小殿筋と中殿筋の間を両筋に枝を与えながら走って大腿筋膜張筋に至る筋枝を出す。(p.292 仙骨神経叢)
3 梨状筋
仙骨前面から出て外下方に走り、大坐骨孔を通り前方に向かい、大転子につく。大腿を外方にまわす。また外転する。仙骨神経叢の枝をうける。
4 内閉鎖筋
骨盤側壁内面の閉鎖孔の周囲から起こり、後方に向かい小坐骨孔を通り、前外方に向かい大腿骨転子窩につく。大腿を外方にまわす。仙骨神経叢の枝をうける。
問17 膝窩の辺縁を構成しないのはどれか。
1 大腿二頭筋
2 縫工筋
3 半腱様筋
4 腓腹筋
解答 2
膝窩(p.286 膝窩)
膝部の後面にできた菱形のくぼみで、外側上縁は大腿二頭筋、内側上縁は半腱・半膜様筋の隆起に、内・外側下縁は腓腹筋の内外側頭によって固まれる。大腿二頭筋の停止腱をたどると膝窩の外側に腓骨頭が触れる。
大腿後面を下行してきた坐骨神経は膝窩の上方で総腓骨神経と脛骨神経に二分する。脛骨神経は膝窩の中央をそのまま垂直に下行して腓腹筋の深層に入り込む。もう一方の総腓骨神経は膝窩外側縁の大腿二頭筋に沿って下行して、腓骨頭の下方で皮下浅くに出て長腓骨筋の起始部を貫いて下腿前面にいたる。また、膝窩中央の深部には膝窩動静脈が縦走する。
問18 下顎骨にみられないのはどれか。
1 下顎角
2 下顎頸
3 下顎窩
4 下顎枝
解答 3
下顎骨(p.209 下顎骨)
下顎骨は馬蹄形の骨で、歯の並ぶ下顎体と、後上方に伸びる下顎枝よりなる。
下顎体の上縁は歯が並ぶ歯槽部である。また下顎体の前端はオトガイと呼ばれ、体表上の目印になる。オトガイ正中部の高まりをオトガイ隆起という。オトガイの両脇にはオトガイ孔が開く。オトガイが隆起するのはヒトの特徴とされる。
下顎枝の上端は、後方の関節突起と前方の筋突起の2つに分かれる。関節突起は、下顎頭として先端が丸くなり側頭骨の下顎窩にはまって顎関節を形成する。筋突起は、咀嚼筋の付着部になる。下顎枝の内面には下顎孔が開きき、この孔から下顎体の中にかけて下顎管が続いてオトガイ孔に出る。下顎体から下顎枝への移行部の下端は突出して、下顎角といい、体表からよく触れる。
1 下顎角
下顎体下縁と下顎枝の後縁が作る角。L 字形の横棒と縦棒の合する点。
2 下顎頸
関節突起の下顎頭の直下でくびれた部分。
3 下顎窩:側頭骨
下顎窩は側頭骨にあるくぼみで、下顎骨の下顎頭がはまり込み、顎関節を形成する。
4 下顎枝
下顎体の後端から垂直に上方に向かう部分。
問19 胸椎にみられないのはどれか。
1 前結節
2 棘突起
3 関節突起
4 椎孔
解答 1
1 前結節
頸椎(Cで略す):7個(C1~7)(p.172 頸椎)
頸椎は頭部脊柱をつくる7個の椎骨で、頭部を支える椎骨として特殊化する。上方から頸椎を観察すると、椎体は小さく、前後径が短い楕円形をとる。椎弓は椎体よりも横に張り出し、内部の椎孔も横に広がって三角形に近くなる。棘突起は短く、ほぼ水平後方に出る。中位の頸椎では棘突起の先端は2裂に分かれ、その間に項靱帯が付着する。横突起は短いが幅広い。頸部では肋骨が退化して頸椎の横突起に取り込まれる。その結果、横突起の前半部は肋骨に、後半部は本来の横突起にそれぞれ相当し、両者の間に横突孔が残る。C1~6の横突孔には上行して脳に至る椎骨動脈が通る。また、横突起上面で両者の間には脊髄神経溝があり、椎骨を連結させると、椎間孔と連絡して頸神経を通す。横突起先端には脊髄神経溝の前後に前結節と後結節が突出する。
2 棘突起
3 関節突起
4 椎孔
胸椎(Tで略す):12個(T1~T12)(p.174 胸椎)
胸椎は、胸部の脊柱を構成する12個の椎骨である。胸椎は脊柱の中央部に位置し、各椎骨の中でも典型的な形態をしている。
12個の胸椎は、左右12対の肋骨と胸骨と共に体幹の基本骨格になって、鳥カゴのような胸郭をつくる。肋骨との関節は、椎体外側面の後方にある肋骨窩と横突起の先端にある横突肋骨窩で行う。一般に、椎体に連結する肋骨頭は、椎間円板を挟んでさらに1つ上位の推体にまで拡大して付着するので、肋骨窩は上下の肋骨窩に分かれる。たとえば、第5肋骨は、T5椎体の上肋骨窩だけにつくのではなく、椎間円板を挟んで1つ上位のT4椎体の下肋骨窩にまたがって関節する。
また、胸椎の棘突起は長くて下後方に傾斜がついており、胸部脊柱を後方から見ると棘突起が屋根瓦のように重なり合っている。これは胸椎間での運動を制限する要因になるので、胸部脊柱は頸部や腰部に比べて可動性が低くて安定する。(注) 第1肋骨は2つの椎体にまたがることはなくT1のみと関節をなす。さらにT11とT12では、椎体の肋骨窩は上下に分かれず、椎体ごとに単独の肋骨窩をつくる。またT11とT12では横突肋骨窩もない。
問20 筋とその支配神経との組合せで正しいのはどれか。
1 大腿四頭筋―――脛骨神経
2 長内転筋―――閉鎖神経
3 長腓骨筋―――深腓骨神経
4 前脛骨筋―――浅腓骨神経
解答 2
1 大腿四頭筋―――大腿神経
大腿神経は腰神経叢中最大で鼠径靱帯の下の筋裂孔を通り、大腿部前面の中央を下行し、大腿の伸筋群(大腿四頭筋、縫工筋)と内転筋(恥骨筋)、大腿前面の皮膚を支配する。伏在神経が下腿内側から足背内側縁の皮膚に至る。
後枝は内側枝と外側枝に分かれ背部、腰部およびその上の皮膚に分布する。外側枝には上殿皮神経がある。(p.290 腰神経叢)
◯ 2 長内転筋―――閉鎖神経
閉鎖神経は骨盤前面の閉鎖管を通過する神経で、大腿上部内側面にあらわれ、大腿の内転筋群と大腿内側の皮膚に分布し、下端は膝関節に至る。(p.290 腰神経叢)
3 長腓骨筋―――浅腓骨神経
総腓骨神経は大腿後面では脛骨神経の外側に位置し、大腿二頭筋長頭の深層を下行しながら大腿二頭筋短頭に枝を与える。その後、膝窩の上方で脛骨神経と分離して大腿二頭筋の停止腱に沿って腓骨頭の下方(腓骨頸)に達する。
この神経は外側から腓骨頸を回り込んで下腿に入る際に、次の2枝に分かれる。すなわち、下腿外側の腓骨筋群に分布する浅腓骨神経と、下腿前面の伸筋群に向かう深腓骨神経である。浅腓骨神経は長・短腓骨筋に枝を出した後、下腿の遠位部で皮神経となって皮下に出て、内側および中間足背皮神経として足背に分布する。(p.292 仙骨神経叢)
4 前脛骨筋―――深腓骨神経
深腓骨神経は長腓骨筋の起始の深層を素通りして伸筋群に達し、長指屈筋と前脛骨筋の間を下行しながら長指伸筋・長母指伸筋・前脛骨筋に枝を出す。さらに、長母指伸筋腱および前脛骨動脈などとともに伸筋支帯の深層をくぐって足背に達し、短母指伸筋および、短指伸筋への枝を出す。その後、細い皮神経となって母指と第2指の間(下駄の鼻緒が食い込む位置)の皮膚に分布して感覚を担う。 (p.292 仙骨神経叢)
問21 膵臓について誤っている記述はどれか。
1 内分泌腺の膵島は頭部に多い。
2 腹膜後器官である。
3 脾動脈の枝が分布する。
4 膵管は膵臓の中を通る。
解答 1
1 内分泌腺の膵島は尾部に多い。
膵島は外分泌細胞の間に散在する直径0.2mmほどの内分泌細胞の集まりで、膵臓の尾部に多く、その数はおよそ100万個、膵臓の容積の約2%を占める。膵島の内分泌細胞は色素に対する染色性の違いから、α細胞(アルファ)、β細胞(ベータ)、δ細胞(デルタ)の3種類が区別される。α細胞は約20%を占め、肝臓のグリコーゲンをグルコースに変え、血糖値を上昇させるグルカゴンを分泌する。β細胞は約80%を占め、インスリンを分泌する。インスリンはグルコースをグリコーゲンに変えて肝臓に貯蔵するとともに、体内の種々の細胞でのグルコースの取り込みを促し、細胞におけるグルコースの利用を促進する。糖原病はインスリンの分泌不足、あるいは作用低下によって起こる。δ細胞は極めて少なく、グルカゴンやインスリンの分泌を抑制するソマトスタチンを産生する。(p.114 膵臓)
2 腹膜後器官である。
膵臓は長さ約15cm、重さ70gほどの舌状の実質性器官で、第1・第2腰椎の前を後腹壁に付着して横走する。(p.87 膵臓)
十二指腸・膵臓・上行結腸・下行結腸などは前面のみが腹膜におおわれ、後面は後腹壁に張りつく。また腎臓・副腎などは脂肪に包まれて後腹壁に埋まっており腹膜との関係は薄い。このように後腹壁に接着した臓器を腹膜後臓器と総称する。(p.87 腹膜)
3 脾動脈の枝が分布する。
膵臓は腹腔動脈と上腸間膜動脈の2系統から栄養を受ける。
膵体部と膵尾部は主に脾動脈、
膵頭部上部は胃十二指腸動脈の枝である上膵十二指腸動脈、
膵頭部後下部は上腸間膜動脈の枝である下膵十二指腸動脈からの栄養を受ける。
4 膵管は膵臓の中を通る。
膵液を集めてきた膵管は総胆管と合流し、大十二指腸乳頭に開口する。(p.87 腹膜)
問22 鼻腔について誤っている記述はどれか。
1 鼻中隔の両面は鼻粘膜に覆われる。
2 中鼻道は中鼻甲介の上方にある。
3 鼻腔の下壁は口蓋である。
4 後鼻孔は咽頭に開口する。
解答 2
1 鼻中隔の両面は鼻粘膜に覆われる。
鼻腔は鼻中隔により仕切られ左右に分かれる。鼻腔の大部分を占める鼻粘膜は、多列線毛上皮でおおわれ、血管に富み、多くの鼻腺がある。鼻粘膜におおわれた鼻甲介のひだは、吸い込んだ空気を体温近くに暖め、十分に湿気を与え、ほこりを取って、肺に送り込む。鼻中隔の前端部で、外鼻孔に近い鼻粘膜には毛細血管が多く集まり、直下には軟骨もあって、鼻出血を起こしやすい。この部位をキーゼルバッハ部位という。鼻腔の後上部には嗅覚を受け持つ嗅粘膜(嗅上皮)がある。 (p.63 鼻粘膜)
2 中鼻道は中鼻甲介の下方にある。
鼻腔の外側壁には、上鼻甲介・中鼻甲介・下鼻甲介というひさしが垂れ下がり、その陰に上鼻道・中鼻道・下鼻道という通路がつくられる。また鼻甲介と鼻中隔との間を総鼻道という。(p.63 鼻道)
3 鼻腔の下壁は口蓋である。
口蓋・軟口蓋(p.72 口蓋・軟口蓋)
口蓋は口腔の天井をなし、上方にある鼻腔から隔てられる。(口腔の上壁、鼻腔の下壁)
口蓋の前2/3は上顎骨と口蓋骨でできた骨の支柱を持つ硬口蓋、後1/3は筋肉とそれをおおう粘膜とでできた軟口蓋よりなる。口蓋の中央には前後に走る高まりがあり、口蓋縫線という。(p.72 口蓋・軟口蓋)
4 後鼻孔は咽頭に開口する。
鼻腔は外鼻孔に始まり、後方は後鼻孔により咽頭に通じる。 (p.62 鼻腔・副鼻腔)
問23 内分泌系について正しい記述はどれか。
1 アドレナリンは副腎皮質から分泌される。
2 上皮小体は甲状腺の前面にある。
3 下垂体の後葉は神経性下垂体とも呼ばれる。
4 男性ホルモンは前立腺から分泌される。
解答 3
1 アドレナリンは副腎髄質から分泌される。
副腎髄質の細胞は交感神経細胞と起源を同じくする神経由来の細胞で、交感神経細胞と同様に重クロム酸カリを含む染色液で黄褐色に染まるところからクロム親性細胞と呼ばれる。髄質細胞は分泌するホルモンの違いからアドレナリン細胞とノルアドレナリン細胞の2種類が区別される。(p.113 副腎髄質)
2 上皮小体は甲状腺の後面にある。
上皮小体 (副甲状腺)は甲状腺の背面にある米粒大の暗褐色の小体で、上下1対、合計4個ある。腺細胞が集まりその間に毛細血管が発達する。腺細胞は主細胞と酸好性細胞がある。ホルモンを分泌するのは主細胞で、酸好性細胞はミトコンドリアを豊富に含み赤い色素によく染まる。酸好性細胞は主細胞との移行形があり、高齢で増加するところから主細胞の退行形とも考えられる。上皮小体から分泌されるパラソルモンは骨組織に作用して、そこに含まれるカルシウムを動員し、血中のカルシウム濃度を高める。(p.112 上皮小体)
◯ 3 下垂体の後葉は神経性下垂体とも呼ばれる。
神経性下垂体は第3脳室底の突出によって生じた神経組織であり、後葉とそれを視床下部につなげる漏斗からなる。後葉には腺細胞はなく視床下部にある神経核(視索上核・室傍核)で生成され神経線維の中を下降してきた後葉ホルモンが、ここに蓄積され放出される。神経細胞が分泌作用を営むことを神経分泌をいう。神経分泌により生成される後葉ホルモンにはオキシトシンとバゾプレッシンの2つがある。オキシトシンは子宮と乳腺の平滑筋を収縮させる作用があり、分娩が促進され陣痛促進剤として用いられる。バゾプレッシンは腎臓の集合管での水の再吸収を促進する。その結果、尿量が減少するので抗利尿ホルモン(ADH)ともいわれる。(p.110 神経性下垂体)
4 男性ホルモンは精巣から分泌される。
精巣では精子が産生されるほかに、精細管の間の結合組織の中に小さな集団をつくる間細胞(ライディッヒ細胞)により、男性ホルモン(テストステロン)が分泌される。(p.114 性腺)
また、副腎皮質の網状帯からも副腎アンドロジェン(男性ホルモン)が分泌される。これは女性にとっての男性ホルモンとして重要である。(p.113 副腎皮質)
問24 男性生殖器について誤っている記述はどれか。
1 精索は鼠径靱帯の上を通る。
2 陰嚢の正中部には縫線がみられる。
3 精管は膀胱に開口する。
4 尿道球腺は左右1対ある。
解答 3
1 精索は鼠径靱帯の上を通る。
精巣上体管は精巣上体の尾部に近づくと屈曲を減じ、精管に移行する。精管は全長が約40cmあり、直径は2~3mmで、その壁は厚く、粘膜・筋層・外膜が区別できる。精巣上体を離れた精管は、陰嚢内を上行し鼠径管を通って骨盤内に入る。鼠径管を通り骨盤内に入るまでの間、精管は血管、神経と一緒に結合組織で束ねられヒモ状を呈し、精索と呼ばれる。(p.97 精管)
鼠径靱帯は外腹斜筋の停止腱膜の下縁が肥厚して靱帯となって、上前腸骨棘と恥骨結節との間に張ったものである。鼠径管は、鼠径靱帯の上縁に沿って斜め内下方に向かって走る側腹筋のトンネルで、その長さは、成人では約4cmある。腹腔側の入口は深鼠径輪といい鼠径靱帯のほぼ中央にあり、内下方に斜走して恥骨結合のすぐ上方の浅鼠径輪で腹壁の外に出る。ここを男性では精管と精巣動・静脈を含む精索が、女性では子宮円索という結合組織のひもが通る。(p.215 鼠径靱帯と鼠径管)
2 陰嚢の正中部には縫線がみられる。
陰嚢は精巣・精巣上体・精管を入れる袋で、中隔によって内部は左右に分けられ、それに対応する皮膚には縫線が見られる。皮膚は薄く、真皮の深層には肉様膜と呼ばれる平滑筋が発達して、温度変化により伸縮し表面にチリメン皺を生じる。(p.99 陰嚢)
3 精管は尿道に開口する。
骨盤内に入った精管は膀胱の後ろをまわり前立腺を買いて、左右別々に尿道に開く。精管が前立腺を貫くところは著しく細くなって射精管と呼ばれる。また精管が前立腺に入る手前の部分は太くなって精管膨大部を形成する。精子は主に精巣上体の尾部に位置する精巣上体管に蓄えられ、性的興奮が極点に達すると、精管の壁にある輪走筋が律動的に収縮して内容を射精管から尿道に放出し、射精が起こる。(p.97 精管)
4 尿道球腺は左右1対ある。
尿道球腺は前立腺の下方に左右1対あるエンドウ豆大の粘液腺で、性的興奮の際に陰茎の亀頭を潤す。(p.98 精路 – 付属腺)(女性の大前庭腺は尿道球腺に相同である)
問25 下肢の動脈について正しい記述はどれか。
1 大腿動脈は鼠径靱帯の上を通る。
2 膝窩動脈は総腓骨神経と伴行する。
3 前脛骨動脈は足根管を通過する。
4 後脛骨動脈は足底動脈弓を形成する。
解答 4
1 大腿動脈は鼠径靱帯の下を通る。
筋裂孔と血管裂孔(p.284 筋裂孔と血管裂孔)
寛骨前面は弓状になっており、その上に上前腸骨棘と恥骨結節の間を結ぶ鼠径靱帯が張っている。腰部から大腿部に向かって走る腰神経叢の枝や下肢を養う脈管は、鼠径靱帯の下と寛骨との間にできる筋裂孔と血管裂孔という隙間を通る。血管裂孔と筋裂孔の間は腸恥筋膜弓で仕切られる。そしてこれらの裂孔は鼠径靱帯の下から大腿三角に連続する。
筋裂孔は、本来、鼠径靱帯の下を通る腸腰筋の通路である。腰神経叢から起こる大腿神経と外側大腿皮神経は腸腰筋に導かれるように筋とともにこの裂孔を通って下行し、大腿に至る。
血管裂孔は筋裂孔よりも内側にあり、リンパ管、大腿静脈、大腿動脈が内側からこの順に並んで通る。特にリンパ管が通る血管裂孔の最内側を大腿輪という。このほか、陰部大腿神経の大腿枝も血管裂孔を通る。
2 膝窩動脈は脛骨神経と伴行する。
膝窩
膝部の後面にできた菱形のくぼみで、外側上縁は大腿二頭筋、内側上縁は半腱・半膜様筋の隆起に、内・外側下縁は腓腹筋の内外側頭によって固まれる。大腿二頭筋の停止腱をたどると膝窩の外側に腓骨頭が触れる。
大腿後面を下行してきた坐骨神経は膝窩の上方で総腓骨神経と脛骨神経に二分する。脛骨神経は膝窩の中央をそのまま垂直に下行して腓腹筋の深層に入り込む。もう一方の総腓骨神経は膝窩外側縁の大腿二頭筋に沿って下行して、腓骨頭の下方で皮下浅くに出て長腓骨筋の起始部を貫いて下腿前面にいたる。また、膝窩中央の深部には膝窩動脈・静脈が縦走する。(p.286 膝窩)
膝窩動脈
膝窩動脈が膝窩の深層を下行する際には、膝関節の後面に接し、数本の膝動脈を出して関節を養う。膝窩の下端では、脛骨神経とともにヒラメ筋の起始腱弓をくぐって下腿の深層に入り、膝窩筋の下縁で前・後脛骨動脈に分かれる。(p.287 下肢の動脈)
3 後脛骨動脈は足根管を通過する。
実は教科書のどこにも「足根管」という記述はでてこないのだが、とても重要なので確実に覚えよう。足根管は内果と踵骨の間で屈筋支帯によって囲まれた空間をいう。簡単に言えば、「内果の後ろ」だ。
足根管を通過するもの:後脛骨筋・長指屈筋・長母指屈筋、後脛骨動脈、脛骨神経
後脛骨筋・長指屈筋・長母指屈筋
後脛骨筋・長指屈筋・長母指屈筋の3屈筋は下腿後面の深層にあり、それらの腱は脛骨の内果の後側を回って足底に達する。内果と踵骨の間を橋渡しする屈筋支帯により、屈筋腱は保持される。
後脛骨筋は、足を強く内反する。また、縦足弓(足の縦アーチ)の内側部を高く保つ働きがある。
長母指屈筋は母指を屈曲させ、長指屈筋は第2~5指を屈曲させる。両筋とも足関節の底屈、内反に加わり、また縦足弓の維持を助ける。(p.277 下腿後面の筋(屈筋群))後脛骨動脈
後脛骨動脈は前脛骨動脈よりも太い。脛骨神経とともに、ヒラメ筋と深層の屈筋群との間を下行しながら下腿の屈筋を養うほか、腓骨後面に沿う腓骨動脈を分枝する。足首では、深層の屈筋群および脛骨神経とともに内果の後ろを回って、土踏まずの深層で足底に入る。 (p.287 下肢の動脈)
脛骨神経
大腿後面では総腓骨神経の内側に位置し、大腿二頭筋長頭の深層を下行しながら、半腱・半膜様筋および大腿二頭筋長頭に枝を送って支配する。その後、総腓骨神経と分離して膝窩動静脈とともに膝窩中央を垂直に下行し、下腿後面に至る。膝窩では下腿三頭筋・膝窩筋・足底筋に枝を送るほか、内側腓腹皮神経を出す。内側腓腹皮神経は、総腓骨神経の枝と合流したあと腓腹神経となり、下腿の遠位部・踵部・足背の外側部の皮膚感覚を担う。脛骨神経の本幹はヒラメ筋腱弓の深層をくぐって、ヒラメ筋と下腿深層の屈筋群(長指・長母指屈筋および後脛骨筋)の間を通り、これら下腿深層の屈筋に枝を出す。さらに、脛骨神経は足首まで下行して、長指屈筋・長母指屈筋・後脛骨筋・後脛骨動静脈とともに内果の後方を回って足底に向かう。(p.292 仙骨神経叢)
◯ 4 後脛骨動脈は足底動脈弓を形成する。
後脛骨動脈
後脛骨動脈は足底では内・外側足底動脈に分かれる。内側足底動脈は母指球と母指に分布する。外側足底動脈の遠位部は足底深層を内側方向にカーブしながら足底動脈弓をつくって、足背動脈の枝や内側足底動脈と合流する。(p.287 下肢の動脈)
問26 胸管について誤っている記述はどれか。
1 腰リンパ本幹と腸リンパ本幹の合流により形成される。
2 横隔膜の大静脈孔を通過する。
3 左の内頸静脈と鎖骨下静脈の合流部に注ぐ。
4 右上半身を除く全身のリンパを集める。
解答 2
1 腰リンパ本幹と腸リンパ本幹の合流により形成される。
骨盤と下肢のリンパは鼠径リンパ節に集まり、総腸骨動静脈から腹大動脈と下大静脈に沿って上行する腰リンパ本幹に注ぐ。また、腸管からの乳び管は腸間膜を通って、腸リンパ本幹に注ぐ。横隔膜の大動脈裂孔付近で腰リンパ本幹と腸リンパ本幹は合流して、大動脈の後方に乳び槽という袋状の膨らみをなす。乳び槽は胸管という太いリンパ本幹に移行する。(p.55 全身のリンパ本幹)
2 横隔膜の大動脈裂孔を通過する。
横隔膜の孔と通過するもの(p.213 横隔膜)
孔 | 高さ | 通過するもの |
---|---|---|
大動脈裂孔 | 第12胸椎 | 下行大動脈, 胸管, 奇静脈, 動脈周囲交感神経叢(大内臓神経・小内臓神経など) |
食道裂孔 | 第10胸椎 | 食道, 迷走神経 |
大静脈孔 | 第8胸椎 (腱中心にある) | 下大静脈 |
3 左の内頸静脈と鎖骨下静脈の合流部に注ぐ。
4 右上半身を除く全身のリンパを集める。
内頸静脈と鎖骨下静脈の合流部を静脈角と呼ぶ。右の静脈角には右上半身のリンパを集めた右リンパ本幹が、左の静脈角には左上半身と全下半身のリンパを集めた胸管がそれぞれ注ぐ。(p.49 上大静脈に注ぐ枝)
問27 脳神経について誤っている記述はどれか。
1 喉頭は迷走神経に支配される。
2 鼓索神経は顔面神経の枝である。
3 舌神経は下顎神経の枝である。
4 側頭筋は上顎神経に支配される。
解答 4
1 喉頭は迷走神経に支配される。
迷走神経の運動成分
延髄の疑核から始まり、軟口蓋や咽頭・喉頭の筋を支配する。反回神経は、右は鎖骨下動脈の下を、左は大動脈弓の下を回り、反転して気管と食道に枝を出しながら上行し、下喉頭神経となる。飲食物を飲み込む嚥下や発声などを行う。(p.310 脳神経)
2 鼓索神経は顔面神経の枝である。
鼓索神経は顔面神経の中で、舌のほうに向かう神経である。つまり舌前2/3の味覚と顎下腺・舌下腺の分泌を司っている。(コサックダンスをしながら梅干しを食べたら酸っぱくて唾がたくさんでたイメージ)
顔面神経の感覚成分
味覚を伝える感覚線維(味覚線維)は鼓索神経に入って鼓膜の上縁を通り側頭下窩で舌神経に合流して舌に入る。この線維は舌の前方2/3の粘膜上皮に分布して味細胞とシナプスをつくり、味覚を伝える。この線維の細胞体は膝神経節の中にある。(p.310 脳神経)
顔面神経の副交感成分
涙・鼻水と唾液の分泌を促進する神経線維は橋と延髄の境界近くにある上唾液核から始まる。涙腺を支配する節前線維は、大錐体神経を経由して翼口蓋窩にある翼口蓋神経節に入る。この神経節から始まる節後線維は上顎神経の枝である頬骨神経を経て涙腺神経に合流して涙腺に至る。鼻粘膜や口蓋の小唾液腺を支配する節後線維も上顎神経の枝を経由する。顎下腺と舌下腺の分泌を促進する節前線維は、鼓索神経から舌神経を経由して舌下で顎下神経節に入り、ここでニューロンを交代して腺に入る。(p.310 脳神経)
3 舌神経は下顎神経の枝である。
V3:下顎神経
三叉神経節から下方へ伸びる下顎神経は、すぐに卵円孔を通って側頭下窩に出て多数の枝に分かれる。各咀嚼筋と鼓膜張筋への筋枝は比較的短い。舌神経は途中で鼓索神経と合流したのち外側下方から舌に進入する。耳介側頭神経は、顎関節の内側を通り、外耳孔の直前で皮下に出て側頭部へ広がる。頬神経は頬部から口角の口腔粘膜と皮膚に分布する。下歯槽神経は、顎舌骨筋などへの筋枝を出したのち下顎管の中へ入り、各歯根への枝とオトガイ孔から皮下に出る枝を分岐する。
下顎神経からは、ツチ骨に停止して鼓膜を緊張させる鼓膜張筋や、軟口蓋の口蓋帆張筋を支配する筋枝も分かれる。(p.310 脳神経)
4 側頭筋は下顎神経に支配される。
三叉神経の運動成分
橋にある三叉神経運動核から始まり、運動根を通り、下顎神経の一部となる。(p.310 脳神経)
問28 神経の経路について誤っている記述はどれか。
1 腋窩神経は上腕骨の外科頸と接する。
2 橈骨神経は上腕骨骨幹部の後面と接する。
3 尺骨神経は上腕骨の外側上顆と接する。
4 総腓骨神経は腓骨頸と接する。
解答 3
1 腋窩神経は上腕骨の外科頸と接する。
腋窩神経は、後神経束から分かれる太い枝である。腋窩の後壁にある外側腋窩隙を通って上肢帯の背面に出たところで小円筋に筋枝を送るほか、肩から上腕外側部の皮枝である上外側上腕皮神経も出す。残った腋窩神経の本幹は、上腕骨の外科頸の高さで三角筋の深層に入り込み、上腕骨を後ろから外回りに走って、三角筋への枝を次々と出す。(p.262 上肢帯での神経走行(腋窩神経など))
2 橈骨神経は上腕骨骨幹部の後面と接する。
橈骨神経は、腕神経叢の枝で最も太い神経である。外側腋窩隙の下方で大円筋と上腕三頭筋長頭と上腕骨に囲まれた三角形の間隙を通って、腋窩から上腕骨後面に回り込む。
上腕の後方に出た橈骨神経は、上腕三頭筋の外側頭と内側頭との間を分けるように外側下方に向かって斜走する。上腕骨体の後面には橈骨神経が骨(橈骨神経溝)に直に接して走る。上腕の中央付近で上腕三頭筋の外側縁から出た橈骨神経は、外側上腕筋間中隔を後ろから前に貫通して下行し、外側上顆の前方に至る。
外側上顆の前方では、腕橈骨筋に枝を出して支配した後、この筋の深層で橈骨神経は大きく浅枝と深枝に2分岐する。
橈骨神経の浅枝は手背の橈側に分布する皮神経である。腕橈骨筋下に隠れて前腕を下行し、前腕下方では腕橈骨筋が腱になって細くなると皮下浅くに出て、手背の皮下に進入する。
橈骨神経の深枝は、主に前腕伸筋群の支配神経である。長・短橈側手根伸筋の深層で回外筋の中央を貫通し、前腕の伸筋群を次々に支配する。(p.264 上肢後面の神経走行(橈骨神経))
3 尺骨神経は上腕骨の内側上顆と接する。
尺骨神経は、主に手の支配神経である。上腕部では屈筋と伸筋の間にある内側上腕筋間中隔の後方を走り、そのまま上腕骨の内側上顆の後方を通る。内側上顆の後面には、尺骨神経が骨に接する部分に尺骨神経溝が生じる。体表から肘頭と内側上顆の間のくぼみを探ると、触れたときに不快感を覚えるコリッとした尺骨神経がわかる。
尺骨神経溝を通って前腕に入った尺骨神経は、内側上顆から起こる尺側手根屈筋の深部に入り込む。これ以降、尺骨神経は尺骨動脈とともに尺側手根屈筋と深指屈筋の間を走り、両筋に筋枝を出す。手根に近づくと、尺側手根屈筋が腱になって細くなるので、筋におおわれていた神経と動脈は腱の橈側に出てくる。ここで手掌と手背の尺側半の皮枝(手掌枝と手背枝)を出す。
手根部では、尺骨神経は動脈とともに結合組織に包まれて、屈筋支帯の浅層を豆状骨の橈側から手内に尺骨神経管(ギヨン管)を通って進入する。
手内では小指球筋のほか、中手筋、母指球筋の一部に至る筋枝(深枝)と薬指と小指への皮枝(浅枝)を出す。(p.261 上肢前面の神経定行(筋皮神経・正中神経・尺骨神経))(注) 肘頭を強く打ったときに、尺骨に沿って手の尺側半までビリッと衝撃が走るのは、肘頭のすぐそばに尺骨神経が走るためである。
4 総腓骨神経は腓骨頸と接する。
総腓骨神経は大腿後面では脛骨神経の外側に位置し、大腿二頭筋長頭の深層を下行しながら大腿二頭筋短頭に枝を与える。その後、膝窩の上方で脛骨神経と分離して大腿二頭筋の停止腱に沿って腓骨頭の下方(腓骨頸)に達する。(p.292 仙骨神経叢)
問29 感覚の伝導路を構成するのはどれか。
1 大脳脚
2 中小脳脚
3 内側毛帯
4 延髄錐体
解答 3
1 大脳脚:皮質脊髄路(錐体路)が通る
2 中小脳脚:橋から小脳への線維 (皮質橋核小脳路) が通る
3 内側毛帯:後索-内側毛帯路が通る
4 延髄錐体:皮質脊髄路(錐体路)が通る
長後索路 (後索-内側毛帯路)
マイスネル小体やパチニ小体などの感覚受容器で信号化された触圧覚は、一次ニューロンである脊髄神経節細胞の末梢突起から中枢突起をへて脊髄に入り、同側の後索を上行して延髄に達し、後索核で二次ニューロンに交代する。後索核で交代した二次ニューロンの神経線維は交叉して反対側に入り、内側毛帯をつくって、延髄、橋の背側部、中脳被蓋の腹外側を上行して視床に達し、三次ニューロンに接続する。視床から起こる三次ニューロンの線維は内包を通り、大脳皮質の中心後回にある体性感覚野に入る。(p.133 上行性伝導路)
問30 皮膚の各部分について誤っている記述はどれか。
1 表皮は結合組織に富む。
2 真皮は膠原線維に富む。
3 皮下組織は脂肪組織に富む。
4 毛は角質に富む。
解答 1
表皮:重層扁平上皮
真皮:密性結合組織
皮下組織:疎性結合組織
× 1 表皮は結合組織に富む。
これは直しようがない。表皮は重層扁平上皮、つまり上皮組織だ。上皮組織とは細胞がびっしりと並んでいるもの。結合組織は細胞がまばらで、細胞間質が多いのが特徴。人体は4つの組織に分類される。上皮組織・結合組織・筋組織・神経組織の4つだ。
表皮は上皮組織であるので、結合組織に富むというのは根本的に誤っている。
2 真皮は膠原線維に富む。
真皮は太い膠原線維が交錯してできる丈夫な層で、表皮の裏打ちをして皮膚本体の機械的な強靱さをつくりだす。表皮との境界には真皮側から乳頭が突き出し、ここに毛細血管や感覚神経の終末が入り込んでいる。血管網は真皮の浅層と深層の2面に広がる。(p.28 真皮)
3 皮下組織は脂肪組織に富む。
皮下組織は疎性結合組織からなり、皮膚本体と深層にある骨格や筋との間をゆるくつないで、丈夫な皮膚が身体の動きを妨げないようにする。また皮下組織には多量の脂肪細胞が集まって皮下脂肪層をつくり、体熱の喪失を防ぐとともに、外力に対するクッションの役割を果たす。(p.28 皮下組織)
4 毛は角質に富む。
毛は、表皮が深く落ち込みその下端部でつくられて外に向かって伸び、皮膚の表面から出たものである。毛は皮膚の表面から外部に出ている毛幹と、皮膚の内部に埋まっている毛根からなる。毛根の下端はふくらみ毛球という。皮膚の中にもぐった毛根は毛包という袋に包まれる。毛包は表皮に続く上皮性毛包と、そのまわりの結合組織性毛包とからなる。毛包の深部先端から毛球に向かって、結合組織性の毛乳頭が入り込む。毛乳頭をドーム状におおう上皮細胞の集団が毛母基で、この細胞が分裂して毛を発育させる。毛包には脂腺が付属し、立毛筋が付着する。脂腺は毛包に開口する。立毛筋は毛を立てるとともに脂腺の分泌を助げる。角質は毛、爪などの主要な構成成分である。(p.29 毛)
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