2006年 第14回 はり師・きゅう師 (鍼灸師) 国家試験 解剖学 問題14~32 解答
問14 腋窩の壁を構成する筋について誤っている組合せはどれか。
1 前壁———大胸筋
2 後壁———大円筋
3 内側壁———前鋸筋
4 外側壁———三角筋
解答 4
腋窩【p.254 腋窩】
腋窩は体幹と上肢の移行部にある四角いくぼみで、上肢の神経・血管・リンパの通路として重要である。以下に腋窩の壁と腋窩内に位置する構成を列挙する。
– 前壁:大胸筋・小胸筋
– 内側壁:前鋸筋(および側胸壁)
– 後壁:肩甲下筋・大円筋・広背筋
– 外側壁:烏口腕筋・上腕二頭筋短頭・上腕骨
– 腋窩内の構造:腕神経叢・腋窩動静脈・腋窩リンパ節
腋窩後壁にある大円筋と小円筋の間には隙間があり、上腕三頭筋長頭によって内側腋窩隙・外側腋窩隙に2分される。外側腋窩隙には腋窩神経、内側腋窩隙には肩甲回旋動脈が通り抜ける。
問15 球関節はどれか。
1 腕橈関節
2 指節間関節
3 膝関節
4 橈骨手根関節
解答 1
1 腕橈関節:球関節
– 肘関節:肘部で上腕骨・尺骨・橈骨の3つの骨がそれぞれ連結しあう複関節
– 腕尺関節:蝶番関節
– 腕橈関節:球関節
– 上橈尺関節:車軸関節
2 指節間関節:蝶番関節
指の関節【p.187 指の関節】
指節間関節(IP関節:interphalangeal joint):基節骨、中節骨、末節骨の間の関節で、蝶番関節である。基節骨と中節骨の間は、近位指節間関節(PIP関節)といい、中節骨と末節骨の間は遠位指節間関節(DIP関節)と呼ぶ。関節包は掌側靱帯と側副靱帯で補強される。
3 膝関節:顆状関節
膝関節【p.194 膝関節】
膝関節は、大腿骨の下端(内側顆・外側顆)と、脛骨上面(内側顆・外側顆)とが対面してできる。腓骨は膝関節に関与しない。機能的には蝶番関節、もしくは大腿骨下端の楕円形の内・外側顆が関節をつくるので顆状関節に属するといわれる。また、膝蓋骨の後面も関節面となって、大腿骨下端の前方にある膝蓋面と連結する。
4 橈骨手根関節:楕円関節
橈骨手根関節【p.186 橈骨手根関節】
橈骨手根関節は、通称、手関節(手首の関節)のことである。手根骨近位列のうち、舟状骨・月状骨・三角骨の3つが共同して楕円形の関節頭となり、浅くくぼんだ橈骨の手根関節面と関節をなす。舟状骨と月状骨は橈骨と直接対面するが、三角骨は橈骨下端から尺骨茎状突起の間に張る関節円板に接するので、尺骨は関節面に関与しない。
この関節は楕円関節であり、主に手を前後に振る動作(屈曲-伸展)と左右に振る動作(橈屈-尺屈)を行う。
問16 肩甲骨上角に付着するのはどれか。
1 板状筋
2 肩甲挙筋
3 小菱形筋
4 大菱形筋
解答 2
1 板状筋
板状筋は僧帽筋、菱形筋、肩甲挙筋、上後鋸筋におおわれる。項靱帯、第3頸椎から第3胸椎までの棘突起より起こる頭板状筋と、第3胸椎から第6胸椎までの棘突起から起こる頸板状筋に分かれ、いずれも外上方へ走る。頭板状筋は側頭骨の乳様突起、後頭骨の上項線外側部に停止する。頸板状筋は第1~第3頸椎の横突起に停止する。脊髄神経後枝がこれを支配する。
◯ 2 肩甲挙筋 (第1~第4頸椎の横突起→肩甲骨上角)
肩甲挙筋は後方で僧帽筋、側方で胸鎖乳突筋におおわれる。第1~第4頸椎の横突起から起こり、肩甲骨上角と内側縁上部に停止する。作用は、肩甲骨を内上方に引き上げ、肩をすくめる。この筋の支配神経は頸神経叢の枝と肩甲背神経である。
3 小菱形筋 (第6・7頸椎横突起→肩甲骨内側縁上部)
4 大菱形筋 (第1〜4胸椎横突起→肩甲骨内側縁)
菱形筋は僧帽筋におおわれる薄い菱形の筋で、頸椎より起こる小菱形筋と、胸椎から起こる大菱形筋とがある。筋全体として起始は、第6頸椎以下第4胸椎の棘突起、項靱帯から起こり斜めに外下方に走り、肩甲骨内側縁下部に停止する。作用は、肩甲骨を内上方に引く。肩甲背神経をうける。
問17 鵞足の形成に関与するのはどれか。
1 長内転筋
2 大腿二頭筋
3 半腱様筋
4 半膜様筋
解答 3
(アヒルの方向にハッキリ発見)
縫工筋と薄筋、半腱様筋の3筋は、ともに脛骨粗面の内側に停止する。これら3筋の腱は腱膜様に広がり、互いに癒合して終わる。その停止腱の形が水かきを持ったガチョウの足に似ているととろから、鵞足と呼ばれる。鵞足は膝関節の関節包を内側より補強する。また鵞足を形成する3筋は共通して細く長いベルトのような形をし、縫工筋は骨盤の外側縁(上前腸骨棘)に、薄筋は内側縁(恥骨下枝)に、半腱様筋は後縁(坐骨結節)に起始を持つ。これらの3筋は骨盤を逆さにした三脚で支えているように見える。3筋はまた、大腿の伸筋群、内転筋群、屈筋群を主に支配する大腿神経、閉鎖神経、坐骨神経により別々に支配されている。骨盤の外側には、骨盤を固定するために発達した強力な腸脛靭帯がある。この腸脛靭帯とともに鵞足を形成して終わる3筋は、一致して骨盤の安定に微妙な調整を行っているものと考えられる。【p.269 大腿前面の筋(伸筋群)】
問18 腱が足の上伸筋支帯を通るのはどれか。
1 足底筋
2 後脛骨筋
3 前脛骨筋
4 ヒラメ筋
解答 3
上伸筋支帯と下伸筋支帯の下を通過する筋
上伸筋支帯と下伸筋支帯は足首の前面をおおい、下腿前面の伸筋腱を押さえている。(p.275 下腿前面の筋(伸筋群))
- 前脛骨筋
脛骨外側面、下腿骨間膜より下方に向いた腱となり、上下の伸筋支帯の下を通り、足背に出て内側楔状骨と第1中足骨の下面につく。足の背屈かつ内反をする。深腓骨神経の枝をうける。- 長母指伸筋
腓骨内側面、下腿骨間膜より起こり腱は上下の伸筋支帯の下を通り、足背に出て母指末節骨につく。母指をのばし足の背屈を行う。深腓骨神経の枝をうける。- 長指伸筋
腓骨内側面、下腿骨間膜、脛骨の外側顆から起こり、下方に向かい途中で腱となり、伸筋支帯の下で4分して足背に出て、第2~第5指の中節骨と末節骨につく。第2~第5指をのばし、また足の背屈を行う。深腓骨神経の枝をうける。- 第三腓骨筋
長指伸筋の分かれたもので、前下腿筋間中隔より起こり、伸筋支帯の下を通り、足背に出て第5中足骨底背側につく。足を外反し、また背屈を行う。深腓骨神経の枝をうける。腓骨筋支帯の下を通過する筋
長腓骨筋と短腓骨筋は腓骨の外側にあり、伸筋群や屈筋群とは前・後下腿筋間中隔により境される。腓骨筋群は足関節の底屈を行うほか、外反をする主要な筋である。長・短腓骨筋の腱は外果の後ろで上腓骨筋支帯と下腓骨筋支帯により保持される。長腓骨筋の腱は外果後方をまわったあと足底深層を外側から内側へ横断して、前脛骨筋と同じ内側楔状骨、第1中足骨底に停止する。
長腓骨筋は底屈と外反、前脛骨筋は背屈と内反という互いに拮抗する作用を行う。平坦でない道を歩くとき、足底を地面にうまく接触させるために外反と内反の微妙な調節が必要である。 (p.277 下腿外側面の筋(腓骨筋群))屈筋支帯の下を通過する筋
後脛骨筋・長指屈筋・長母指屈筋の3屈筋は下腿後面の深層にあり、それらの腱は脛骨の内果の後側を回って足底に達する。内果と踵骨の間を橋渡しする屈筋支帯により、屈筋腱は保持される。
後脛骨筋は、足を強く内反する。また、縦足弓(足の縦アーチ)の内側部を高く保つ働きがある。
長母指屈筋は母指を屈曲させ、長指屈筋は第2~5指を屈曲させる。両筋とも足関節の底屈、内反に加わり、また縦足弓の維持を助ける。 (p.277 下腿後面の筋(屈筋群))内果と踵骨の間で、屈筋支帯により囲まれた部位を足根管といい、後脛骨筋・長指屈筋・長母指屈筋の他に、脛骨神経と後脛骨動脈・静脈が通過する。
1 足底筋:踵骨腱内側縁につき腫骨隆起に停止
足底筋は大腿骨外側上顆より起こり細長い腱となり、踵骨腱内側縁につき腫骨隆起に停止する。下腿三頭筋の働きを助ける。脛骨神経の枝をうける。
2 後脛骨筋:屈筋支帯を通過
後脛骨筋は腓骨、脛骨上部後面から起こり、内果の後方を通り屈筋支帯の下を貫いて前方にまがり足底で腱に分かれて、舟状骨、内側・中間・外側楔状骨、立方骨、第2・第3中足骨底につく。足の内反、底屈を行う。脛骨神経の枝をうける。
3 前脛骨筋:伸筋支帯を通過
脛骨外側面、下腿骨間膜より下方に向いた腱となり、上下の伸筋支帯の下を通り、足背に出て内側楔状骨と第1中足骨の下面につく。足の背屈かつ内反をする。深腓骨神経の枝をうける。
4 ヒラメ筋:踵骨腱(アキレス腱)となり踵骨隆起に停止
下腿三頭筋は浅在の2頭をもつ腓腹筋と深在のヒラメ筋よりなる。腓腹筋内側頭は大腿骨内側上顆より、外側頭は外側上顆より起こり、ヒラメ筋は腓骨頭、腓骨、脛骨の上部後面より起こり3頭合して踵骨腱(アキレス腱)となり踵骨隆起につく。足の底屈を行う。脛骨神経の枝をうける。
問19 斜角筋隙形成に関与しないのはどれか。
1 第1肋骨
2 前斜角筋
3 中斜角筋
4 後斜角筋
解答 4
第1肋骨の上面に停止する前斜角筋と中斜角筋の間を斜角筋隙といい、腕神経叢の根と鎖骨下動脈が通る。【p.300 斜角筋】
問20 梨状筋下孔を通らないのはどれか。
1 上殿動脈
2 内陰部動脈
3 陰部神経
4 坐骨神経
解答 1
大坐骨孔(p.285 大坐骨孔)
大坐骨切痕と仙結節靱帯・仙聴靱帯によって縁取られた大坐骨孔は、貫通する梨状筋によってほとんどふさがれてしまう。ただし、梨状筋の上縁と下縁ではわずかに隙間があり、それぞれ梨状筋上孔と梨状筋下孔という。仙骨神経叢から起こる神経や内腸骨動静脈の枝が寛骨後面・大腿後面・骨盤底に向かう際の通路となる。
– 梨状筋上孔を通るもの
> – 上殿神経
> – 上殿動静脈
– 梨状筋下孔を通るもの
> – 下殿神経
> – 下殿動静脈
> – 坐骨神経
> – 後大腿皮神経
> – 陰部神経
> – 内陰部動静脈
問21 舌の分界溝の前に一列に並ぶのはどれか。
1 糸状乳頭
2 茸状乳頭
3 有郭乳頭
4 葉状乳頭
解答 3
舌【p.72 舌】
舌は口腔底にある横紋筋でできた筋肉塊で、表面を粘膜でおおわれる。咀嚼・嚥下・発声・味覚と役割の広い器官である。
舌は、前方の大部分を占める舌体と後方1/3の舌根に分けられ、分界溝というV字形の溝が両者の境界をなす。舌体の上面は舌背で、その前端は舌尖と呼ばれる。
1 糸状乳頭
舌背に密生し、舌表面にビロード状の外観を与える。先端にある上皮の角化により舌全体が白っぽく見える。【p.72 舌乳頭】
2 茸状乳頭
糸状乳頭の間に散在し、大きく、丸味を帯びる。上皮が角化しないので桃赤色を呈する。【p.72 舌乳頭】
3 有郭乳頭
舌恨部に近く分界溝の前に1列に並ぶ8~12個の大きな乳頭で、個々の乳頭は深い溝で固まれる。【p.72 舌乳頭】
4 葉状乳頭
舌体の後部側面にあって、垂直に走る数条の粘膜のヒダである。ヒトでは発達が悪い。【p.72 舌乳頭】
問22 胃について正しい記述はどれか。
1 ガストリン分泌細胞は噴門に分布する。
2 角切痕は小弯の一部にみられる。
3 胃底腺の主細胞は塩酸を分泌する。
4 幽門は第11胸椎の高さにある。
解答 2
1 ガストリン分泌細胞は幽門腺開口部付近に分布する。
幽門腺は管状の腺で、長さは短く、粘液を分泌するただ1種類の腺細胞よりなる。幽門腺の開口部付近にはG細胞と呼ばれる内分泌細胞が散在し、ガストリンというホルモンを分泌し、胃液の分泌を促進する。【p.78 胃の粘膜】
2 角切痕は小弯の一部にみられる。
C字形に左に弯曲する胃の外側を大弯、内側を小弯という。造影剤を飲みX線写真を撮ると、小弯の一部に急角度に曲がる部分が見られ、角切痕と呼ばれる。【p.77 胃】
3 胃底腺の主細胞はペプシノゲンを分泌する。
胃底腺は長い管状の腺で、塩酸(壁細胞)・ペプシノゲン(主細胞)・粘液(副細胞)を分泌する細胞からできている。ペプシノゲンは胃酸と反応して蛋白分解酵素であるペプシンになる。
4 幽門は第11胸椎の高さにある。
– 噴門:T11左側
– 幽門:L1右側
問23 肺について誤っている記述はどれか。
1 左肺は2葉に分かれる。
2 表面は臓側胸膜で覆われる。
3 肺静脈は右心房に入る。
4 ガス交換は肺胞壁において行われる。
解答 3
1 左肺は2葉に分かれる。
右肺の容積は約1,200mlで重さは約600gである。左肺は心臓がやや左側に片寄って存在するので少し小さく、その容積は約1,000mlで重さは約500gである。【p.66 肺葉】
肺は葉間裂によって肺葉に分かれる。右肺は斜裂 と水平裂によって上・中・下葉の3葉に、左肺は斜裂によって上・下葉の2葉に分かれる。
2 表面は臓側胸膜で覆われる。
肺の表面は光沢のある薄い胸膜(臓側胸膜)でおおわれる。肺門では気管や肺動静脈を包んだあと、胸腔内面をおおっている胸膜(壁側胸膜)に移行する。肺門で折れ返った胸膜は、その間に胸膜腔という腔所をつくることになる。胸膜腔は少量の無色の漿液に満たされ、呼吸運動に伴う肺の自由な動きを可能にしている。【p.67 胸膜】
3 肺静脈は左心房に入る。
左右の肺から心臓に返る血液は、各肺門で2本の肺静脈に集まり、それぞれ左心房に注ぐ。左心房は心臓の後方にあるので、これら4本の肺静脈は心臓の後面で観察される。(p.48 肺循環の静脈系)
4 ガス交換は肺胞壁において行われる。
肺胞は直径が100~200μmの袋で、左右の両肺を合わせるとその数は3~5億個になり、広げて伸ばすとその表面積は全部で約120m2(テニスコートの広さ)にもなる。肺胞の壁は極めて薄く、また隣り合ったものどうし共有しているので肺胞中隔と呼ばれる。肺胞中隔の中には豊富な毛細血管と弾性線維が含まれる。肺胞の壁をつくる呼吸上皮と基底膜、そして毛細血管の内皮細胞を通してガス交換が行われる。これを血液空気関門といい、その厚さは合わせて約0.5μmである。【p.67 肺胞】
問24 尿道について誤っている記述はどれか。
1 内尿道口に始まる。
2 陰茎海綿体内を貫く。
3 女性の方が短い。
4 尿道括約筋は横紋筋である。
解答 2
尿道【p.93 尿道】
尿道は膀胱内の尿を体外に排泄する尿路で、長さとその走行は男女で著しく異なる。男性の尿道は約16~18cmと長い。膀胱の内尿道口から始まり、前立腺を貫き下行する(前立腺部)。途中、精液を運ぶ射精管と合流する。続いて尿道は骨盤の底をつくる尿生殖隔膜を貫き(隔膜部)、陰茎の内部を走り(海綿体部)、陰茎の先端で外尿道口に開く。女性の尿道は約3cmで、男性の尿道に比べると短く、ほぼ真っ直ぐに走る。男女ともに、尿生殖隔膜を貫くところに横紋筋でできた尿道括約筋(外尿道括約筋)が発達し、排尿の調節を行う。
1 内尿道口に始まる。
– 内尿道口:膀胱の出口・尿道の始まり
– 外尿道口:尿道の終わり
2 尿道海綿体内を貫く。
– 尿道海綿体:1本、尿道が通る
– 陰茎海綿体:1対(2本)
3 女性の方が短い。
– 男性:16〜18cm。前立腺部・隔膜部・海綿体部
– 女性:3cm
4 尿道括約筋は横紋筋である。
– 膀胱括約筋(内尿道括約筋):平滑筋
– 尿道括約筋(外尿道括約筋):横紋筋
問25 鼠径管を通らないのはどれか。
1 精管
2 精巣動脈
3 卵巣動脈
4 子宮円索
解答 3
鼠径管を通過するもの
男性
– 精巣挙筋
– 精索
– 精管
– 精巣動脈
– 蔓状静脈叢(精巣静脈)
– 陰部大腿神経陰部枝
女性
– 子宮円索
鼠径靱帯と鼠径管【p.215 側腹筋】
鼠径靱帯は外腹斜筋の停止腱膜の下縁が肥厚して靱帯となって、上前腸骨棘と恥骨結節との間に張ったものである。鼠径管は、鼠径靱帯の上縁に沿って斜め内下方に向かって走る側腹筋のトンネルで、その長さは、成人では約4cmある。腹腔側の入口は深鼠径輪といい鼠径靱帯のほぼ中央にあり、内下方に斜走して恥骨結合のすぐ上方の浅鼠径輪で腹壁の外に出る。ここを男性では精管と精巣動・静脈を含む精索が、女性では子宮円索という結合組織のひもが通る。
1 精管
精巣上体管は精巣上体の尾部に近づくと屈曲を減じ、精管に移行する。精管は全長が約40cmあり、直径は2~3mmで、その壁は厚く、粘膜・筋層・外膜が区別できる。精巣上体を離れた精管は、陰嚢内を上行し鼠径管を通って骨盤内に入る。鼠径管を通り骨盤内に入るまでの間、精管は血管、神経と一緒に結合組織で束ねられヒモ状を呈し、精索と呼ばれる。骨盤内に入った精管は膀胱の後ろをまわり前立腺を買いて、左右別々に尿道に開く。精管が前立腺を貫くところは著しく細くなって射精管と呼ばれる。また精管が前立腺に入る手前の部分は太くなって精管膨大部を形成する。精子は主に精巣上体の尾部に位置する精巣上体管に蓄えられ、性的興奮が極点に達すると、精管の壁にある輪走筋が律動的に収縮して内容を射精管から尿道に放出し、射精が起こる。【p.97 精管】
2 精巣動脈
精巣動脈(女性では卵巣動脈)は、腎動脈の起始部よりやや下方の高さから分枝する1対の細い動脈で、腹腔の後壁を骨盤の高さまで下行する。精巣動脈は、側腹壁の下縁に開いた鼠径管を通る精索に包まれて精巣に達する。(p.46 腹大動脈とその枝)
3 卵巣動脈
卵巣動脈は、骨盤腔の側壁にできた卵巣提索の中を走って卵巣に到達する。(p.46 腹大動脈とその枝)
4 子宮円索
子宮は全体として前方に傾き(前傾)、子宮体は子宮頸に対して軽く前方に屈曲している(前屈)。子宮円索は、子宮の左右両側の上隅から起こり、骨盤側壁を前方に走り、鼠径管を通って、腹腔の外に出て大陰唇の皮下に至る。子宮は子宮円索によって前方に引っぱられ、前傾の位置に固定されている。【p.102 子宮広間膜】
問26 卵管上皮はどれか。
1 線毛上皮
2 移行上皮
3 単層立方上皮
4 単層扁平上皮
解答 1
上皮組織の表
問27 動脈と分布域との組合せで誤っているのはどれか。
1 気管支動脈———肺臓
2 腹腔動脈———脾臓
3 上腸間膜動脈———空腸
4 下腸間膜動脈———上行結腸
解答 4
1 気管支動脈———肺臓
気管支動脈は胸大動脈の臓側枝。気管支と肺の栄養血管。
2 腹腔動脈———脾臓
腹腔動脈はとっても短く、すぐに3つに枝分かれる。この3つの枝まで確実に覚えよう。左側胃動脈・脾動脈・総肝動脈。
3 上腸間膜動脈———空腸
上腸間膜動脈の細かい枝の名前まで覚えなくても大丈夫かな。分布域は覚えよう。膵臓後下部・小腸(大十二指腸乳頭より下位)〜横行結腸前半まで。
4 下腸間膜動脈———上行結腸
下腸間膜動脈は横行結腸後半〜直腸上部まで。上行結腸は横行結腸より前なので×
問28 錐体路を構成しないのはどれか。
1 中心前回
2 内包
3 大脳脚
4 脊髄後索
解答 4
錐体路(皮質脊髄路)
中心前回→内包→大脳脚→錐体→錐体交叉→側索→前角細胞(α運動ニューロン)
1 中心前回
大脳の膨らみは回。溝(ミゾ)は溝(コウ)。中心溝の前の回だから中心前回。前頭葉の一次運動野。
2 内包
内包は大脳に出入りする大部分の線維が通過する。大脳皮質と下位を連絡する投射線維。
3 大脳脚
中脳の腹側に見られる出っ張りは、大脳が乗っかる脚のように見えることから、大脳脚という。
4 脊髄後索
後索は後索-内側毛帯路(長後索路)が通過する。
問29 腋窩神経支配の筋はどれか。
1 棘上筋
2 棘下筋
3 大円筋
4 小円筋
解答 4
腋窩神経は、後神経束から分かれる太い枝である。腋窩の後壁にある外側腋窩隙を通って上肢帯の背面に出たところで小円筋に筋枝を送るほか、肩から上腕外側部の皮枝である上外側上腕皮神経も出す。残った腋窩神経の本幹は、上腕骨の外科頸の高さで三角筋の深層に入り込み、上腕骨を後ろから外回りに走って、三角筋への枝を次々と出す。【p.262 上肢帯での神経走行(腋窩神経など)】
1 棘上筋:肩甲上神経
棘上筋は、肩甲骨の棘上窩から起こり、外側に走り上腕骨大結節につく。上腕骨を外転させる。肩甲上神経が支配する。
2 棘下筋:肩甲上神経
棘下筋は、肩甲骨の棘下窩より起こり、外方に走り上腕骨大結節につく。上腕を後方に引き外方にまわす。肩甲上神経が支配する。
3 大円筋:肩甲下神経
大円筋は、小円筋の下方で肩甲骨下角より起こり前外方に向かい、上腕骨小結節稜につく。上腕骨を後内方に引く。また内方にまわす。肩甲下神経の支配による。
4 小円筋:腋下神経
小円筋は、棘下筋におおわれて肩甲骨外側縁から起こり、外方に走り上腕骨大結節につく。上腕を後方に引き外方にまわす。腋窩神経が支配する。
問30 胸髄で交感神経節前ニューロンの細胞体が存在する部位はどれか。
1 前角
2 側角
3 後角
4 白質
解答 2
前は運動、後ろは感覚。真ん中は自律神経。
交感神経系【p.144 交感神経系】
節前ニューロンは胸髄・腰髄(T1~L2または3) から起始し、その線維は前根を経由して脊髄神経に合流する。白交通枝を通って交感神経幹に入った後、交感神経幹内で節前線維は以下のような3方向に分かれる。
i) 各分節にある交感神経節で節後ニューロンに交代し、灰白交通枝を通って再び脊髄神経に戻り、脊髄神経を経由して末梢に分布する。
ii) 同分節の交感神経節よりも上位(あるいは下位)分節の幹神経節まで上行(下行)して、節後ニューロンに交代する。上行したものは頸部、下行したものは骨盤部の交感神経幹を構成する。
iii) 一旦、交感神経幹に入るものの、交感神経節で、ニューロンを替えずに、節前線維のまま交感神経幹の前方へ出て内臓神経になる。内臓神経は大動脈から出る臓器の動脈基部で神経節(腹腔神経節、上腸間膜動脈神経節・下腸間膜動脈神経節)をつくって節後ニューロンに交代する。その後、血管に伴行して各臓器に至る。
問31 視覚器について誤っている記述はどれか。
1 網膜中心動脈は視神経の中を通る。
2 視細胞の外節は網膜色素上皮に接する。
3 涙腺の導管は上結膜円蓋に開口する。
4 後眼房は水晶体の後方にある。
解答 4
1 網膜中心動脈は視神経の中を通る。
まず内頸動脈の4つの枝は確実に覚える(眼動脈・前大脳動脈・中大脳動脈・後交通動脈)。網膜中心動脈は眼動脈の終枝で、視神経の中を通り、視神経乳頭より眼球内に入り網膜に分布する。眼底検査で観察することができる。
2 視細胞の外節は網膜色素上皮に接する。
光を感じる視細胞はいちばん深層、すなわち脈絡膜側にある。その突起の形から錐体と杆体の2種類に区別され、光を感覚するのは突起の先端の外節と呼ばれる場所である。錐体は中心窩の付近に存在し、約650万個の細胞からなり、色覚に関与している。また杆体は網膜の周辺部に多く、1億以上の細胞からなり、明暗の識別に関係している。網膜の最外層には単層立方上皮よりなる色素上皮層があり、細胞は暗褐色の色素顆粒を含み、光の乱反射を防ぐとともに視細胞の機能維持に役立っている。(p.148 視覚器)
眼球壁の構造
– 外層:眼球線維膜
– 前1/6 角膜・後5/6 強膜
– 中層:眼球血管膜
– 前1/6 虹彩、毛様体・後5/6 脈絡膜
– 内層:網膜
– 色素上皮層 (脈絡膜側)
– 視細胞層
– 双極細胞層
– 神経節細胞層 (硝子体側)
3 涙腺の導管は上結膜円蓋に開口する。
涙腺は眼球の上外側にある小指頭大の漿液腺で、多数の導管は上結膜円蓋の外側部に開く。泣いたときには多量の涙が流れ出るが、平常でも絶えず少量ずつ分泌されて眼球前面を潤して角膜の乾燥を防いでいる。涙は内眼角(目がしら)のほうへと流れて集まり、上下の涙点から涙小管に吸収される。涙小管は鼻根部にある涙嚢に開き、涙嚢の下端に続く鼻涙管により下鼻道に注ぐ。涙は、こうして絶えず少しずつ鼻腔に流れ込んでいる。(p.152 涙器)
4 後眼房は水晶体の前方にある。
角膜と虹彩の間の空間を前眼房、また虹彩と水晶体との間の空間を後眼房といし、眼房水で満たされている。眼房水は毛様体内面の上皮から分泌され、後眼房から瞳孔をへて前眼房へと流れ、角膜と強膜の境界部にある強膜静脈洞(シュレム管)から眼静脈へ吸収される。眼房水の分泌と吸収のバランスにより眼圧が正常に保たれるが、循環障害が起こると眼圧が高まり緑内障となる。(p.151 眼房と眼房水)
問32 平衡斑があるのはどれか。
1 前庭
2 蝸牛
3 鼓室
4 半規管
解答 1
内耳は蝸牛・前庭・半規管の3部位よりなる。蝸牛は聴覚、前庭は直進方向の加速度と身体の傾き、半規管は回転運動の方向と加速度を感じることができる。そのどれもが内リンパ液の動きを有毛細胞が感じることにより感覚となる。よって、内耳のポイントはそれぞれの部位で有毛細胞を有する装置の名前を把握することだ。
1 前庭:平衡斑
前庭は内耳の中央の部分で、その側壁にある前庭窓によって鼓室に接し、前方に蝸牛、後方に半規管が位置する。前庭には膜迷路に属する球形嚢と卵形嚢という2つの袋があり、その内面には平衡斑と呼ばれる感覚装置がある。平衡斑には丈の高い有毛細胞があり、炭酸カルシウムの結晶である平衡砂をのせたゼリー状の平衡砂膜が表面をおおっている。身体の傾きおよび直進する方向とその加速度を感じる。(p.156 前庭)
2 蝸牛:コルチ器(ラセン器)
蝸牛は文字通りカタツムリの殻に似ていて、蝸牛軸をラセン管が2巻き半取り巻いている。ラセン管の横断面をみると、その内部は2階だてになっており、1階の鼓室階と2階の前庭階に分かれ、その間に中2階として膜迷路に相当する蝸牛管が仕切られている。蝸牛管の床の基底板上にある上皮細胞は丈が高くなり、ラセン器(コルチ器)を形成し音を感受する。蝸牛神経は蝸牛軸内でラセン神経節をつくりラセン器に分布する。
鼓膜を震わせた音の振動は耳小骨を通じて前庭窓に達し、前庭階を満たす外リンパの液体の振動に変えられる。外リンパの振動は蝸牛の前庭階を昇りつめると鼓室階に移り、鼓室階を下る。すなわち、両階は蝸牛の頂部で連絡し外リンパで満たされ、蝸牛窓で消失する。この外リンパの振動は中2階をなす蝸牛管の内リンパに伝えられ、その振動はラセン器の有毛細胞を刺激して音を感受する。(p.154 蝸牛)
3 鼓室:中耳に属する
鼓室は鼓膜に境された奥の空洞で、内面は粘膜におおわれている。前下方に向かって長さ約35mmの細長い耳管が出て咽頭(耳管咽頭口)に通じている。鼓室内には鼓膜と内耳とを連絡するツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨と呼ばれる米粒ほどの大きさの耳小骨があり、互いに関節で連結し音波による鼓膜の振動を内耳に伝えている。これらの耳小骨には耳小骨筋(鼓膜張筋・アブミ骨筋)が付着しており、強い音刺激に対して収縮し耳小骨の運動を弱めている。すなわち耳小骨による伝達を減弱して内耳に過度の刺激が加わらないように働いている。鼓室の内側壁は卵円形の前庭窓の膜があるため、中耳と内耳の間には直接の交通はない。鼓室の後方は、乳様突起の中の乳突蜂巣と交通するので、中耳の炎症がここに進行することもある。(p.154 鼓室)
4 半規管:膨大部陵
半規管は互いに直交する面上に弧(ループ)を描く3本の半円周形の管からなり、それぞれその途中に膨大部というふくらみがある。膨大部の内面には膨大部稜という有毛感覚細胞の直線状の高まりがあり、身体の回転運動の方向と加速度を感じる。(p.156 半規管)
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