2004年 第12回 あん摩マッサージ指圧師 国家試験 解剖学 問題16~38 解答
問16 線維軟骨を有するのはどれか。
1 耳介軟骨
2 肋軟骨
3 椎間円板
4 関節軟骨
解答 3
1 耳介軟骨:弾性軟骨
2 肋軟骨:硝子軟骨
3 ⚪︎ 椎間円板:線維軟骨
4 関節軟骨:硝子軟骨
軟骨組織(p.15 軟骨組織)
軟骨組織は軟骨細胞と軟骨基質からなるが、基本は線維性結合組織で、それの特殊化した形と考えられる。軟骨表面は密性結合組織の軟骨膜に包まれ、深部に行くに従い膠原線維の間隙を埋めるコンドロイチン硫酸の含有量が増え、軟骨特有の弾力性を生み出す。軟骨基質には血管は存在せず、軟骨膜表面の血管からの浸透により栄養される。軟骨基質に閉じこめられた後も軟骨細胞は分裂を続け、同じ軟骨小腔に2ないし4個の軟骨細胞が見られる。
軟骨は軟骨基質の性状により3種に分けられる。硝子軟骨
軟骨基質は膠原線維の間に多量のコンドロイチン硫酸を含み、すりガラスのように半透明の乳白色を示す。最も普通に見られる軟骨で、関節軟骨・肋軟骨・気管軟骨がその例としてあげられる。
弾性軟骨
軟骨基質を構成する線維の約30%が弾性線維からなり、弾力性に富む。透明感のある淡い黄色を呈し、耳介軟骨や鼻軟骨の多くがそれにあたる。
線維軟骨
大量の膠原線維が束をつくって走り、その間に軟骨細胞と少量の軟骨基質が存在する最も強靱な軟骨である。脊柱の椎間円板、骨盤の恥骨結合、膝関節の関節半月などに見られる。
問17 末梢神経の髄鞘を形成するのはどれか。
1 神経節細胞
2 星状膠細胞
3 シュワン細胞
4 線維芽細胞
解答 3
1 神経節細胞
神経節は末梢神経の走行途中において、神経細胞体が集まり膨らみをなしているところをいい、その中に含まれる細胞を神経節細胞という。
2 星状膠細胞:血液脳関門をつくる
星状膠細胞は神経細胞と血管との間に介在し栄養の吸収の仲立ちをし、さらに、血液の中を流れる有害物質が脳内へ侵入するのを阻止する血液脳関門の形成にあずかる。)(p.26 神経膠細胞(グリア細胞))
3 ⚪︎ シュワン細胞:末梢神経の髄鞘をつくる
軸索は髄鞘に包まれると伝導速度が速まる。髄鞘の有無により有髄神経と無髄神経が区別される。髄鞘は、末梢神経系ではシュワン細胞が軸索のまわりをぐるぐる巻きにしてつくられる。中枢神経系では希突起膠細胞が髄鞘形成にあたる。(p.24 神経細胞)
4 線維芽細胞
線維細胞は線維性結合組織の中では最も多数を占め、細長い紡錘形または数本の突起を出した星形を呈し、膠原線維の走行に沿って伸びている。この細胞は活動状態にあり、積極的に増殖し膠原線維をつくっているときは線維芽細胞と呼ばれる。外傷などで組織が破壊されて欠損が生じると、線維細胞は線維芽細胞となり増殖を始め、欠損部を膠原線維で埋める。傷口から盛り上がってくる肉芽組織は毛細血管に富み赤く見えるが、次第に線維がつくられ増えていくと線維芽細胞は増殖を止め、傷は線維の白い塊(瘢痕)となって治癒する。(p.13 線維性結合組織)
活動電位が伝導する速度は、ミエリンをもつ有髄線維では無髄線維に比べてずっと速い。有髄線維ではミエリンで覆われた部分の膜は絶縁されており、膜を横切る電流は非常に流れにくいため、局所電流は、ミエリンが一定間隔で途絶えている部分、すなわちランビエの絞輸の部分でのみ流れる。したがって、新しい活動電位は一つのランビエの絞輪から次の絞輪へ、そこから次の絞輸へと次つぎにジャンプしながら発生する。このような伝導を跳躍伝導という。跳躍伝導により、伝導速度はミエリンのない場合よりもずっと速くなる。(生理学 p.167 神経線維の興奮伝導)
問18 側頭骨にみられるのはどれか。
1 乳様突起
2 翼状突起
3 筋突起
4 歯槽突起
解答 1
1 ⚪︎ 乳様突起:側頭骨
乳様突起は側頭骨外面にみられる突起。乳様突起は耳の後方に触れ、体表上の目印になるほか、内部には鼓室から続く乳突蜂巣という多数の小胞が広がる。胸鎖乳突筋が起始する。(p.206 側頭骨, p.300 胸鎖乳突筋)
2 × 翼状突起:蝶形骨
翼状突起は蝶形骨の下方にみられる1対の突起。翼状突起は鼻腔の外側壁の後方部をつくり、突起の基部には翼突管が開く。(p.206 蝶形骨)
3 × 筋突起:下顎骨
下顎骨下顎枝の上端は、後方の関節突起と前方の筋突起の2つに分かれる。関節突起は、下顎頭として先端が丸くなり側頭骨の下顎窩にはまって顎関節を形成する。筋突起は、咀嚼筋の付着部になる。(p.209 下顎骨)
4 × 歯槽突起:上顎骨
上顎骨で歯が並ぶ部位を歯槽突起という。(p.209 上顎骨)
側頭骨(p.206 側頭骨)
側頭骨は、頭蓋の外側壁をなす左右1対の複雑な形をした骨である。発生学的には3つの部分、すなわち、鱗部・鼓室部・岩様部からなる。これら3部が癒合して単一の骨となるのは生後1年ほど経ってからである。
鱗部は、扁平で丸い輪郭を持った“うろこ”のような部分で、外耳孔の上前方部に広がる。上部は鱗状縫合により頭頂骨と接して頭蓋冠の一部をなし、前方部からは、頬骨と結合するための頬骨突起が伸びて、頬骨弓の後半部をなす。頬骨突起の基部下面には下顎窩がある。
鼓室部は、雨どいのような半管状の小さな骨で、外耳道および鼓室の底をなす。
岩様部は錐体部と乳突部からなる。錐体部は後頭骨と蝶形骨大翼との間を内側前方に伸び、上面は内頭蓋底の錐体となって隆起して中頭蓋窩と後頭蓋窩を仕切る。表面には内耳孔が開き、内部に内耳(蝸牛・前庭・半規管)をおさめるほか、頸動脈管が貫通する。一方、乳突部は錐体部の外側下方に大きく膨隆して、鱗部の後方に達し、側頭骨外面で乳様突起をつくる。乳様突起は耳の後方に触れ、体表上の目印になるほか、内部には鼓室から続く乳突蜂巣という多数の小胞が広がる。
さらに、岩様部の下面からは、下前方に茎状突起が伸びる。その基部には茎乳突孔が開く。
外耳孔を入り、外耳道を通ると鼓室に突き当たる。鼓室は中耳の主体をなし、3個の耳小骨(ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨)が並ぶ。鼓室の前方は耳管に、後方は乳突蜂巣に続く。鼓室の壁の奥には、内耳が存在する。
問19 橈骨にみられるのはどれか。
1 滑車切痕
2 尺骨切痕
3 鈎状突起
4 橈骨切痕
解答 2
1 × 滑車切痕:尺骨
尺骨上端は肘頭で、その前面には滑車切痕があり、上腕骨滑車と肘関節の一部をなす(腕尺関節)。(p.181 前腕の骨)
2 ⚪︎ 尺骨切痕:橈骨
橈骨下端は太く広がり、外側には茎状突起が突出する。下端の内側には尺骨切痕の浅いくぼみが見られ、尺骨頭の関節環状面が対面して下橈尺関節をつくる。(p.181 前腕の骨)
3 × 鉤状突起 (鈎状突起):尺骨
尺骨上部、滑車切痕の下縁前方は釣り針の先端のように突出し、鉤状突起をつくる。鉤状突起の下方には、尺骨粗面があり、肘関節を屈曲させる上腕筋がつく。
4 × 橈骨切痕:尺骨
尺骨上部、滑車切痕の外側端から下方に連続する小さい関節面は、橈骨と連結する橈骨切痕で肘関節の一部をなす(上橈尺関節)。
尺骨
尺骨は、上部では太く、中央部では三角柱状で、下部では細い円柱状になる。
尺骨上端は肘頭で、その前面には滑車切痕があり、上腕骨滑車と肘関節の一部をなす(腕尺関節)。滑車切痕の下縁前方は釣り針の先端のように突出し、鉤状突起をつくる。滑車切痕の外側端から下方に連続する小さい関節面は、橈骨と連結する橈骨切痕で肘関節の一部をなす(上橈尺関節)。鉤状突起の下方には、尺骨粗面があり、肘関節を屈曲させる上腕筋がつく。
尺骨下端は尺骨頭で、その外側面は滑らかな関節環状面として橈骨下端の尺骨切痕に対面する(下橈尺関節)。尺骨頭の内側端には茎状突起が下方に突出する。
体表から肘の後面には肘頭が明瞭に触れる。肘頭から手首の方に向かって尺骨の稜線をたどると、尺骨頭や茎状突起が触知できる。(p.181 前腕の骨)橈骨
橈骨は尺骨と反対に、上部が細い円柱状、中央部では三角柱状で、下端が太い。橈骨上端は橈骨頭である。この上面は浅い丸皿のようにくぼんで上腕骨小頭と肘関節の一部を構成する(腕橈関節)。橈骨頭の側面は尺骨の橈骨切痕に対する関節環状面になり、その下方は細くなって橈骨頸となる。橈骨頸の下前面には結節状に隆起した橈骨粗面があり、肘関節を屈曲させる上腕二頭筋がつく。
下端は太く広がり、外側には茎状突起が突出する。下端の内側には尺骨切痕の浅いくぼみが見られ、尺骨頭と関節をつくる。下面には手根骨に対する手根関節面が見られる。
また橈骨下部の後面には前腕伸筋腱が通る複数の溝があり、溝の合間には背側結節(リスター結節)が隆起する。この結節のすぐ尺側には長母指伸筋腱が通る溝ができる。この結節は手首の背側で体表から触知できる。(p.181 前腕の骨)
問20 関節半月がみられるのはどれか。
1 顎関節
2 肩関節
3 股関節
4 膝関節
解答 4
1 × 顎関節:関節円板がある
2 × 肩関節
3 × 股関節
4 ⚪︎ 膝関節:関節半月がある
膝関節(p.194 膝関節)
膝関節は、大腿骨の下端(内側顆・外側顆)と、脛骨上面(内側顆・外側顆)とが対面してできる。腓骨は膝関節に関与しない。機能的には蝶番関節、もしくは大腿骨下端の楕円形の内・外側顆が関節をつくるので顆状関節に属するといわれる。また、膝蓋骨の後面も関節面となって、大腿骨下端の前方にある膝蓋面と連結する。
膝関節を補強する主な靱帯を以下に列挙する。
膝十字靱帯
脛骨上面の顆間隆起の前後と大腿骨顆間窩との間に張る関節内靱帯で、2本の前十字靱帯・後十字靱帯からなる。関節が前後に動揺しないように安定させる。
内側側副靱帯
大腿骨内側上顆と脛骨内側縁との間に張る。膝関節包の線維膜が肥厚してできた靱帯である。
外側側副靱帯
大腿骨外側上顆と腓骨頭の間に張る。体表からも腓骨頭を目印にして上方にたどると、膝関節の後外側でこの靱帯が触れる。
膝蓋靱帯
この靱帯は大腿四頭筋の停止鍵の一部である。大腿四頭筋)腱のうち、膝蓋’骨と腔骨粗面との間の部分が骨と骨とを結ぶ靱帯であると見なされるため、この名がある。体表からも触れることができ、この靱帯をたたいて大腿四頭筋の伸展反射を調べることができる(膝蓋腱反射)。
膝関節腔内で大腿骨と脛骨との間に介在する外側半月と内側半月は、三日月型の線維軟骨板 (関節半月)である。また、膝関節腔の中には滑膜でおおわれた脂肪組織が関節腔内に拡大し、骨と骨の間を埋める。これを膝蓋下脂肪体という。
(注) 内側半月は内側側副靱帯の内面に付着し、関節腔内でもその位置を保つ。一方、外側半月と外側側副靱帯との間には、膝窩筋が入り込み、関節運動時にはこの筋の作用で外側半月は後方に引かれて移動する。
問21 頸動脈三角を構成しないのはどれか。
1 顎二腹筋
2 胸鎖乳突筋
3 茎突舌骨筋
4 肩甲舌骨筋
解答 3
前頸三角(p.303 前頸三角)
顎下三角
顎二腹筋の前腹、後腹と下顎骨で固まれる顎下三角には、顎下腺を皮下に触れることができる。通常、顔面動脈がこの腺の上縁で皮下に現れて下顎縁を横切り、顔面に入る。この部位の皮下に見られる1ないし2個の顎下リンパ節には、顔面と下顎のリンパが流入する。
頸動脈三角(顎二腹筋後腹、肩甲舌骨筋上腹、胸鎖乳突筋前縁)
この三角の後部に強い脈拍を触れるが、ここで総頸動脈が外頸動脈と内頸動脈に分岐する。
筋三角(喉頭気管部)
肩甲舌骨筋より下方の筋三角では、喉頭と気管の前面を舌骨下筋の筋腹がおおう。左右を合わせて喉頭気管部と呼ぶこともある。喉頭隆起の両側と下方に板状に広がる甲状軟骨と、その下方に狭い溝を介して続く輪状軟骨を触察できる。さらに下方には気管が明瞭に触れる。
甲状腺の本体(右葉、左葉)は、甲状軟骨の下半から気管の始部の外側面に密着し、上下5cm最大幅3cmに達する、上に凸の半円錐状の臓器であるが、通常は柔らかく触診が難しい、喉頭下端の横の深部に第6頸椎の横突起前結節、すなわち頸動脈結節を触れることができる。
問22 安静吸気時に働くのはどれか。
1 外肋間筋
2 胸横筋
3 肋下筋
4 内肋間筋
解答 1
1 ⚪︎ 外肋間筋:主吸息筋 (胸式呼吸)
各肋間隙にあり肋骨の下縁から起こり、線維束は後上方から斜めに前下方に走り下位の肋骨の上縁につく。肋骨を引き上げ胸郭内容を増加させ、吸気を起こさせる。肋間神経の支配による。
2 × 胸横筋:呼息筋
胸郭前壁の内面にあり、胸骨体下部および、剣状突起の後面から起こって外上方に走り第3~第6肋骨につく。肋骨を引き下げる働きをもつ。肋間神経支配の筋である。
3 × 肋下筋:呼息筋
胸郭後壁の内面で内肋間筋の後部にあり筋束は1つへだてて上位の肋骨につく。下部の肋間に見られる。肋骨を下げる働きがある。肋間神経が支配する。
4 × 内肋間筋:呼息筋
外肋間筋の内面で肋骨上縁より起こり、線維束は前上方から後下方に走り、上位の肋骨の下縁につく。肋骨を引き下げ、胸部の内容を減少させ、呼気を起こさせる。肋間神経の支配による。
横隔膜(p.213 横隔膜)
横隔膜は、胸腔と腹腔を隔てる横紋筋でできた膜状の隔壁である。胸郭下口の周囲から起こった筋がドーム状に集まり、第4~5肋骨の高さの頂上部に、停止腿がクローバー形の腱中心をつくる。横隔膜が収縮すると、胸腔内に深く入り込んでいるドームの屋根が低くなり胸腔を広げることになり、主要な吸気筋として働く。
深胸筋(p.213 深胸筋)
胸郭に起始と停止をもつ固有の胸筋で、すべて呼吸作用に関係する。肋骨挙筋のほかは、すべて肋間神経の支配を受げる。肋間筋は、筋束の方向や肋間神経との位置関係より、外肋間筋、内肋間筋および最内肋間筋の3層に区別される 。
外肋間筋・肋骨挙筋
この2筋は肋骨を引き上げて胸郭を広げ、息を吸い込む吸気筋である。また、外肋間筋は後方で厚く、前方に向かうにつれて薄い膜状になる(外肋間膜)。
内肋間筋・最内肋間筋・肋下筋・胸横筋
これらは肋骨を引き下げ胸郭を狭めて、息を吐き出す呼気筋である。内肋間筋は胸骨縁ではよく発達し、肋間神経よりも浅く位置するが、最内肋間筋・肋下筋・胸横筋は肋間神経よりも深層に存在する。
呼吸運動とその調節(生理学 p.62 呼吸運動とその調節)
換気は、胸腔の容積を時間的に交互に増減させる呼吸運動によって行われる。呼吸運動は吸息と呼息よりなる。
a. 吸息
吸息時には脳からの指令で横隔膜と外肋間筋が収縮する。横隔膜が収縮すると、横隔膜の面積が減り、ドーム状に盛り上がっていた膜は沈下して水平になる。外肋間筋の収縮により肋骨は挙上する。その結果、胸郭が広がり胸腔内圧が下がって外界の空気が受動的に肺内に流入する。このように、通常の吸息時に収縮する横隔膜と外肋間筋を主吸息筋と呼ぶ。肋間筋は肋間神経の活動が高まることにより、横隔膜は横隔神経の活動が高まることにより、収縮する。深呼吸のときには、さらに脊柱を伸ばす筋や、肩を挙上する筋なども働く(これらを補助吸息筋という)。
主に横隔膜の運動によって行われる呼吸を横隔膜呼吸(腹式呼吸)、主に肋間筋の運動によって行われる呼吸を胸式呼吸という。呼吸は両者の共同による胸腹式呼吸であるが、安静時には主として横隔膜呼吸が関与する。(注) 肋間神経と横隔神経:肋間神経は、第1~12胸髄に由来する。横隔神経は第3~5頸髄に由来する。これらの神経の損傷により呼吸が障害される。
b. 呼息
呼息時には横隔膜と外肋間筋は弛緩する。このとき、横隔神経と肋間神経の活動は休止する。横隔膜の面積は広がってドーム状に盛り上がり、肋骨は下がる。その結果、胸郭が狭くなり、肺内の気体が呼出される。積極的な呼息時には、内肋間筋や腹筋が収縮し、胸郭がさらに狭くなる。
問23 腱が足根管を通らないのはどれか。
1 長母指屈筋
2 長指屈筋
3 後脛骨筋
4 下腿三頭筋
解答 4
1 長母指屈筋
腓骨体下部後面、後下腿筋間中隔下半より起こり下方に走り、腱は内果の後側で屈筋支帯の下、足根管を通り足底に出て、母指末節骨底につく。指をまげ足を底屈する。脛骨神経の枝をうける。
2 長指屈筋
脛骨中部後面より起こり、腱は内果の後側で屈筋支帯の下、足根管を通り、足底に出て4分し第2~第5末節骨底につく。足指を屈し足の底屈を行う。脛骨神経の枝をうける。
3 後脛骨筋
腓骨、脛骨上部後面から起こり、内腱は内果の後側で屈筋支帯の下、足根管を通り、足底で腱に分かれて、舟状骨、内側・中間・外側楔状骨、立方骨、第2・第3中足骨底につく。足の内反、底屈を行う。脛骨神経の枝をうける。
4 × 下腿三頭筋
浅在の2頭をもつ腓腹筋と深在のヒラメ筋よりなる。腓腹筋内側頭は大腿骨内側上顆より、外側頭は外側上顆より起こり、ヒラメ筋は腓骨頭、腓骨、脛骨の上部後面より起こり3頭合して踵骨腱(アキレス腱)となり踵骨隆起につく。足の底屈を行う。脛骨神経の枝をうける。
足根管を通過する筋
内果と踵骨の間で、屈筋支帯により囲まれた部位を足根管といい、後脛骨筋・長指屈筋・長母指屈筋の他に、脛骨神経と後脛骨動脈・静脈が通過する。
後脛骨筋は、足を強く内反する。また、縦足弓(足の縦アーチ)の内側部を高く保つ働きがある。
長母指屈筋は母指を屈曲させ、長指屈筋は第2~5指を屈曲させる。両筋とも足関節の底屈、内反に加わり、また縦足弓の維持を助ける。 (p.277 下腿後面の筋(屈筋群))
問24 筋裂孔を通るのはどれか。
1 大腿神経
2 大腿動脈
3 大腿静脈
4 恥骨筋
解答 1
1 ⚪︎ 大腿神経:筋裂孔を通過
L2~4が合流してできる腰神経叢最大の枝である。大腰筋とともに下行し、筋裂孔を通って大腿三角に至る。大腿三角より下で縫工筋および大腿四頭筋に筋枝を出すほか、皮枝として大腿前面に分布する前皮枝および伏在神経を分枝する。(p.290 腰神経叢)
2 × 大腿動脈:血管裂孔を通過
外腸骨動脈は下腹壁動脈を出した後、血管裂孔を通って大腿動脈に移行し、大腿三角の中に出る。大腿動脈は鼠径靱帯の中央部で容易に脈拍を触れる。大腿三角を下行しながら大腿後面に向かう大腿深動脈を出し、さらに大腿深動脈は大腿伸筋群・内転筋群や、股関節を養う内側・外側大腿回旋動脈を分枝する。その後、大腿三角の下端から続く内転筋管および内転筋腱裂孔を通って膝窩に至り、そのまま膝窩動脈に移行する。(p.287 下肢の動脈)
3 × 大腿静脈:血管裂孔を通過
膝窩静脈のつづきで、同名動脈に伴行して、下部では2本であるが上部では1本となる。血管裂孔に入り、外腸骨静脈につづく。
4 × 恥骨筋
恥骨枝の寛骨臼部から起こり、大腿骨上部内側の恥骨筋線につく。大腿を前に上げ、また内転する。大腿神経の枝をうける。
筋裂孔と血管裂孔(p.284 筋裂孔と血管裂孔)
寛骨前面は弓状になっており、その上に上前腸骨棘と恥骨結節の間を結ぶ鼠径靱帯が張っている。腰部から大腿部に向かって走る腰神経叢の枝や下肢を養う脈管は、鼠径靱帯の下と寛骨との間にできる筋裂孔と血管裂孔という隙間を通る。血管裂孔と筋裂孔の間は腸恥筋膜弓で仕切られる。そしてこれらの裂孔は鼠径靱帯の下から大腿三角に連続する。
筋裂孔は、本来、鼠径靱帯の下を通る腸腰筋の通路である。腰神経叢から起こる大腿神経と外側大腿皮神経は腸腰筋に導かれるように筋とともにこの裂孔を通って下行し、大腿に至る。
血管裂孔は筋裂孔よりも内側にあり、リンパ管、大腿静脈、大腿動脈が内側からこの順に並んで通る。特にリンパ管が通る血管裂孔の最内側を大腿輪という。このほか、陰部大腿神経の大腿枝も血管裂孔を通る。
問25 小腸にあって大腸にないのはどれか。
1 輪走筋
2 縦走筋
3 輪状ひだ
4 腸間膜
解答 3
1 × 輪走筋:消化管の基本構造
2 × 縦走筋:消化管の基本構造
筋層は口腔から食道上部までは骨格筋で、食道下部から肛門までは平滑筋でつくられている。食道以下の消化管では内層の筋線維は輪走し(輪走筋)、外層の筋層は縦走する(縦走筋)。両筋層の収縮・弛緩により一定の運動(蠕動運動や分節運動など)を行うが、その運動は両筋層の間にあるアウエルバッハの神経叢(筋層間神経叢)により調節される。 (p.71 消化管の基本構造 – 筋層)
3 ⚪︎ 輪状ひだ:小腸のみ
輪状ヒダ・腸絨毛・微絨毛は小腸の特徴で、表面積を増やすための構造。
4 × 腸間膜:空腸・回腸・横行結腸・S状結腸
腹膜内臓器は胃・空・回・横・S・脾・卵巣卵管。このうち腸が腸間膜をもつ。
(1) 小腸の粘膜(p.80 小腸の組織構造と機能 – 粘膜)
1 輪状ヒダ
小腸の粘膜には内腔に突出し輪状に広がる輪状ヒダが発達する。輪状ヒダは、十二指腸では下方に行くほど増加し、空腸上部で最も発達し、回腸ではヒダは小さく不規則となり、回腸の末端では消失する。
2 腸絨毛
粘膜の表面には腸絨毛が密生する。腸絨毛は高さが0.5~1.2mmの細い指状の粘膜の突起で、粘膜1mm2あたり約30本、小腸全体では500万本以上となる。腸絨毛と腸絨毛との間に小さな孔が開いていているが、これは管状をした腸腺の開口部にあたる。
腸絨毛では、その中軸を1本の毛細リンパ管(中心リンパ管)が走り、その周囲を網状に毛細血管が取り囲む。腸の粘膜上皮から吸収された糖質とタンパク質の分解産物は毛細血管をへて肝臓に運ばれるが、脂肪はリンパ管に入る。脂肪を含むリンパはミルク様に見えるところから乳びと呼ばれる。
3 微絨毛
腸の粘膜には単層の円柱上皮が並ぶ。その粘膜上皮を電子顕微鏡で見ると、長さ1μm、太さ0.1μmの微絨毛がその表層をおおい、その数は細胞1個あたり約600本になる。この微絨毛の表面から栄養素が吸収されるのであるが、その吸収面積は輪状ヒダで3倍に、腸絨毛で10倍に、微絨毛によって20倍に拡大され、小腸粘膜の表面積は全体で200m2(体表面積の約100倍)になる。粘膜上皮の間には、つくった粘液を頂上に入れるワイングラスの形をした杯細胞が点在する。
十二指腸では十二指腸腺が発達し、アルカリ性でかつ粘液に富む分泌物を分泌して胃液の酸性を中和し、十二指腸の粘膜を保護する。
(2) 粘膜固有層(p.81 小腸の組織構造と機能 – 粘膜固有層)
粘膜固有層にはごま粒大のリンパ小節が散在する(孤立リンパ小節)。リンパマ小節が集まって、小判状(長さ2~4cm)に見える集合リンパ小節(パイエル板)は回腸下部に多い。
(3) 筋層(p.81 小腸の組織構造と機能 – 筋層)
小腸の筋層は平滑筋からなり、内層の筋は輸走し、外層の筋は縦走する。蠕動運動・分節運動・振子運動により、内容は混和されながら下方に向かって移送され、3~6時間かかって大腸へと運ばれる。一般に筋層は空腸の方が回腸よりも発達がよく、活動も活発である。このため空腸では内容物が速やかに輸送され、内腔が空であることが多いので、空腸と呼ばれる。
問26 総胆管が開口する部位はどれか。
1 噴門
2 幽門
3 十二指腸
4 空腸
解答 3
胆嚢(p.86 胆嚢)
肝門の右前方で右葉の下面に付くナス形の袋(長さ約9cm、太さ約4cm、内容量約70m1)で胆汁を蓄える。胆嚢の前端は、腹直筋が右肋骨弓と交わるところで、腹壁の内面に接している。胆嚢の後方は細く伸びて胆嚢管に移行する。胆嚢管は長さが約3cmのやや迂曲する管で、内腔にはらせん状に突出するヒダがあり、肝臓から出てきた肝管と合流して総胆管となる。肝管を流れてくる胆汁は胆嚢管に入って胆嚢に蓄えられ、必要に応じて再び胆嚢管から総胆管をへて十二指腸に放出される。総胆管は十二指腸に開く前に、膵管と合流して大十二指腸乳頭に開く。開口部にはオッディ括約筋があり、分泌の調節を行う。十二指腸壁から血中にコレシストキニンが放出され、このホルモンの作用で胆嚢が収縮し、胆汁が排出される。
(注) 胆汁が貯蔵、濃縮されて変化し、そのにコレステロールまたはビリルビンが沈殿して胆石は生成される。胆石症は女性に多く、胆石疝痛という激しい痛みを起こす。この痛みは胆汁の経路にある平滑筋がけいれんを起こすために生じるといわれる。
問27 パイエル板がみられるのはどれか。
1 回腸
2 直腸
3 膵臓
4 脾臓
解答 1
リンパ系器官には、リンパ管の途中にあるリンパ節や、脾臓、胸腺といった臓器があるほか、消化管の粘膜に存在するリンパ小節(咽頭の扁桃、回腸のパイエル板など)がある。(p.56 リンパ系の器官)
リンパ小節はが集まり、特に発達したのが扁桃と集合リンパ小節(パイエル板)である。
扁桃は、咽頭(鼻や口の奥の部分)の粘膜にできたリンパ小節の集団である。扁桃の粘膜は重層扁平上皮であり、周辺より隆起する表面には、粘膜が陥入した深いくぼみ(陰窩)が散在する。この陰窩の粘膜下には多数のリンパ小節が並んでいる。細菌や異物などの抗原刺激によって、リンパ小節ではBリンパ球が増生され、抗体産生が促される。
咽頭扁桃・耳管扁桃・口蓋扁桃・舌扁桃の各扁桃は、咽頭内腔を取り囲むように輪状に配列して、口や鼻から侵入しやすい細菌などに対応する。これら一連の扁桃群をワルダイエルの咽頭輪と呼ぶ。(p.59 扁桃と集合リンパ小節)
小腸の粘膜固有層にはごま粒大のリンパ小節が散在する(孤立リンパ小節)。リンパ小節が集まって、小判状(長さ2~4cm)に見える集合リンパ小節(パイエル板)は回腸下部に多い。(p.81 小腸の組織構造と機能 – 粘膜固有層)
(注) 消化管に入ってきた異物はパイエル板をおおう粘膜上皮細胞の中のM細胞に捕らえられる。M細胞は入ってきた異物の中の抗原を抽出し、内側で待機するマクロファージとリンパ球に抗原提示を行う。パイエル板で増殖したリンパ球は形質細胞に分化し、抗原に対応する免疫グロブリンAを消化管内腔に分泌する。(p.81 小腸の組織構造と機能 – 粘膜固有層)
問28 呼吸器について誤っている記述はどれか。
1 右肺は3葉からなる。
2 左気管支は右気管支より太い。
3 肺表面は臓側胸膜で覆われる。
4 胸膜腔は陰庄である。
解答 2
1 ⚪︎ 右肺は3葉からなる。
肺葉も心臓の房室弁も左ニ右三(サニウゾウ)
2 × 左気管支は右気管支より太い。
右気管支は左気管支に比べて「太く短く垂直に近い傾斜をなす」
3 ⚪︎ 肺表面は臓側胸膜で覆われる。
肺表面は臓側胸膜で覆われ、肺門部で折れ返って壁側胸膜に移行する。
4 ⚪︎ 胸膜腔は陰圧である。
胸膜腔は陰圧で、吸息時にはさらに陰圧となる。
肺葉
右肺の容積は約1,200mlで重さは約600gである。左肺は心臓がやや左側に片寄って存在するので少し小さく、その容積は約1,000mlで重さは約500gである。肺は深い切れ込み(裂)により肺葉に分かれる。右肺は上・中・下葉の3葉に、左肺は上葉と下棄の2葉に分かれる。(p.66 肺葉)
気管と気管支
気管は第6頸椎の高さで、喉頭の輪状軟骨の下から垂直に下降する長さ10~13cmで直径が約2cmの管である。前頸部では体表から気管を触れることができる。気管の壁は約20個の馬蹄形の気管軟骨が積み重なってできている。軟骨を欠く後壁は膜性壁といい、平滑筋と粘膜だけになる。気管は胸腔に入ると心臓の上後方(第5胸椎の高さ)で左右の気管支に分かれる。右気管支は太くて短く、垂直に近く傾斜する。左気管支は細くて長く、水平に近い傾斜を持つ。このように左右の気管支の太さ・長さ・走行に違いがあるので、誤って気管支に吸い込んだ異物は右気管支に、さらには右肺に入りやすい。(p.65 気管と気管支)
胸膜
肺の表面は光沢のある薄い胸膜(臓側胸膜)でおおわれる。肺門では気管や肺動静脈を包んだあと、胸腔内面をおおっている胸膜(壁側胸膜)に移行する。肺門で折れ返った胸膜は、その間に胸膜腔という腔所をつくることになる。胸膜腔は少量の無色の漿液に満たされ、呼吸運動に伴う肺の自由な動きを可能にしている。胸膜腔の下端は下位肋骨内面では横隔膜との間に挟まれた狭い空間となり、胸膜洞と呼ばれる。胸膜炎では治癒したあとに胸膜の癒着が残り、肺の動きが制限される。胸膜腔は陰圧になっているが、肺や胸壁の損傷で胸膜腔に空気が入り大気圧と等しくなると、肺はその弾性のために小さく縮んでしまう。この状態を気胸という。(p.67 胸膜)
胸腔内圧(胸膜腔内圧)
肺の組織は豊富な弾性線維からなる。胸膜腔内の圧(胸腔内圧)が大気圧以下、すなわち陰圧に保たれているため、肺は収縮しようとする性質に逆らって、常時引き延ばされた状態にある。吸息時には胸腔容積が増大して胸腔内圧はさらに陰圧となり、肺は拡張して外気が肺内に流入してくる。呼息時には胸腔容積が減少して胸腔内圧の陰圧度が減少し、肺が縮んで肺胞気の一部が排出される。(生理学 p.62 呼吸運動とその調節)
問29 腎臓について誤っている記述はどれか。
1 腹膜後器官である。
2 右腎は左腎より高い位置にある。
3 皮質と髄質が区別される。
4 脂肪組織に囲まれる。
解答 2
1 ⚪︎ 腹膜後器官である。
腎臓・副腎、十二指腸、膵臓は腹膜後器官。個別に覚えるのではなく、まとめて覚えよう。
2 × 右腎は左腎より高い位置にある。
腹腔の右上部には大きな肝臓があるので、右腎は左腎に比べて1/2腰椎分低い位置にある。
3 ⚪︎ 皮質と髄質が区別される。
腎臓も副腎も皮質と髄質に分かれている。
4 ⚪︎ 脂肪組織に囲まれる。
腎臓表面は線維性の腎被膜に覆われ、その周りを脂肪被膜、腎筋膜が覆う。
腎臓
腎臓は腹腔の上部、脊柱の左右で肋骨に半ばかくれるように位置する暗赤色の1対の器官である。その高さは第12胸椎から第3腰椎の範囲にあり、上方に肝臓があるために右腎の方が左腎より1/2腰椎分低い。腎臓は腹膜後器官の1つである。腎臓は上端に副腎を乗せ、共通の脂肪被膜で包まれ保護される。この脂肪被膜のまわりを膜状の腎筋膜がおおう。腎筋膜は上方で横隔膜につながっているので腎臓は呼吸運動とともに上下に移動する。また、腎臓は脂肪組織に包まれているので立位になると少し下がる。脂肪組織が緩くなると腎臓は動きやすくなり、さらに下方まで下がり遊走腎(下垂腎)となる。20~30代のやせた女性に多く見られる。(p.90 腎臓)
大きさは縦約10cm、横約5cm、重さ100gあまりで、ソラマメ形の器官である。内側縁中央部はへこんでおり腎門と呼ばれ、ここを通って血管や尿管が出入する。腎の表面は線維性の腎被膜におおわれる。腎臓の割断面を見ると、暗赤色に見える表層の皮質と、蒼白に見える深部の髄質とに区別される。髄質は8~12個の円錐状の腎錐体の集まりからなる。腎錐体には無数の縦に走る線条が見られ、それがいくつかの束に分かれて皮質に入り、髄放線を形成する。髄放線以外の皮質を皮質迷路という。腎錐体の間に入り込んだ皮質迷路を腎柱という。腎錐体の先端は丸みを帯びて内側に向かって突出し、腎乳頭をつくる。腎乳頭は杯形をした袋に包まれ、腎杯という。腎杯は集まって腎孟となり、腎門で尿管に移行する。(p.90 腎臓の構造 – 肉眼構造)
問30 通常、卵子が受精する部位はどれか。
1 腹膜腔内
2 卵管内
3 子宮内
4 腟内
解答 2
卵管は、卵巣から排卵された卵子を取り込み子宮に運ぶ管で、約11cmの長さがある。卵巣に近い1/2の部分はふくらみ卵管膨大部と呼ばれ、子宮に近い1/2の部分は細く卵管峡部と呼ばれる。卵管膨大部の先端は広がり漏斗をつくり、その先端からは房状の多数の突起がひらひらと出て卵管采と呼ばれる。卵巣から排卵された卵子は卵管采から卵管に取り込まれる。受精は卵管膨大部で起こるが、受精した卵子は卵管を運ばれているうちに2細胞期、4細胞期と矢継ぎ早に分裂して3~4日後には桑実胚になって子宮に到達する。卵子の輸送は主に卵管の筋層の運動によって行われ、5~7日後には胚盤胞となって子宮内膜に着床する。(p.101 卵管)
問31 腹大動脈から直接分岐するのはどれか。
1 卵巣動脈
2 子宮動脈
3 臍動脈
4 上直腸動脈
解答 1
1 ⚪︎ 卵巣動脈:腹大動脈の泌尿・生殖器に至る臓側枝
腹大動脈の泌尿・生殖器に至る臓側枝には、腎動脈と性腺動脈(男性では精巣動脈、女性では卵巣動脈)がある。いずれも大動脈の側方から対をなして出る。(p.46 腹大動脈とその枝)
2 × 子宮動脈:内腸骨動脈の臓側枝
子宮動脈は内腸骨動脈の臓側枝で、子宮体の側方にある子宮広間膜を通って側面から子宮と膣を栄養する。(p.47 総腸骨動脈・内腸骨動脈とその枝)
3 × 臍動脈:内腸骨動脈の臓側枝
臍動脈は胎児循環で利用される血管で、内腸骨動脈から分かれて、臍を通って臍帯から胎盤へと胎児の血液を運ぶ。生後は臍動脈の大部分が臍動脈索に変化するのであるが、その近位部は走行途中(膀胱の上方)で分かれて上膀胱動脈としてそのまま残存する。(p.47 総腸骨動脈・内腸骨動脈とその枝)
4 × 上直腸動脈:下腸間膜動脈の枝
上直腸動脈は下腸間膜動脈の枝、中直腸動脈は内腸骨動脈の枝、下直腸動脈は内陰部動脈の枝(p.47 総腸骨動脈・内腸骨動脈とその枝)
問32 下腿と大腿の内側部から血液を集め、大腿静脈に注ぐのはどれか。
1 外腸骨静脈
2 膝窩静脈
3 大伏在静脈
4 小伏在静脈
解答 3
1 × 外腸骨静脈
総腸骨動脈は内腸骨動脈と外腸骨動脈に分岐する。内腸骨動脈は主に骨盤内臓・骨盤壁・下肢の近位部への枝を出す外腸骨動脈は下腹壁動脈を分枝した後、鼠径靱帯の下(血管裂孔)を通ってそのまま大腿動脈に移行し、下肢に至る。(p.47 総腸骨動脈・内腸骨動脈とその枝)
2 × 膝窩静脈
大腿動脈は内転筋管および内転筋腱裂孔を通って膝窩に至り、そのまま膝窩動脈に移行する。 膝窩動脈が膝窩の深層を下行する際には、膝関節の後面に接し、数本の膝動脈を出して関節を養う。膝窩の下端では、脛骨神経とともにヒラメ筋の起始腱弓をくぐって下腿の深層に入り、膝窩筋の下縁で前・後脛骨動脈に分かれる。(p.287 下肢の動脈)
3 ⚪︎ 大伏在静脈
大伏在静脈は足の静脈網の内側縁から起始し、内果の前を通って下腿内側を上行する。さらに、膝蓋骨の内側縁より約4横指後方を縦走して大腿内側部に達し、そのまま大腿三角まで上行する。大腿三角の内側部では大腿筋膜にできた伏在裂孔を貫通して大腿静脈に合流する。(p.288 下肢の静脈)
4 × 小伏在静脈
小伏在静脈は足の静脈網の外側縁から起始し、外果の後方を通って下腿後面の皮下を上行する。膝窩で下腿の筋膜を貫通して、深層に走る膝窩静脈に注ぐ。sup>(p.288 下肢の静脈)
問33 成人の脊髄で誤っている記述はどれか。
1 下端は第1~2腰椎の高さで終わる。
2 中心部は灰白質からなる。
3 前角には運動神経細胞がある。
4 後角には自律神経細胞がある。
解答 4
1 ⚪︎ 下端は第1~2腰椎の高さで終わる。
脊髄は長さが約40cm、太さが1cm前後の円柱形の器官で、椎骨が積み重なってできた脊柱管の中におさまる。下端は円錐状に細くなり(脊髄円錐)、第1~2腰推の高さに終わる。脊髄の長さが脊柱管に比べて短いのは、脊髄の成長が脊柱の成長よりも早くに終わってしまうからである。(p.118 脊髄)
2 ⚪︎ 中心部は灰白質からなる。
3 ⚪︎ 前角には運動神経細胞がある。
4 × 後角には自律神経細胞がある。
後角には感覚神経細胞がある。側角には自律神経細胞がある。
脊髄の内部構造(p.118 脊髄の内部構造)
脊髄の横断面を見ると、H字形をした灰白質のまわりを白質が取り囲む。灰白質の中央には縦に伸びる中心管の細い穴が見える。中心管は発生初期の神経管の名残である。脊髄の正中部の前面からは前正中裂が深く落ち込み、後方正中部には後正中溝の浅い溝が走る。前面と後面の外側からは脊髄神経の前根と後根が出入りする。
灰白質
H字形をした灰白質の前方への突出部は前角、後方への突出は後角、胸髄では両者の中間で側方に小さな側角が突出する。前角には骨格筋を支配する大型の運動神経細胞が集まり、その軸索(突起)は束となって前根を通り脊髄神経に加わる。後角には、後根として脊髄に入ってくる感覚性の神経線維を受ける感覚神経細胞が集まる。側角は内臓運動や腺の分泌を調節する自律神経細胞(交感神経性、仙髄は副交感神経性)の集まりからなり、軸索は前根を通り脊髄神経に加わる。
白質
白質では、前索・側索・後索が区別される。同じような機能を持つ神経線維が集まり束となって伝導路が形成される。
問34 間脳にみられないのはどれか。
1 視床
2 視蓋
3 視床下部
4 内側膝状体
解答 2
1 視床:間脳
間脳は視床と視床下部からなり、後上方から松果体が突出する。視床は、脳室の側壁をなすほぼ卵円形をした灰白質で、全身の皮膚感覚や深部知覚の線維また小脳から起こる線維など、大脳皮質に達する求心性伝導路のすべてがいったんここに集められ、新しいニューロンに乗り換えて大脳皮質のそれぞれの中枢に送られる。視床は脳に入る感覚情報の中継点である。(p.123 視床)
2 ⚪︎ 視蓋:中脳 (視蓋は上丘の別名)
上丘は、鳥類などでは視覚に重要な役割を果たしているが、ヒトでは視覚反射の中継所でしかない。視覚と関係するので視蓋とも呼ばれる。目に光が入ったときに瞳孔を収縮させる対光反射、見ている物が近づいたときにレンズを厚くしてピントを合わせる調節反射、それと同時に視線を内側に寄せる輻輳反射に関わる。
3 視床下部:間脳
視床下部は視床の下方にあって、第3脳室の側壁および底部をつくる。底部から突き出た漏斗の先に下垂体がぶら下がり、その後方に灰白隆起および丸い1対の乳頭体がある。視床下部は、上位の大脳皮質・大脳辺縁系・視床、下位の脳幹・脊髄などと線維結合を持ち、自律機能の統合中枢として生命活動の維持に重要な働きをなす。すなわち、視床下部は自律神経系に対する最高中枢として脳幹や脊髄側角にある自律神経核に指令を発する。また、視床下部には体温調節中枢・摂食中枢・性行動・情動行動を調節する中枢がある。さらに、隆起核・視索前野などから分泌されるホルモンは、下垂体前葉のホルモンの分泌の調節を行い、内分泌腺全体の分泌機能に影響を及ぼす。 (p.124 視床下部)
4 内側膝状体:間脳 (視床の一部)
ある。視床の後方下面には内側膝状体と外側膝状体という2対の高まりがあって、前者は聴覚の、後者は視覚の中継核である。(p.123 視床)
問35 頸神経叢から出るのはどれか。
1 正中神経
2 尺骨神経
3 橈骨神経
4 横隔神経
解答 4
1 × 正中神経:腕神経叢
上肢の中央部を走り、尺側手根屈筋と深指屈筋の尺側部以外の前腕屈筋群と円回内筋および手の母指球筋に分布する。また皮枝は手掌母指側の皮膚に分布する。この神経麻痺を猿手 ape hand という。
2 × 尺骨神経:腕神経叢
上肢の尺側を走り尺側の前腕屈筋群と手掌尺側の筋群に分布する。また皮枝は手掌および手背小指側の皮膚に分布する。この神経麻痺を鷲手 claw hand という。
3 × 橈骨神経:腕神経叢
上肢の伸側を走る。筋枝は上腕および前腕の伸筋群即ち上腕三頭筋と肘筋と回外筋に分布する。皮枝は上腕および前腕の背側、手背の橈側半の皮膚に分布する。この神経麻痺を下垂手 wrist drop という。
4 ⚪︎ 横隔神経:頸神経叢
横隔神経は第3~第5頸神経からなり、前斜角筋の前面を下行して鎖骨下動静脈の間を通り、胸腔に入り、壁側胸膜の縦隔部と心膜の間を通り横隔膜に達する。
腕神経叢の構成(p.259 腕神経叢の構成)
神経叢を木にたとえると、木の根っこ、すなわち神経叢を構成する神経根は、第5頸神経から第1胸神経までの前枝の部分である(C5~T1) 。前斜角筋と中斜角筋の間(斜角筋隙)を出るところでは、これらの神経根は合流して3つの神経幹をつくる。すなわち、C5とC6とが合して上神経幹、C7は単独で中神経幹、C8とT1は合流して下神経幹をなす。
その後、それぞれの神経幹は前後に大きく2分岐する。上神経幹と中神経幹からの前方枝は合流して外側神経束を、下神経幹からの前方枝は単独で、内側神経束をつくる。一方、各神経幹からの後方枝は、高位の枝から次々と合流して大きな1つの後神経束を形成する。
外側神経束と内側神経束は、ともに腕神経叢の前方部分をなす神経束としてさらに合流し、Mの字を横にしたようなワナ(ループ)を構成する。このワナからは、主に3本の枝が分かれる。M字ワナの中心では、外側神経束の枝と内側神経束の枝が交通しあって正中神経が出る。正中神経の外側で外側神経束から分かれるのは筋皮神経である。一方、正中神経の内側で内側神経束から分かれる枝は尺骨神経および内側前腕皮神経と内側上腕皮神経である。このM字ワナは正中神経を中心としているので正中神経ワナとも呼ばれ、筋皮神経・正中神経・尺骨神経は上肢の前面(上腕・前腕・手それぞれの屈筋と皮膚)を支配する神経にあたる。
後神経束は、腕神経叢の後方の太い神経束であり、腋窩の後壁である上肢帯の筋に向かって、腋窩神経・肩甲上神経・肩甲下神経・胸背神経を次々と分枝する。そして上肢帯への枝を出し終わると、橈骨神経に移行して上肢の後面(上腕・前腕の伸筋と皮膚)を支配する。
このほか、腕神経叢からは長胸神経、内・外側胸筋神経も分枝される。長胸神経はC5~7の神経根から出て、神経叢の最も背側をまっすぐに下行し、腋窩の内側壁である前鋸筋の表面に分布する。内側胸筋神経・外側胸筋神経は正中神経ワナよりも近位で、外側神経束と内側神経束の交通枝がつくった小ループ(胸筋神経ワナ)から分枝し、腋窩の前壁をなす大胸筋と小胸筋を支配する。
問36 錐体路の経路でないのはどれか。
1 内包
2 中脳の赤核
3 延髄の錐体
4 脊髄の側索
解答 2
錐体路 (皮質脊髄路)
中心前回→内包→大脳脚→錐体→錐体交叉→(反対側の)側索→脊髄前角 前角細胞
錐体路
大脳皮質の運動野(中心前回)にある巨大錐体細胞から起こった軸索(突起)は、内包を通って脳幹から遠く脊髄へ下り、脊髄の前角細胞に達してシナプスをつくる。前角細胞の軸索は前根から末梢神経となって支配する筋に達する。大脳皮質の運動野から下行する運動神経は、延髄の腹側で、錐体と呼ばれる盛り上がりをつくって下行するところから錐体路の名がある。
約80%の線維は延髄下端の錐体交叉で、反対側の側索を下行(外側皮質脊髄路)するが、交叉しない20%の線維は同側の前索をそのまま下行(前皮質脊髄路)し、前角細胞に入る高さで交叉する。結果的には、すべての錐体路は対側の前角細胞に終わることになる。
問37 皮膚に脂腺がない部位はどれか。
1 項部
2 腋窩
3 腰部
4 足底
解答 4
脂腺は毛包に付属するものなので、脂腺がない部位は毛の無い部位。手掌と足底にはうぶ毛もないので脂腺もない。
※ 例外として、唇は毛がないが、毛包に付属しない独立脂腺が存在する。
問38 コルチ器があるのはどれか。
1 卵形嚢
2 半規管
3 蝸牛管
4 耳管
解答 3
1 卵形嚢:平衡斑 (水平方向の加速度、身体の傾きを感知)
内耳の中央の部分で、その側壁にある前庭窓によって鼓室に接し、前方に蝸牛、後方に半規管が位置する。前庭には膜迷路に属する球形嚢と卵形嚢という2つの袋があり、その内面には平衡斑と呼ばれる感覚装置がある。平衡斑には丈の高い有毛細胞があり、炭酸カルシウムの結晶である平衡砂をのせたゼリー状の平衡砂膜が表面をおおっている。身体の傾きおよび直進する方向とその加速度を感じる。(p.156 前庭)
2 半規管:膨大部稜 (頭部の回転の加速度を感知)
互いに直交する面上に弧(ループ)を描く3本の半円周形の管からなり、それぞれその途中に膨大部というふくらみがある。膨大部の内面には膨大部稜という有毛感覚細胞の直線状の高まりがあり、身体の回転運動の方向と加速度を感じる。(p.156 半規管)
3 蝸牛管:コルチ器 (聴覚を感知)
文字通りカタツムリの殻に似ていて、蝸牛軸をラセン管が2巻き半取り巻いている。ラセン管の横断面をみると、その内部は2階だてになっており、1階の鼓室階と2階の前庭階に分かれ、その間に中2階として膜迷路に相当する蝸牛管が仕切られている。蝸牛管の床の基底板上にある上皮細胞は丈が高くなり、ラセン器(コルチ器)を形成し音を感受する。蝸牛神経は蝸牛軸内でラセン神経節をつくりラセン器に分布する。
鼓膜を震わせた音の振動は耳小骨を通じて前庭窓に達し、前庭階を満たす外リンパの液体の振動に変えられる。外リンパの振動は蝸牛の前庭階を昇りつめると鼓室階に移り、鼓室階を下る。すなわち、両階は蝸牛の頂部で連絡し外リンパで満たされ、蝸牛窓で消失する。この外リンパの振動は中2階をなす蝸牛管の内リンパに伝えられ、その振動はラセン器の有毛細胞を刺激して音を感受する。(p.154 蝸牛)
4 耳管
鼓室と咽頭をつなぐ管で、普段は圧平されているが、物を飲み込んだときに一時的に開く。耳管によって鼓室の内圧は外気圧と等しく保たれ、鼓膜が振動しやすい状態になるが、なんらかの原因で閉塞すると鼓室内の空気が吸収され陰圧となり、鼓膜は内方に強く陥没し振動が悪くなり、難聴が起こる。逆に開放されたままになると、自分の声が直接鼓室に響き異常に大きく感じる(自声強聴)。(p.154 耳管)
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